出版社を探す

戯曲を読む術

戯曲・演劇史論

著:林 廣親

紙版

内容紹介

戯曲のことばを前に「なす術を知らない」
思いにとらわれてこそ読みへの意欲は動き出す──

技術や方法では得がたい
作品の読みを模索した、記録の集積。

〈劇文学〉という言葉が生きていた時代、
戯曲は文学的感受をもって読まれていた。

舞台・劇評にこだわる今日の読みを離れ、
「戯曲の読み」を柱とした戯曲論。

文学・演劇に関心を持つすべての人へ。

目次

はじめに

第Ⅰ部●読みによる戯曲研究の射程

第一章 森鷗外「仮面」論―〈伯林はもつと寒い......併し設備が違ふ〉
一/二/三/四/五/六/七/八

第二章 岡田八千代「黄楊の櫛」論―鷗外・杢太郎の影
一 劇作家としての八千代について/二 八千代戯曲の個性と「黄楊の櫛」/三 作品論への視界/四 おつなの性格造型について/五 私は私でいたい―おつなの悲劇/六 「和泉屋染物店」との響き合い

第三章 岸田國士「沢氏の二人娘」論―菊池寛「父帰る」を補助線として
一 作品論のモチーフと仮説/二 「父帰る」への通路/三 愛子はなぜ家を出たのか/四 バガボンドの悲喜劇

第四章 井上ひさし「紙屋町さくらホテル」論―〈歴史離れ〉のドラマトゥルギー
一 はじめに/二 作品観の問題/三 長谷川清のつくられかた/四 〈戦争責任〉の中身/五 〈天皇陛下の名代〉から〈亡くなった人たちの名代〉へ/六 「さくら隊」の〈歴史離れ〉について/七 新劇と井上ひさしの劇/八 おわりに

第Ⅱ部●読みのア・ラ・カルト

第一章 谷崎潤一郎「お国と五平」
一/二/三

第二章 横光利一「愛の挨拶」
一/二/三

第三章 矢代静一「絵姿女房―ぼくのアルト・ハイデルベルク」
一 作家的自立に関わる側面から/二 典拠を視野に入れて/三 恋ゆずりのいきさつ/四 「絵姿」の意味/五 自己決定のかたち

第四章 田中千禾夫「マリアの首―幻に長崎を想う曲」
一 その魅力について/二 忍と鹿の関係について/三 「白鞘の短刀」の意味/四 神話の呪縛を超えて―忍の物語/五 鹿とは何者か

第五章 渋谷天外「わてらの年輪」
一 松竹新喜劇と「わてらの年輪」/二 二都(三都)物語の世界/三 老いらくの恋の波紋/四 八重という女/五 どんでん返しの奥行き/六 人生......この喜劇的なるもの

第六章 恩田陸「猫と針」 

第Ⅲ部●演劇史・戯曲史への視界

第一章 近現代演劇史早分かり 上・下
上―旧劇から新劇へ―
一 〈演劇的近代〉の幕開き/二 活歴劇と演劇改良会/三 新派劇の発生と成熟/四 新劇の誕生/五 草創期の近代戯曲/六 大正期の演劇
下―戦前から戦後へ―
一 築地小劇場開幕を中仕切りとした展望/二 プロレタリア演劇をめぐって/三 築地小劇場の分裂/四 戦時下の演劇/五 新劇の戦後/六 戦後の戯曲をめぐって/七 小劇場運動以後
【参考文献】
▼演劇一般・日本演劇全般/▼戯曲・評論関係の基本的なテクスト/▼近代(および現代)演劇の展開にかかわる通史的なもの/▼戯曲史関連/▼当事者の回想による演劇史談/▼作家論・演劇論その他/▼資料・年代記など

第二章 演劇と〈作者〉―山本有三の場合
一 はじめに/二 ある挫折について/三 〈劇作家〉をめざして―「生命の冠」まで/四 歴史劇への移行が意味するもの
▼補注 山本有三戯曲年表

第三章 〈演劇の近代〉と戯曲のことば―木下杢太郎「和泉屋染物店」・久保田万太郎「かどで」を視座として
一/二/三/四/五/六

初出一覧
あとがき

索引[書名・人名・事項]

著者略歴

著:林 廣親
1953年、奈良県奈良市生まれ。神戸大学文学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専攻博士課程中途退学。東京大学文学部助手を経て、現在成蹊大学文学部教授。専門は日本近代文学および演劇。近著に「志賀直哉の文体─覚え書き風に」(『国語と国文学』平成25年11月)、「志賀直哉『好人物の夫婦』を読む─信じていた、でも言ってほしかった─」(『成蹊國文』平成27年3月)、「春夫と演劇」(『佐藤春夫読本』平成27年10月 勉誠出版)など。

ISBN:9784305708014
出版社:笠間書院
判型:A5
ページ数:296ページ
価格:3700円(本体)
発行年月日:2016年04月
発売日:2016年04月07日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ