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裁判官はこう考える 弁護士はこう実践する 民事裁判手続

著:柴﨑 哲夫
著:牧田 謙太郎

紙版

内容紹介

現役の裁判官と弁護士、腹を割って語る!民事裁判手続について法曹二者が互いに意見を交わす、業界注目必須の1冊。よりよい民事裁判のために求められるものとは?若手もベテランもここに新しい気付きが必ずある!

目次

第1 民事裁判手続の意義                   
1 民事裁判手続はどのような意味及び特色を持つか
(1)民事裁判手続は紛争解決のためにある
(2)処分権主義と弁論主義
(3)紛争解決における当事者の納得の重要性
(4)裁判官が的確に認定すべき「事実」とは
(5)認定すべき事実の「範囲」
(6)事実認定に踏み込まないままの判決をした失敗談
(7)弁論主義,要件事実理論に対する「曲解」?
(8)要件事実理論は,それでもやはり重要である
(9)実体的真実の発見に向けて
(10)処分権主義に対する裁判官の介入の必要性
(11)裁判官はなぜ「口を挟む」のか
2 法曹二者が共通して目指していくべきこと
(1)民事裁判手続は事実認定に向けた共同作業
(2)事実認定の共同作業における相互協力
(3)いわゆる「真実義務」と代理人弁護士
(4)裁判官,弁護士がそれぞれ負っている事実認定理由の説明義務
(5)裁判官,弁護士は,相互協力をしているか
⇒弁護士から一言!
1 総論賛成、しかし各論は?
2 弁護士の真実義務とは
3 依頼者との関係
4 再度主論に立ち返る


第2 民事裁判に至るまで  
1 事件の受任
(1)全ては法律相談から始まる
(2)相談後の処理
2 委任契約の締結
(1)委任契約書の作成
(2)何を受任するか
(3)「経済的利益」という言葉
(4)時間をかけて契約書を作成する
3 調査
(1)事実調査
(2)法律・判例調査
(3)インターネットの利用
4 手続きの選択
(1)交渉・調停・ADR
(2)保全処分
(3)債務名義がなくても本差押ができないか
⇒裁判官から一言!
1 はじめに
2 「法的解決を目指す」との視点を忘れずに
3 実体法規の選択と一般条項
4 実体法規の選択と法的センスの問題
5 手続の選択,特に民事保全で注意すべきこと
6 裁判官も見習うべき「弁護士のあるべき態度」

第3 訴状の作成・提出                   
1 訴状作成は大変な作業である
(1)訴状とは
(2)訴状の読み手
(3)訴状作成に王道はない
2 民訴法が求める訴状記載事項
(1)法律上の記載事項
(2)民訴法以外の手続き
3 訴状の作成(請求の趣旨,請求の原因,重要な関連事実)
(1)請求の趣旨について
(2)請求の原因と重要な間接事実について
(3)読み手への配慮
4 訴状の作成(形式面で注意すること)
(1)1頁目と2頁目
(2)管轄裁判所
(3)訴訟物の価格,貼用印紙額
(4)当事者目録
(5)物件目録・登記目録
⇒裁判官から一言! 
1 事情聴取での御苦労は,お察し申し上げるが・・・
2 訴状作成の際は悩んでほしい
3 訴状の記載事項について
(1)請求原因事実の記載は,欠席判決の可否に影響する
(2)間接事実は,紛争の実態が分かる程度に
(3)訴状は,いわゆる「読み物」ではない
4 訴状とともに提出すべき証拠について
5 「よって書き」,否むしろ「訴訟物」の摘示はしっかりと

第4 答弁書・準備書面                   
1 被告事件の相談から第1回期日まで
(1)訴状を手にした相談者
(2)答弁書の記載事項
(3)認否と被告の主張の書き方
(4)三行半答弁書の是非
(5)答弁書の提出
(6)第1回口頭弁論期日
2 準備書面の作成と期日
(1)準備書面とは
(2)準備書面と期日の関係
(3)期日の臨み方
(4)準備書面の作成
(5)準備書面の提出
⇒裁判官から一言!
1 「認否」と「被告の主張」をコーナー分けると読みやすい
2 反対事実の主張立証を拒否する当事者には,しっぺ返しが待っている
3 第1回期日に委任状の原本が未着のときは,終結か続行か?
4 第1回期日に被告本人のみが出頭した場合,代理人抜きで被告本人から事情聴取をするか?
5 期日には「口頭」弁論をする気構えで臨んでほしい
6 本人の話がコロコロ変わっても「大人の対応」を
7 期日終了直後の復習は裁判官も励行すべき

第5 書証と証拠説明書
1 事実認定における書証の価値
(1)裁判官は書証を重視する
(2)裁判官はどのような過程で「事実認定」をするのか
(3)書証は「リアルタイム」で作成されている
(4)書証は「訴訟における勝敗」をにらんでいない
(5)書証の文面も「特段の事情」により否定されることも
(6)「95パーセント」は本当か
2 提出すべき書証とは何か
(1)提出すべき書証か否かの振り分け基準
(2)必要な書証か否かの意見対立があったら
3 どの時期に書証を出すべきか
(1)書証は早めに提出してほしい
(2)書証の後出しによる「悪性立証」は許されるか
(3)相手方による認否前の書証提出は必要か
4 証拠説明書をめぐる問題
(1)証拠説明書の機能を再確認しよう
(2)書証の作成者を的確に把握すること
(3)立証趣旨の記載は実質的かつ簡潔に
(4)書証の作成年月日もおろそかにしない
⇒弁護士から一言!
1 書証の重要性
(1)裁判官の心証形成過程
(2)書証の信用性の評価
(3)作成過程を多角的に検討する
(4)実況見分調書の証明力
(5)著者の目撃者体験
(6)まとめ
2 書証を出すタイミング
3 証拠説明書

第6 争点整理手続                   
1 争点整理のあり方
(1)争点整理が不十分な審理が増えている?
(2)争点整理はなぜ重要なのか
(3)裁判官は絶えず情報発信をする必要がある
(4)1期日における争点整理の具体的な実施方法
(5)争点「整理」というけれど,「整理」とは何をするのか?
2 弁論か弁論準備か
(1)争点整理は弁論期日ではできないのか?
(2)弁論では争点整理をするための時間が足りない・・本当か?
(3)弁論準備の「セールスポイント」を生かすべき事件とは?
(4)弁論の「公開」と「傍聴人の存在」が弁論準備に付する動機?
(5)「公開性」を重んじるなら準備的口頭弁論もある
3 電話会議
(1) 民訴法170条3項の「その他相当と認めるとき」とは?
4 進行協議期日
(1)進行協議期日と「事実上の検証」
(2)「事実上の検証」後に別の裁判官が担当になったら・・・
⇒弁護士から一言!
1 争点整理手続
(1)争点整理の重要性
(2)争点を意識しない訴訟進行の弊害
(3)いうべきことをきちんという
(4)ホワイトボードを使った争点整理
2 弁論準備について
(1)弁論準備慣れ
(2)弁護団事件と傍聴人
3 電話会議について
4 進行協議期日について

第7 陳述書,証拠申出,尋問準備                   
1 書証の取り調べから人証の取り調べへ
(1)裁判官から「進行についてご意見は?」と聞かれたら。
(2)証拠調べをせずに結審!
2 陳述書の作成
(1)陳述書の意義,機能
(2)誰が起案するのか
(3)陳述者のレベルに似せるべきか
(4)内容についての注意点
(5)陳述書をいつ作成するか
(6)第三者へのアプローチ
(7)第三者との面談
3 証拠申出書
(1)尋問されたい人はいない
(2)相手方に対する人証申請
(3)第三者の証人申請
(4)証拠申出書の作成
4 証拠決定
(1)尋問の順番
(2)尋問時間
5 尋問の準備
(1)尋問事項の作成とリハーサル
(2)リハーサルでうまくいかない
(3)尋問事項(手控え)を渡すか否か
(4)反対尋問の準備
(5)証拠の再確認
⇒裁判官から一言!
1 「ご意見は。」という抽象的な質問はせず,選択肢を示すべし
2 人証ゼロは,個々の人証の必要性を検討した結果である
3 人証ゼロの可能性は,早めに示唆しておくべき
4 陳述書の証拠開示機能も,主尋問代用機能と同じく重要である
5 陳述書には,具体的事実を中心に盛り込むべし
6 作成者の尋問をしない陳述書の証拠価値は高くない
7 陳述書の提出は,「先攻・後攻」ではなく同時とするのが公平である

第8 人証調べ
1 証人及び当事者本人の採用
(1)人証採用の基本姿勢は「『穴埋め』ができる人かどうか」
(2)人証の「関連性」については多様な意見が・・
(3)「唯一の証拠」ならぬ「唯一の人証」は採用すべき
(4)本人の納得を目的とする本人尋問の是非
2 人証調べの準備
(1)主尋問の準備も「ほどほどに」
(2)反対尋問の準備は,陳述書の弱点探しで
(3)裁判官も,自ら反対尋問をするつもりで準備すべし
3 人証調べの実施
(1)証人や本人には,事実を語らせるように
(2)民訴規則違反の質問に関心を持ってほしい
(3)質問の「前置き」はすべきでない
(4)質問内容を超えた答えは遮ってほしい
(5)反対尋問で嘘を暴くには,事実を具体的に語らせるべし
(6)尋問期日直前の書証提出は「相当期間前」までのはずだが
(7)「弾劾証拠を示します」というけれど,これは弾劾証拠なのか?
4 証人や本人の供述態度と心証形成
(1)供述の態度は,裁判官の心証形成に影響するか?
(2)供述の態度は,訴訟記録に残されているのか?
⇒弁護士から一言!
1 弁護士は尋問のプロのはずだが・・・。
2 尋問一般の心得
(1)大きな声ではっきりと話す
(2)間合いをとる
(3)一答のための一問
(4)前置きをしない
(5)相づちやオウム返しをしない
(6)なるべく雑語を入れない
(7)丁寧な言葉遣いや態度
3 主尋問の注意点
(1)机の上の準備とウォーミングアップ
(2)主尋問は無理をしない
(3)失敗してもあわてない
(4)思いつきの質問をしない
4 反対尋問の注意点
(1)事前準備と主尋問の齟齬がないか
(2)反対尋問の巧手
(3)反対尋問は引き際が肝心
5 異議の出し方
(1)誤導尋問
(2)意見を求める尋問・意見をおしつける尋問
(3)誘導尋問
(4)証人が直接経験していない事実を求める尋問
6 尋問の終わりに

第9 和解
1 訴訟上の和解についての基本的な考え方
(1)和解運営には二つの型がある
(2)筆者が心証中心型を採用するのは何故か
2 訴訟進行状況に応じた和解勧試の方法
(1)提訴後間もない時点での和解は交渉中心型で
(2)争点整理中の和解勧試は,心証形成に応じて
(3)陳述書や人証調べが,和解案に影響を及ぼすことはあるか
(4)弁論終結後の和解は,毅然とした態度で臨むべし
(5)他方,弁論終結後も証拠評価に関する主張は傾聴すべし
(6)終結後の和解が決裂した後に,心証が変わったら
3 代理人及び当事者本人への接し方は?
(1)裁判官は,代理人や当事者本人が怖い・・・
(2)結局は「経験の積み重ね」しかないのでは
(3)代理人や当事者本人とバトルをする覚悟も,場合によっては必要
4 下された判決が,提示された和解案と真逆だった・・・
(1)和解で,全部敗訴側の顔を立てようとすることは少なくない
(2)判決では紛争の抜本的解決にならないような事件も
5 和解案を拒絶した当事者を,判決で不利益扱い?
(1)裁判官は,職務に関して当事者に「報復」をすることはない
(2)裁判官が当事者に「報復」することは,国家賠償モノ
6 和解の席では当事者本人に何を言えばよいのか
(1)心証開示という「理屈」だけで説得するのは難しい
(2)本人に「私も同じ」,「私も同感」と言ったら成功した事例
(3)当事者本人と同じ舞台に立つと,道が開けるかもしれない
⇒弁護士から一言!
1 和解の時期・タイミング
(1)和解の多くは証拠調べ直後に成立している
(2)和解目的の訴訟進行
2 裁判官の心証開示
(1)心証開示の受け方
(2)様々な心証開示
(3)心証開示がなかった場合
(4)裁判官に望むこと
3 依頼者と和解を検討する

第10 その他
1 訴訟の中断・受継
(1)依頼者や相手方が亡くなった・・・。
(2)訴訟の中断・受継の規定
(3)訴訟が当然終了する場合
(4)訴訟代理人がついている場合は要注意
(5)相続放棄の可能性を忘れずに
(6)相続人に連絡をしないで判決に至ったケース
(7)日頃のコミュニケーション
2 訴えの変更,反訴・別訴提起
(1)どのようなときに変更するのか
(2)訴えの変更の要件
(3)訴えの変更の手続き
(4)反訴と別訴
3 最終準備書面
(1)最終準備書面とは?
(2)最終準備書面の書き方
(3)証言の扱い方
(4)反論と再反論も書く
(2)判決をいつ受け取るのか
4 判決後の処理
(1)結果の連絡は迅速に
(2)判決をいつ受け取るのか
⇒裁判官から一言!
1 「有事」への備えはとても大切である
2 本人死亡の際は,裁判所も事件をストップさせた方が・・・
3 訴えの変更に関する注意点あれこれ
(1)変更の申立ては,躊躇すべからず
(2)突如として,訴状と異なる「請求原因」の記載が出てきたら・・
(3)送達の手続を失念してしまうことも・・・
4 裁判官が最終準備書面に期待していることは・・・
5 言渡後の手続で本人と「行き違い」がないように

著者略歴

著:柴﨑 哲夫
1984年 早稲田大学法学部卒業
1988年 名古屋地方裁判所判事補
1990年 前橋家庭・地方裁判所判事補
1993年 青森家庭・地方裁判所判事補
1996年 東京地方裁判所判事補
1998年 同判事
1999年 福島地方・家庭裁判所相馬支部長
2003年 東京地方裁判所判事
2006年 さいたま家庭・地方裁判所川越支部判事
2011年 横浜家庭・地方裁判所判事
2015年 千葉地方・家庭裁判所松戸支部判事
著:牧田 謙太郎
弁護士(柏綜合法律事務所)。
1997年 早稲田大学法学部卒業
2001年 弁護士登録(千葉県弁護士会)
2013年 千葉県弁護士会副会長
2017年 千葉県弁護士会松戸支部支部長
現在    千葉県児童虐待対応法律アドバイザー
法務省人権擁護委員
柏市教育委員

ISBN:9784313511637
出版社:学陽書房
判型:A5
ページ数:256ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2017年09月
発売日:2017年09月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNAA