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共立スマートセレクション 38

われら古細菌の末裔

微生物から見た生物の進化

著:二井 一禎
解説:左子 芳彦

紙版

内容紹介

 本書では、40億年の生命の歴史のうち、これまであまり取り上げられることがなかった、最初の30億年の微生物の時代の進化を主題として扱い、原核生物~真核生物の進化を一連のつながりのなかで解説する。

 われわれ動物や植物の祖先として、細菌や古細菌のような原核生物を想定して進化を考える人はほとんどいないだろう。いや、つい40年ほど前までは微生物学者でさえも、細菌の系統進化を他の大型の生物と同様の分類基準で捉えることなど不可能であると考えていた。このことを可能にしたのは、アメリカの微生物学者、カール・ウーズであるが、本書では、ウーズが成し遂げた偉大な業績を紹介し、その延長上で繰り広げられた真核生物の誕生をめぐる研究者たちの熱い議論を辿ることにより、進化を捉える新しい視点を提示する。
 また、本書では生命誕生前史とも言うべき化学進化や、真核生物誕生のきっかけとなった光合成細菌の進化についても触れることで、真核生物の誕生の背景についての理解を深める。そして新しい技術や解析法を駆使して世界の研究者によって進められた真核生物の祖先探しの努力を紹介し、「なぜ、われらが古細菌の末裔なのか」についての理解に結びつける。
 微生物を視野に入れて生命の進化を捉えるとき、真核生物の誕生こそが進化の大転換点なのだ。

 生命の成り立ちや進化に興味のある高校生、大学生、大学院生や社会人を含む幅広い読者に読んでほしい一冊である。

目次

1 すべては3ページの論文から始まった
1.1 1つの表が意味すること
1.2 ウーズの辿った道
1.3 「分子時計」という概念との遭遇
1.4 分子系統解析法の確立
1.5 隣の研究室はメタン菌の研究をしていた
1.6 成果の発表と学会の冷たい反応
1.7 3ドメイン説の提起(ウーズらによる1990年の論文)
1.8 3ドメイン説に対するマイヤーの批判
1.9 マイヤーの批判に対するウーズの回答
1.10 3つのドメインの系統樹上における関係

2 初期生命としての微生物
2.1 生命は自然に発生するのか
2.2 生命は物質から:化学進化説を唱えた2人の巨人
2.3 化学進化を実証しようとした最初の実験
2.4 ミラーの実験に先立つ実験、続く実験
2.5 マーチソン隕石
2.6 有機物の生成から生命の誕生へ
2.7 原始生命を育んだ温度環境
2.8 原始生命の姿
2.9 生命の痕跡

3 大気環境を変えた微生物たち
3.1 原始大気の変遷
3.2 海洋の誕生、二酸化炭素濃度の低下、地球の冷却
3.3 嫌気環境下における微生物の代謝
3.4 光合成の起源は深海で
3.5 光合成系の進化
3.6 酸素発生型の光合成の起源
3.7 ストロマトライトが語るもの
3.8 大酸化イベント
3.9 スノーボールアース仮説
3.10 酸素濃度の上昇と真核生物の誕生

4 真核生物への進化
4.1 真核生物の誕生をもたらしたメカニズム:細胞内共生
4.2 真核生物の特徴:複雑な細胞構造
4.3 真核生物はいつ誕生したのか:化石による証拠

5 われら古細菌の末裔
5.1 培養せずに微生物を検出する新しい方法:メタゲノム解析法
5.2 新たな古細菌の探索レース
5.3 真核生物に固有のタンパク質(ESPs)による系統解析
5.4 アスガルド上門:真核生物の祖先か?
5.5 ロキアーキオータの形態から導かれた新しい真核生物誕生モデル

ISBN:9784320009387
出版社:共立出版
判型:B6
ページ数:256ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2023年02月
発売日:2023年02月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSG