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教育「変革」の時代の羅針盤 

「教育DX×個別最適な学び」の光と影

著:石井英真

紙版

内容紹介

社会や学校の構造変容――。既存の枠組みを生かした「改善」「改革」に加えて、日本の学校の基盤となるルールや制度的・組織的枠組みやシステムをゼロベースで見直す「変革(transformation)」への志向が強まっている。教育「変革」政策の光と影を見極めて、「日本型学校教育」の再構築につなげる道筋について論じる.

目次

第1章 「変革」の時代の教育政策の展開
  1 .教育「変革」政策の展開――「知識基盤社会」から「Society 5.0」への
    政策アイディアの変化
  2.経産省の「未来の教室」と文科省の「令和の日本型学校教育」のあいだ
   (1)経産省の「未来の教室」構想の内実
   (2)文科省の「令和の日本型学校教育」構想の内実
   (3)「令和の日本型学校教育」に見る省庁連携と政策形成過程の特質
  3.CSTI の「政策パッケージ」に見る「Society 5.0」への教育「変革」構想
   (1)CSTI の「政策パッケージ」の内実
   (2)「Society 5.0」への教育「変革」構想をめぐる論点
  4.教育「変革」政策が提起する「脱学校」論と学校像の分岐点
   (1)「Society 5.0」と「『学び』の時代」の学校像の論争的性格
   (2)「脱学校」と卒「学校」の分岐点
第2章 教育「変革」政策を公教育のバージョンアップにつなぐための
    論点整理
  1.教育「変革」政策の学習論と組織論をめぐる論点
   (1)段階論的学習観の危うさ
コラム① 心理学研究における学習観の変化
   (2)分業論的学校観の落とし穴と教師の役割
コラム② 戦後日本の教育実践の歴史
  2.個性尊重に向けた実践と制度の論争点
   (1)一人ひとりに応じた教育のさまざまな形
コラム③ 個別化・個性化教育としての「才能教育」研究の展開
   (2) 個別化・個性化教育は格差拡大につながるか? 社会的包摂につながるか?
コラム④ 緒川小学校の個別化・個性化教育の展開
   (3)履修主義・年齢主義と修得主義・課程主義の歴史的展開

第3章 コンピテンシー・ベースの改革を
    「日本型学校教育」の再構築へとつなぐ
  1.コンピテンシー・ベースの教育改革の国際的展開
   (1)コンピテンシー・ベースの改革の背景とその基本的な性格
   (2)コンピテンシー・ベースの改革の危うさへの自覚
  2.コンピテンシー・ベースの改革の日本における展開
   (1)日本における「資質・能力」ベースの改革の特徴
   (2)コンテンツ・フリー化と社会像・世界観の空洞化の危うさ
   (3)「新しい学力観」への回帰に陥らないために
  3.「日本型学校教育」の正体をつかむ
   (1)反転する「日本型学校教育」へのまなざし
   (2)全人教育機関としての「日本の学校」の特質
   (3)「日本社会」と「日本の学校」のゆらぎの先に
  4.真に「日本型学校教育」の再構築へとつなげるための指針
   (1) 教育の心理主義化・「教育の学習化」の日本的特徴と迷走する教育改革
   (2)日本の学校の共同性を脱構築する視点
   (3)コンピテンシー・ベースの改革を社会的自立と人間教育へとつなぐ
第4章 「真正の学び」による授業づくりの不易と革新
  1.授業づくりの軸足(不易)の再確認
   (1)改革に踊り、ゆれる「授業」
   (2)「授業」という営みの本質的特徴
   (3)共同注視の三角形で「子ども主語」の学びを創る
   (4)学びの触発から材への没入に誘う「教師主語」の指導性
  2.「真正の学び」による学校的な学びの問い直し
   (1)「真正の学び」とは何か
   (2)教科学習の課題と「真正の学び」の必要性
   (3)「教科する」授業とは何か
  3.「教科する」授業による学びのデザイン
   (1)「教科する」授業における単元設計の方法論
   (2)「教科する」授業を追求することの革新性
第5章 ICT 活用を公正で質の高い学びの実現につなぐ
  1.一人一台端末が学校にとけ込んだゴールをどう描くか
   (1)ICT が日常化した風景をイメージする
   (2)「ICT 活用」論の落とし穴
   (3)ICT による「学びの空間」の拡張
   (4)「多層的な教室」の先の学校像の分岐点
  2.デジタル技術を飼いならす視点
   (1)ICT で学びの質を追求するために
   (2)新しいテクノロジーの活用理念を吟味する
   (3)デジタルメディアの弱点も自覚する
   (4)第三次AI ブームの特性からテクノロジー活用の方向性を見極める
  3.「 個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実」を公正で質の高い学びへとつなぐために
   (1)「個別最適な学び」をどう捉えるか
   (2)個と協働の一体的充実で学校という場の生きづらさに向き合う
   (3)真正でインクルーシブな学びの創出へ
   (4)学校や教師の仕事の手応えの持続可能な追求のために
第6章 教師の自律性と現場のエンパワメントを実現するために
  1.教師の学びと成長のメカニズム
   (1)教職の専門性のコアの再確認
   (2)省察とアンラーンを通して教師として成長する
   (3)スキル、コンピテンシー、パースペクティブの変容としての成長
  2.実践経験を成長につなげるための条件と方法論
   (1)リフレクションを生かした教師教育の方法
   (2)教師たちによる現場からの実践研究の文化
   (3)模倣と省察、実践知と理論知を統合する研究的実践
  3.ゆらぐ日本型教師像と教職の仕事
   (1)日本型教師像の歴史的展開
   (2)教師教育政策の展開と教職の脱専門職化の進行
   (3)教職の専門性と専門職性の持続可能なあり方に向けた議論の基盤
  4.日本型の教師の力量形成システムを再構築するために
   (1)「令和の日本型学校教育」を担う「新たな教師の学びの姿」をめぐる論点
   (2)学校現場の自律性の拡大とエンパワメントのために
   (3)子どもを見る眼の解像度を上げて子どもとともに学ぶために
   (4) 校内研修を通して子どもの姿を介した大人たちの共同注視関係を創る
【引用文献・参考文献】
あとがき

著者略歴

著:石井英真
1977年兵庫県生まれ。京都大学大学院教育学研究科准教授。博士(教育学)。日本教育学会理事、日本教育方法学会常任理事、日本カリキュラム学会理事、文部科学省「児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ」委員、「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」委員など。主な著書に、『今求められる学力と学びとは』(単著・日本標準、2015年)、『再増補版・現代アメリカにおける学力形成論の展開』(単著、東信堂、2020年)、『授業づくりの深め方』(単著・ミネルヴァ書房、2020年)、『未来の学校』(単著、日本標準、2020年)、『中学校高等学校 授業が変わる学習評価深化論』(単著、図書文化、2023年)など多数。

ISBN:9784316805030
出版社:教育出版
判型:A5
ページ数:240ページ
価格:2600円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年04月04日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JND