化学の要点シリーズ 33
分子配向制御
編:日本化学会
著:関 隆広
内容紹介
分子の配向は有機・高分子系材料の諸物性や機能の発現と密接にかかわっている。たとえば,液晶ディスプレイは液晶分子の分子配向変化を利用して画像表示していることから,分子配向が機能と直接関連していることが目に見えて実感できる典型例といえる。本書では,液晶物質のみならず,種々の有機・高分子材料の配向と諸特性や機能とのかかわりをコンパクトにまとめることを試みた。
具体的には,要素技術としての分子薄膜の作製法にまず触れ,液晶の表面配向特性,液晶の光配向,光駆動特性,光学特性,半導体特性,熱伝導特性,強誘電特性を扱っている。各特性と分子配向との関わりについては個別に扱った成書などは多くあるが,これだけ広範囲の内容を一冊にまとめたものは見当たらず,これは本書の大きな特長であるといえる。
学生,大学院生,若い研究者の方々が化学・材料研究で分子配向に触れるうえで,本書はその「オリエンテーション」の一助となると期待される。読者に幅広く正確な知識が得られるように,引用文献は各章でやや多めに挙げた。
目次
第1章 分子薄膜の作製法
1.1 真空蒸着(乾式)
1.2 ラングミュア-ブロジェット膜(湿式)
1.3 自己組織化単分子膜(湿式)
1.4 液晶膜
1.5 スピンキャスト(スピンコート)法(湿式)
第2章 液晶の表面配向特性―光配向を中心に―
2.1 基板表面での液晶分子配向誘起
2.2 コマンドサーフェス
2.3 表面分子膜の設計と液晶配向
2.4 水との界面で誘起される液晶配向
2.5 ワイゲルト効果
2.6 ワイゲルト効果と分子配向誘起
2.7 光配向テクノロジー
2.8 アゾ色素配向膜
2.9 自由界面からの配向
第3章 液晶の光配向―多様な展開―
3.1 液晶物質の拡張
3.1.1 ほかのサーモトロピック液晶系
3.1.2 リオトロピック液晶系
3.2 メソ組織体材料
3.3 ワイゲルト効果―さらなる展開―
3.3.1 三重項増感
3.3.2 キラリティー誘起
3.4 ブロック共重合体の配向制御
3.5 表面グラフト鎖
3.6 光異性化を介さない液晶配向変化
3.6.1 光フレデリクス転移
3.6.2 分子振動励起による配向
3.6.3 光重合を利用した分子配向
第4章 光駆動特性
4.1 単分子膜の運動
4.2 液滴の運動
4.3 高分子薄膜の運動
4.3.1 光物質移動
4.3.2 分子拡散
4.3.3 分子配向と光レリーフ形成
4.3.4 光誘起マランゴニ流
4.4 高分子フィルムの光運動
第5章 光学特性
5.1 高分子膜の複屈折
5.2 光学補償フィルム
5.3 ゼロ複屈折
5.4 偏光フィルム
5.4.1 吸収型偏光フィルム
5.4.2 複屈折散乱型フィルム
第6章 半導体特性
6.1 低分子物質の集合体
6.1.1 液晶分子の電気伝導性
6.1.2 分子結晶の電気伝導性
6.2 アモルファス分子の発光特性
6.3 高分子半導体
第7章 熱伝導特性
7.1 各種材料の熱伝導率
7.2 配向性結晶高分子
7.3 棒状液晶高分子
7.4 円盤状分子集合体
7.5 ハイブリッド材料
7.6 生体試料
第8章 強誘電特性
8.1 ポリフッ化ビニリデン
8.2 フッ化ビニリデンオリゴマー
8.3 新たな機能
コラム目次
1.LB 膜とLED 照明
2.1920 年代:高分子と液晶
3.表面への偏析は厄介者?
4.アゾベンゼン
5.鉄腕アトムと人工筋肉
6.ヨウ素ドープ偏光シート
ISBN:9784320044746
。出版社:共立出版
。判型:B6
。ページ数:148ページ
。定価:1900円(本体)
。発行年月日:2019年10月
。発売日:2019年10月30日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PNR。