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シリーズ・バイオサイエンスの新世紀 8

多細胞体の構築と細胞接着システム

編:関口 清俊
編:鈴木 信太郎

紙版

内容紹介

本書では組織構築の基礎を担っている細胞外マトリックスと細胞接着の基本的事項が平易に解説されている。
地球上に生命が誕生して以来、原始の海に生まれた生命は、当初の単細胞体制(原核生物)から現在の多細胞体制(真核動植物)に進化する過程で、機能的に分化した様々な細胞同士の接着システムを創出し、それによって“細胞-組織-器官-個体”という階層性をもった高次多細胞体制を確立してきた。これらの細胞接着システムは、単に物理的に細胞を接着(集合)させるだけでなく、細胞内の骨格系やシグナル伝達系と共役することにより、細胞の運動や増殖・分化の制御にもきわめて積極的に、かつ巧妙に関わっていることが近年明らかにされている。
細胞接着に関する研究は、おもに発生現象に関連した細胞間の特異的接着機構に関する研究と細胞外基質の接着分子の研究に大きく分かれて進められてきた。どちらの研究分野においても、わが国には世界に誇る実績と蓄積があり、本書では、それぞれの分野の第一線で活躍している研究者たちにより、その解説がなされている。

目次

序章 多細胞生物と細胞接着
? 多細胞生物のはじまり
? 多細胞生物の2つのつくり方
? 多細胞生物の構築に必須な細胞接着
? ゲノムプロジェクトからわかってきた事実
? 組織づくりにおける細胞接着の役割
? 細胞接着の実態から想像されること
? 細胞極性の形成における細胞接着の役割
? 細胞接着現象の多面性と統一性
? まとめにかえて

第1章 細胞間接着の分子機構と組織・器官の構築
1-1 細胞間の接着と選別を行うタンパク質,カドヘリン
? 細胞の解離・集合・選別
? 2種類の細胞間接着機構の発見
? CDS/カドヘリンの同定
? カドヘリン分子群の発見
? カドヘリンの接着活性・特異性のcDNAクローニングによる検証
? カドヘリン分子群の組織維持と細胞選別における役割
? カドヘリン結合因子による細胞接着制御
? がんの浸潤・転移とのかかわり
? 脳・神経系の形成における役割
? 再び初期胚
? ショウジョウバエのカドヘリン

1-2 カドヘリンを介する細胞接着の制御機構とカテニン
? カドヘリン-カテニン複合体
? カテニンの構造と機能領域
? カドヘリンの細胞接着活性の制御機構
? カドヘリンを起点とする情報伝達
? β-カテニンの新しい機能―シグナル分子としてのβ-カテニン

1-3 神経細胞の接着と神経回路の形成
? 軸索ガイダンス
? 回路形成に関与するタンパク質群
? 免疫グロブリンスーパーファミリー
? 正中部の横断と経路の選択―ネトリン系とSlit-Robo系
? 感覚神経の反発分子(セマホリン)とその受容体(ニューロピリン)
? 視覚系の位置的ガイダンス分子,エフェリンとEph受容体
? 神経筋結合の標的認識機構
? 細胞接着タンパク質の変異と神経疾患

第2章 多細胞体制の構築と細胞外マトリックス
2-1 細胞外マトリックスと組織・器官の構築
? 細胞外マトリックスとは何だろうか
? 組織・器官の構築におけるコラーゲンの役割

2-2 マトリックス分子の多様性と疾患
? 細胞外マトリックス分子は複数の機能をもつキメラタンパク質である
? マトリックス分子に存在する繰り返し構造
? マトリックス分子のドメイン構造・繰り返し構造と機能の関係
? コラーゲンスーパーファミリー―その構造上の特徴と疾患とのかかわり

2-3 細胞-基質間接着の分子機構とシグナル伝達
? 細胞外マトリックスは細胞の増殖と生存に不可欠である
? 細胞外マトリックスの接着タンパク質
? 細胞外マトリックスの受容体
? インテグリンを介するシグナル伝達の分子機構

2-4 細胞-基質間接着のモジュレーター,プロテオグリカン
? プロテオグリカンとは?
? 細胞表面プロテオグリカン
? 細胞外マトリックスプロテオグリカン
? 神経系のプロテオグリカン
? 細胞接着におけるプロテオグリカンの役割

2-5 低分子量Gタンパク質Rhoファミリーによる細胞接着制御
? インテグリンと接着斑
? 接着構造とRho
? Rhoとその上流のシグナル伝達
? 接着と細胞増殖,がん化とRho
? 接着とチロシンリン酸化―Rhoの関与
? Rac,Cdc42による細胞基質間接着制御

第3章 細胞接着システムの異常と疾患
3-1 カドヘリン細胞接着システムの異常とがん浸潤・転移
? 細胞接着分子カドヘリン
? がん浸潤・転移
? がん細胞におけるカドヘリン機能不活化機構
? 増殖因子受容体とβ‐カテニン間のシグナル伝達系
? ヒトがんの浸潤転移とカドヘリン細胞接着機能異常
? 腫瘍抑制遺伝子APCとβ-カテニン

3-2 マトリックスの分解とがんの浸潤・転移
? マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)
? MMPの活性調節機構
? がんの浸潤とMMP
? マトリックスセリンプロテアーゼ

3-3 水疱症はなぜ起こるか
? 天疱瘡(pemphigus)とは
? 自己免疫疾患としての天疱瘡
? 天疱瘡抗原はカドヘリン型の細胞間接着分子である
? 天疱瘡血清中に含まれる抗Dsg抗体を吸収除去すると水泡をつくらなくなる
? 天疱瘡組換え抗原タンパク質を用いたELISA法の開発
? PVは粘膜優位型と粘膜皮膚型のサブタイプに分けられる
? 天疱瘡における水泡のできる部位を理論的に説明する
? 腫瘍随伴性天疱瘡も抗Dsg自己抗体が病的役割をしている

コラム
免疫沈降反応
カテニンの命名
条件反射と無条件反射
免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)
神経細胞とグリア細胞
人工臓器と細胞外マトリックス
壊血病と細胞外マトリックス
ドメイン
RGDモチーフと人工細胞接着タンパク質
血管新生(angiogenesis)
MT1-MMP

索引

ISBN:9784320055599
出版社:共立出版
判型:菊判
ページ数:224ページ
定価:3700円(本体)
発行年月日:2001年06月
発売日:2001年05月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSF