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基本法則から読み解く物理学最前線 28

非平衡統計力学

ゆらぎの熱力学から情報熱力学まで

著:沙川 貴大

紙版

内容紹介

 本書の目的は,近年発展のめざましい非平衡統計力学について,基礎から最先端までの道案内をすることである。現代的な非平衡統計力学の本格的な教科書(2000年代以降の大きな発展である,「ゆらぎの定理」などの「ゆらぎの熱力学」の考え方を本格的に取り入れたもの)は,本書が和書で初である。とくに,情報と熱力学を融合させた「情報熱力学」について本格的に解説された教科書は世界的にも例がなく,本書のもっとも大きな特徴である。
 読者に専門的な予備知識は要求せず,物理学科や応用物理学科の学部2年までで習う程度の熱力学・統計力学の初歩的な知識だけで読めるように工夫されている。とくに情報理論については,完全にゼロから解説を行った(したがって,本書のそれなりの部分は,意欲ある高校生なら読めるはずである)。また,ランジュバン方程式など伝統的な非平衡統計力学の概念についても,予備知識を前提にせずゼロから解説した。
 一方で,熱力学不確定性関係など,現在世界的に活発に研究されている最先端の話題についても詳細な解説を行っているため,統計力学を専門とするプロの研究者にも有益である。量子ドットから生体分子モーターまで多彩な具体例を取り上げることで,異分野への接続に留意した(とくに生物物理の研究者は,主要な読者層の一角になるはずである)。
 ちょうど1セメスター程度の講義に用いることができるよう,コンパクトにまとめられている。

目次

第1章 イントロダクション
1.1 ゆらぎの熱力学
1.2 情報熱力学
1.3 シラード・エンジンと情報熱機関

第2章 非平衡系の熱力学第二法則
2.1 ゆらぐ熱力学系の定式化
2.2 熱力学エントロピーと情報エントロピー
2.3 非平衡ダイナミクス
2.4 エントロピー生成と熱力学第二法則
2.5 熱力学的可逆性

第3章 ゆらぎの熱力学
3.1 ゆらぎの定理
3.2 不可逆熱力学の枠組み
3.3 ゆらぎの定理から線形応答理論へ
3.4 マルコフジャンプ過程
3.5 非平衡定常熱力学
3.6 熱力学不確定性関係

第4章 情報熱力学
4.1 フィードバックと第二法則
4.2 測定に要する仕事
4.3 情報交換における第二法則
4.4 メモリの構造
4.5 自律的なマクスウェルのデーモン

付録A 情報理論入門
A.1 シャノン情報量
A.2 相互情報量
A.3 カルバック・ライブラー(KL)情報量
A.4 フィッシャー情報量
A.5 モーメントとキュムラント

付録B ランジュバン系
B.1 伊藤公式とフォッカー・プランク方程式
B.2 ランジュバン系の熱力学

ISBN:9784320035485
出版社:共立出版
判型:A5
ページ数:192ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2022年06月
発売日:2022年06月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PHH
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PHS