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ゲームAI技術入門

広大な人工知能の世界を体系的に学ぶ

著:三宅 陽一郎

紙版

内容紹介

本書は、ゲームで使われる人工知能(AI)がどのようなしくみになっていて、どうやって作るのかを解説した書籍です。ゲームの内部に登場するキャラクターは、まるで意識を持っているかのように、こちらの隙をついて攻撃してきたり、また状況にあった動作をしてくれたりします。単純なものならif文の組み合わせでも実現できますが、より複雑で精緻な思考を実現するために、ゲームAIの分野で試行錯誤されてきた数々の手法があります。本書ではそれらを丁寧に解説することはもちろん、記憶、群衆、自動生成など、ゲームAIに関わる技術を網羅的に解説します。基本的なAIから最新のゲームに使われているAIまで、ゲームAIの今がわかります。

目次

はじめに
第1章:ゲームの中の人工知能──ゲームの中で生きているキャラクターを作る
1.1 ゲームAIの全体像
キャラクターAI
ナビゲーションAI
メタAI
1.2 ゲームAIの連携
フレームとは
3つの人工知能のフレームの違い
ゲームAIのミッション
ゲームデザインとAI
1.3 ゲーム世界に溶け込むAI
合理的である
人間的である
1.4 シミュレーション
物理シミュレーションと知能シミュレーション
知能をシミュレーションするには
知能そのものをシミュレーションする/知能が実現していることをシミュレーションする
1.5 シンボルと数値ダイナミクス
1.6 まとめ
第2章:知能のしくみ
2.1 2つの世界──外部世界と内面世界
エージェントアーキテクチャ
知能の3分類
知識生成(Knowledge Making)/意思決定(Decision Making)/行動生成(Action Making)
2.2 内部循環インフォメーションフロー
2.3 環境の中の知性
センサ
エフェクタ
知識生成
行動生成
意思決定
柔軟な知能の運動
記憶
2.4 アーキテクチャ全体について
2.5 C4アーキテクチャ
2.6 意識の理論
2.7 まとめ
第3章:知識表現──世界を噛み砕く
3.1 キャラクターの認識とは何か
人工知能における「表現」とは
フレーム
3.2 センサの設計方法
視覚の実装
視覚システムの応用「存在確率マップ」
聴覚の実装
音の伝搬シミュレーション/プレイヤーが聞く音
身体の感覚
外力、内力/姿勢
感覚統合と事実表現
事実からの推測
3.3 位置検索システム
戦術位置解析技術
行動のための環境のヒントデータ
環境理解のための抽象的表現
事実表現
『Gunslinger』における事実表現
3.4 知識から感覚へ、感覚から知識へ
行為と認識
メタ知識
3.5 環世界へ
環世界の例
環世界の構造
キャラクターの持つ環世界
アフォーダンス
人工知能の知識表現
3.6 エージェントアーキテクチャと環世界
3.7 まとめ
第4章:記憶──AIの内側の表現メモリ
4.1 記憶って何だろう?
身体の知識表現
精神の知識表現
4.2 記憶の構造とダイナミクス
固定記憶
ワーキングメモリ
短期記憶
長期記憶
4.3 記憶の形
感覚記憶
エピソード記憶
記憶の整理機能
エージェントセントリック
4.4 記憶の論理階層構造
世界をアクティブに知る
統合/形成/消滅
記憶の管理
4.5 まとめ
第5章:古典的な意思決定
5.1 反射型と非反射型の意思決定アルゴリズム
5.2 ルールベースの意思決定
ルールセレクタ
ルールの連鎖
5.3 ステートベースの意思決定
ステートマシンの基本
階層化ステートマシン
具体例
5.4 ユーティリティベースの意思決定
効用の計算方法
ダイナミックなユーティリティ
ムードとその変化(効用)の計算方法
限界効用逓減の法則
5.5 まとめ
第6章:現代風の意思決定
6.1 ゴールベースの意思決定
ゴール指向型意思決定
2つのゴール指向プランニング/ゴール指向は未来の観念を持つこと/フォワードプランニングとバックワードプランニング
ゴール指向型アクションプランニング
①ゲーム状態のシンボル化/②シンボルによるアクション表現/③プランニング/複数のアクションプラン
階層型ゴール指向プランニング
階層型ゴール指向プランニングの考え方/階層型ゴール指向プランニングの設計指針/ゴールの列挙/ゴールの分解/小さいゴールを組み合わせて大きなゴールを達成する/ゴールを操作に還元する
6.2 タスクベースの意思決定
階層型タスクネットワーク
階層型タスクネットワークの例:回復薬を作る/階層型タスクネットワークの例:回復薬を届ける
階層型タスクネットワークの実例
衛生兵のAI/部隊長のAI
6.3 ビヘイビアベースの意思決定
アクションゲームにおけるビヘイビアツリー
RPGにおけるビヘイビアツリー
6.4 シミュレーションベースの意思決定
レーシングゲームの例
さまざまなゲームにおけるシミュレーションベースの考え方
キャラクターの運動への応用
6.5 まとめ
第7章:ナビゲーションAIと地形認識
7.1 生物と環境の関係
空間と環境を認識すること
世界を表現する
7.2 知識表現
敵表現リスト
依存グラフ
意味ネットワーク
事実表現
ルールベース表現
世界表現
7.3 さまざまな世界表現
ウェイポイント、ナビゲーションメッシュ表現と経路検索
ナビメッシュ-ウェイポイント階層表現/マップクラスタリング表現
テリトリー表現
戦術ポイント表現
LOSマップ表現
敵配位マップ
7.4 パス検索
パス検索の黎明期
パス検索の本格的な導入事例
パス検索の広がり
スマートテレイン
3次元のパス検索
ルックアップテーブル法
7.5 意思決定と世界表現
地形の認識
地形の接続情報/最適な戦術位置/状況判断
戦術位置検索システム
ゴールデンパス
影響マップ
7.6 まとめ
第8章:群衆AI
8.1 マルチエージェント
コミュニケーション/メッセージング
階層型アーキテクチャ
ファシリテーター型
ブラックボード/ベルギアンAI/トークンによるタイミング制御
8.2 群衆の作り方
生物の群れ「ボイド」
整列/集合/離散/回避
場の力による群衆生成
ソーシャルな関係を入れた群衆
8.3 街の群衆の作り方の実例
巡回するキャラクター
密度コントロール
イベントと人だかり
交戦キャラクター
商店/働く人々/動物たち
応用:監視兵キャラクターの協調方法
8.4 まとめ
第9章:メタAI──ユーザーを楽しませるために
9.1 古典的メタAI
難易度調整
9.2 現代のメタAI
敵の動的配置
プレイヤーの監視
プレイヤーの感情推定
メタAIとプロシージャル技術
地形生成/物語生成
メタAIの内部構造
ユーザー解析技術
メタAIのほかの分野への応用
スマートシティ構想/複数台のロボットの協調
現代的なメタAIのさらなる発展
9.3 まとめ
第10章:生態学的人工知能とキャラクターの身体性
10.1 エージェントアーキテクチャの発展
生物学における環世界
認知科学におけるアフォーダンス
環世界、知識表現、アフォーダンス
多層構造
知能の多層構造
主体と対象の階層化
10.2 キャラクターの身体システム
身体と知能をつなぐ
意識/無意識構造──身体からの認識
人工身体モジュールと人工知能モジュールをつなぐ
身体レイヤ
10.3 多層レイヤシステムの実例
10.4 キャラクターモーションシステムの発展
身体からのフィードバック
ベルンシュタインの身体運動論
身体能力の認識
運動感覚の形成
ニューラルネットワークによる身体運動
10.5 まとめ
第11章:学習、進化、プロシージャル技術
11.1 学習/進化アルゴリズムのゲームへの応用の歴史
1980~1990年代中盤
1990年代後半
2000年代
2010年代
11.2 学習/進化アルゴリズムの事例
『Creatures』におけるニューラルネットワーク
1990年代の日本のゲームシーンにおける学習/進化アルゴリズム
『アストロノーカ』における遺伝的アルゴリズム/『シーマン』における自然言語会話
マイクロソフトリサーチにおける機械学習の研究
『Forza Motorsport』シリーズにおける機械学習
『Killer Instinct』におけるケースベーストリーゾニング
『Total War』におけるモンテカルロ木探索
格闘ゲームにおけるニューラルネットワーク
11.3 プロシージャル技術
プロシージャル技術の始まり
ダンジョン自動生成
自然地形の自動生成
植物自動生成と植物自動配置
街自動生成
ゲームエンジンにおける総合型ゲームレベル自動生成技術
11.4 まとめ──学習、進化、プロシージャル技術の展望
第12章:ゲーム開発の品質保証/デバッグにおける人工知能技術の応用
12.1 ゲーム開発環境/デバッグ/品質保証における人工知能技術
12.2 ゲーム開発工程(ゲーム開発者)を助けるAI
パラメータ調整
ゲーム自動バランス/自動調整
12.3 ゲームサービスを支援するAI
データビジュアリゼーション
12.4 ゲーム品質保証のためのAI
人工知能による自動プレイ
システムテスト
ログデータの活用
強化学習
『Assassin's Creed Origins』における自動解析システム
ディープラーニングのゲームへの応用
ディープラーニングの躍進と課題/品質保証とディープラーニング
ボットを用いた品質保証
12.5 まとめ
あとがきと謝辞
索引

著者略歴

著:三宅 陽一郎
三宅陽一郎(ゲームAI開発者)

京都大学で数学を専攻、大阪大学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程を経て、2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発/研究に従事。九州大学客員教授、理化学研究所客員研究員、東京大学客員研究員、国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会チェア、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。連続セミナー「人工知能のための哲学塾」を主催。著書に『人工知能の作り方』(技術評論社)など。共著に『高校生のための ゲームで考える人工知能』(筑摩書房)、『FINAL FANTASY XV の人工知能』(ボーンデジタル)など。

Web:https://miyayou.com
Twitter:@miyayou
SlideShare:https://www.slideshare.net/youichiromiyake/presentations

ISBN:9784297108281
出版社:技術評論社
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:2780円(本体)
発行年月日:2019年09月
発売日:2019年09月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:WDM