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生態学フィールド調査法シリーズ 10

土壌動物の多様性と機能解析

他著:金子 信博
他著:金田 哲
他著:豊田 鮎

紙版

内容紹介

 土壌にはきわめて広範囲の分類群にわたる生物が狭い範囲に生息しており,植物と密接な相互作用を行っている。そのすべての生物間相互作用を明らかにするのは困難であるが,研究の重要度は高まっている。なぜなら,気候変動や外来種の侵入といった人為的な攪乱に対して陸上生態系がどのような反応を示すかを理解するには,植物だけでなく土壌生物の反応と植物と土壌の相互作用を理解する必要があるからである。
 土壌動物の生活を理解するためには,生息場所である土壌環境の把握,主要な餌となっている土壌有機物や土壌微生物の情報を扱う必要がある。また,植物や地上の動物との相互作用についても研究法を学ぶ必要がある。本書ではこれらの点に留意しつつ,土壌微生物と土壌動物を群集として捉えるとともに,野外で土壌生態系がもつ機能を定量化する方法について解説した。具体的には土壌動物の基本的な分類,同定に関する情報,採集法や標本の保存法,そして土壌動物の野外での採集法と分解系の操作実験について扱う。さまざまな分類群,そして地上と地下の生態学的プロセスを調べるには,それぞれの分野の理解が必要であり,研究自体が難しいが,本書がそれぞれの研究分野をつなぐ役割を果たすと確信している。

目次

第1章 土壌環境と土壌生物
1.1 はじめに
1.2 土壌環境
1.3 土壌生物の分類群と生活史
  1.3.1 土壌微生物
  1.3.2 土壌動物
  1.3.3 原生生物の仲間
  1.3.4 センチュウ
  1.3.5 ヒメミミズ
  1.3.6 小型節足動物
  1.3.7 大型土壌動物
1.4 土壌生物の生態機能群
1.5 土壌生物の地理分布
1.6 陸上生態系の遷移と土壌生物

第2章 土壌環境の評価法
2.1 はじめに
2.2 調査地の土壌の情報
2.3 野外で測定できる土壌の環境
2.4 土壌の理化学的要因を測定するための試料の採取
2.5 実験室で調べる土壌の情報
  2.5.1 土壌の物理的要因
  2.5.2 土壌の化学的特性

第3章 土壌微生物の調査法
3.1 はじめに
3.2 土壌微生物のサンプリング
3.3 生化学的な土壌微生物群集の評価法
3.4 分子生物学的な土壌微生物群集の評価法

第4章 大型土壌動物の採集と同定
4.1 はじめに
4.2 野外における採集
  4.2.1 シフターを用いた採集
  4.2.2 ハンドソーティングによる採集
  4.2.3 ピットフォールトラップ
  4.2.4 忌避物質を用いるミミズ採集
  4.2.5 電極法によるミミズ採集
4.3 ツルグレン装置を用いた大型土壌動物の抽出
4.4 大型土壌動物の種同定

第5章 小型・中型土壌動物の採集と同定
5.1 はじめに
5.2 湿性土壌動物の採集と抽出
  5.2.1 原生生物の採集と抽出
  5.2.2 土壌中のセンチュウとクマムシの採集と抽出
  5.2.3 ヒメミミズ類の採集と抽出
5.3 小型節足動物の採集と抽出
5.4 羽化昆虫の採集
5.5 小型・中型土壌動物の種同定
5.6 調査例

第6章 土壌生物の食物網と生態系機能解析
6.1 はじめに
6.2 食性の解析
  6.2.1 飼育による食性調査
  6.2.2 形態を用いる方法
  6.2.3 遺伝子を用いる方法
  6.2.4 安定同位体比を用いる方法
  6.2.5 脂肪酸を用いる方法
6.3 食物網の構造
  6.3.1 現存量の推定
  6.3.2 窒素無機化モデル
6.4 操作実験
  6.4.1 リターバッグ実験
  6.4.2 マイクロコズムおよびメソコズム
  6.4.3 室内環境制御実験系
  6.4.4 エンクロージャー
  6.4.5 野外での大規模環境制御実験
6.5 野外における生態系の機能評価
6.6 土壌生態系の操作

索引

ISBN:9784320057586
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:140ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2020年02月
発売日:2020年02月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSV