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これでわかるニューロンの電気現象

対話形式による講義

著:酒井 正樹

紙版

内容紹介

 近年,日本は「脳ブーム」の感があり,巷には関係本があふれている。ところが,脳を理解するための基礎となるニューロン(神経細胞)については,大学生でも正しく理解しているものが少ない。それは,ニューロンの理解には電気現象の理解が不可欠であるのだが,それがきちんとできていないからである。これは,わかりやすい解説書がないこと,また大学教員や高校教員の認識不足によるところが大きい。
 著者は長年大学で神経生理学を教えており,ニューロンに関して,学生の知識や理解がどのようなものかよくわかっている。また,学生との対話形式ですすめてきた授業経験から,学生が抱く疑問や陥りやすい誤りにもよく通じている。それで,これまでの体験をもとに,自身の授業を再現したのが本書である。内容は,学会誌に4回連載されたもの(2012)で,多くの会員からは高い評価を得ている。
 また,本書では「教科書高等学校『生物』へのコメント」という一章をもうけた。そこでは,2013年から大幅に改訂される高校教科書「生物」の内容をチェックし,具体的に問題点を指摘するとともに,改善へのアドバイスを行った。
 本書は,オリジナルな比喩やモデルを使って,ニューロンの基礎をわかりやすく解説している。高校生にもわかるはずである。ただし,単なるお話ではなく,専門的な内容をどうすれば理解できるかを示しており,大学教員にとっても授業の参考となるものである。また,大学生にとっては,専門への橋渡しとして役立つと思われる(専門用語と定義を再確認できるように基礎知識,また発展知識を学べるようにコラムを配置してある)。さらに,高校教員や高校教科書の著者をはじめ関係者にとっても,大いに参考になると思われる。

目次

第1章 細胞はいかにして電気を発生するか―静止電位の発生
1 問題の提起
2 解説
3 思考実験
4 モデルによる説明
5 細胞における静止電位の発生
6 定量的理解へ
7 静止電位の機能

第2章 細胞はいかにして興奮するか―活動電位の発生
1 問題の提起
2 活動電位の上昇相
3 解説
4 ナトリウムチャネルの開閉機構
5 活動電位の下降相
6 活動電位発生中のイオンの動態
7 活動電位の機能

第3章 興奮はいかにして伝わるか―活動電位の伝導
1 問題の提起
2 解説
3 伝導の教科書的説明
4 活動電位のひろがり
5 電位ひろがりの実際
6 電流を水流で見る:漏洩ケーブルのモデル
7 移動する活動電位
8 有髄神経と跳躍伝導

第4章 興奮はいかにして細胞境界を越えて伝わるか―シナプス伝達
1 問題の提起
2 基礎知識
3 伝導物質の放出
4 シナプス伝達時間
5 伝達物質の放出阻害
6 受容体の構造と機能
7 受容体のサブタイプ
8 シナプス後電位の発生:興奮性
9 シナプス後電位の発生:抑制性
10 シナプス後電位の相互作用

第5章 教科書高等学校「生物」へのコメント
1 静止電位の発生
2 活動電位の発生
3 活動電位の伝導
4 シナプス伝達

ISBN:9784320057296
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:208ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2013年06月
発売日:2013年06月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSV