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化学の要点シリーズ 30

フォトクロミズム

編:日本化学会
他著:阿部 二朗
他著:武藤 克也

紙版

内容紹介

 光を当てると色が変わるフォトクロミズムは,研究者でなくても,子供でも見てわかる現象である。フォトクロミズムの歴史は古く,これまで多くの研究者を魅了してきた。フォトクロミック分子は単に色変化を利用する研究にとどまらず,物質の様々な性質を光で制御するための光スイッチ分子として広く利用されており,材料化学の重要な研究基盤となっている。
 フォトクロミズムを深く理解するためには,有機化学の知識だけでなく,量子化学,光化学,反応速度論の知識も必要となるため,初学者にはハードルが高く感じられるかも知れない。しかし,フォトクロミズムはそれだけ奥が深く,また応用分野も多岐に渡っているため,研究対象としては興味が尽きることのない格好なターゲットである。
 フォトクロミズムに関する書物の多くは,これまでに開発されてきたフォトクロミック分子の反応機構や,応用例の解説に終始したものが多いが,本書ではフォトクロミズムを理解するために必要な基礎を,幅広い視点から多角的に解説することに努めた。フォトクロミック反応は光化学反応であるため,電子励起状態の理解が求められる。そのため,本書ではフォトクロミズムの概要,分子軌道法,電子励起状態,ポテンシャルエネルギー曲線の解説から入り,オレフィンのトランス‐シス光異性化反応,光開環/閉環反応,光解離反応の基礎理論,生物が利用しているフォトクロミック分子について解説した。

目次

第1章 フォトクロミズムとは
1.1 フォトクロミズムの歴史
1.2 フォトクロミズムの基本原理
1.3 熱戻り反応の反応速度論
1.4 代表的なフォトクロミック分子
1.5 逆フォトクロミズム

第2章 分子の電子状態
2.1 ボルン―オッペンハイマー近似
2.2 分子軌道法
2.3 π分子軌道
2.4 π分子軌道の特徴

第3章 電子励起状態
3.1 ハートリー積とスレーター行列式
3.2 電子励起状態の波動関数

第4章 電子励起状態を経由する光物理化学過程
4.1 電子励起状態のポテンシャルエネルギー曲線
4.2 円錐交差
4.3 フォトクロミック反応の励起状態ダイナミクス

第5章 オレフィンの光異性化
5.1 オレフィンの電子状態と光励起ダイナミクス
5.2 アゾベンゼンのフォトクロミズム
5.3 可視光応答アゾベンゼン

第6章 電子環状反応
6.1 有機π電子系化合物のペリ環状反応
6.2 フロンティア軌道理論に基づく電子環状反応
6.3 ウッドワード・ホフマン則に基づく電子環状反応
6.4 状態相関図とポテンシャルエネルギー曲線
6.5 ジアリールエテンのフォトクロミズム

第7章 結合解離反応
7.1 結合解離を伴うフォトクロミック化合物
7.2 水素分子の結合解離過程
7.3 結合解離とポテンシャルエネルギー曲線
7.4 スピロピラン,およびナフトピランのフォトクロミズム
7.5 ラジカル解離型フォトクロミック化合物のフォトクロミズム

第8章 自然界におけるフォトクロミック分子
8.1 自然界における光の役割
8.2 動物の中のフォトクロミック分子
8.3 植物の中のフォトクロミック分子

参考文献
索  引

ISBN:9784320044715
出版社:共立出版
判型:B6
ページ数:192ページ
定価:2100円(本体)
発行年月日:2019年03月
発売日:2019年03月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PNR