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日経文庫

量子コンピュータまるわかり

著:間瀬英之
著:身野良寛

紙版

内容紹介

ビジネス活用はここまで進んだ
経済価値180兆円も!

・巨大な経済価値を生むと期待され、世界中で投資額が急増している量子コンピュータ。 日本政府も科学技術政策の重点分野に量子技術を挙げ、強力に後押ししています。 さまざまな業界で、ビジネスでの活用が進んでいます。

・量子コンピュータで、今、どのようなことが、どこまでできるのか、国内外の注目企業を多数取り上げ、ビジネス現場での最新の取り組みを紹介します。各国の政策や研究開発状況、今後の課題も明らかにし、将来を見通します。

・量子コンピュータはあらゆる業界でイノベーションを起こすチャンスがあります。活用を検討する企業のビジネスパーソンが、丸ごと1冊で全体像を学べる入門書です。

・著者は(株)日本総合研究所の研究員で、先端技術に関するリサーチを行っています。難解な量子コンピュータの仕組みをわかりやすく伝えます。

■「はじめに」より
 量子コンピュータと聞いて、「今のコンピュータよりも桁違いに高速なコンピュータ」「IBMやグーグルなど海外を中心に開発が進んでおり、日本でも競争が激化していると新聞記事で読んだ」「実際の業務で利用できるまで、まだ何十年もかかると聞いたことがある」などと漠然としたイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

 また、実際のところ、「量子コンピュータの現在地はどこなのか」「どの企業がどのようなユースケースを検討しているのか」といった疑問を持つビジネスパーソンも多いと思います。量子コンピュータが広く社会で利用されるには、乗り越えるべき課題がたくさんありますが、今後、技術が指数関数的に進歩して、それらの課題が解消される可能性があります。

 アマラの法則をご存じでしょうか。われわれは、技術が与える社会や経済への影響について、短期的には過大評価を行い、長期的には過小評価をする傾向にある、というものです。
 指数関数的に成長を続ける技術に対して、リニア思考で未来を予測しては打つべき手を見誤ってしまいます。正しく技術を評価し、活用するためには、最新動向を追い続け、その仕組み・本質を学ぶことが重要です。

目次

第1章 量子コンピュータのインパクト

1 実用化で見えてきた成果
(1)1兆2000億ドル(180兆円)以上の経済価値を生む
(2)さまざまなビジネス現場での活用
(3)世界中の国家、研究機関が取り組む
2 2種類ある量子コンピュータ
(1)不思議な性質―量子重ね合わせと量子もつれ
(2)量子ゲート方式と量子アニーリング方式
(3)2つの方式のプロセス
3 ハードウェアの仕組み
(1)量子状態の実現方式をさまざまに研究
(2)超伝導方式
(3)半導体方式
(4)イオントラップ方式
(5)光方式
(6)中性原子方式
COLUMN 誤り耐性を理解する4つの重要ワード

第2章 量子コンピュータを使う

1 クラウドプラットフォームとソフトウェア開発キット
(1)さまざまなクラウドで公開されている量子コンピュータ
(2)ソフトウェア開発キットの充実
2 代表的な量子アルゴリズム
COLUMN 量子コンピュータを体験しよう!

第3章 量子コンピュータに取り組む企業の動き

1 どのようなプレーヤーがいるのか
2 スタートアップの動向
3 産官学コンソーシアムの取り組み
COLUMN 産官学コンソーシアムの注目研究テーマ

第4章 各国の政策と標準化、特許の動向

1 世界各国で進むプロジェクト
2 北米の政策
3 欧州の政策
4 アジア・オセアニアの政策
5 標準化団体の取り組み
6 量子技術の特許の動向
(1)2017年から急激に増加
(2)幅広い企業・機関が特許を保有

第5章 量子ゲート方式の活用事例

1 主要な取り組みと発展している分野
2 金融領域における取り組み
(1)オプション価格の決定
(2)改良した量子振幅推定による数値計算
(3)振幅符号化アルゴリズムの応用
(4)HHLによるポートフォリオ最適化計算
(5)インデックス・トラッキングへの応用
3 化学分野における取り組み
(1)材料表面上の化学反応モデリング
(2)変分量子固有値ソルバーによるエネルギー計算
4 情報分野における取り組み
(1)抽出型の文章要約
(2)量子機械学習による時系列予測
(3)量子ベイジアンネットワークの性能評価
5 製造分野における取り組み
(1)車両の塗装工程最適化
(2)量子ニューラルネットワークによる自動車画像の分類
6 いつ実用化されるのか
COLUMN 金融分野の量子アルゴリズム
COLUMN 化学分野の量子アルゴリズム
COLUMN 情報・製造分野の量子アルゴリズム

第6章 量子アニーリング方式の活用事例

1 主要な取り組みと発展している分野
2 金融領域における取り組み
(1) リバースストレステスト
(2) 株式のポジション予想
(3) 資産価値の変動予測
(4) ポートフォリオ最適化
(5) 債券アービトラージの最適化
3 化学分野における取り組み
(1) 材料設計パラメータの調整
(2) 複合ポリマーの安定構造探索
4 情報分野における取り組み
(1) 時系列データのクラスタリング
(2) テレビCMの配信最適化
5 製造・流通分野における取り組み
(1) 交通最適化
(2) 航空貨物の配置最適化
(3) 人員配置最適化
6 ハードウェアは3種類
COLUMN 量子アニーリング方式の最新トピック

第7章 量子コンピュータの未来

1 ハードウェア、ソフトウェアの課題をどう克服するか
(1) 量子ゲート方式の課題
(2) 量子アニーリング方式の課題
2 発展のロードマップとマイルストーン
(1) 2050年までのロードマップ
(2) 今後の重要なマイルストーン
3 量子人材をどう育成するか
(1) 人材育成3つのステップ
(2) ステップ1 研修
(3) ステップ2 模擬演習
(4) ステップ3 実践
4 技術はどう進化していくか
5 企業が今、取り組むべきこと
(1) 商用アプリケーションの開発、標準化がカギ
(2) 「何をやったか」だけでなく「どうやったか」まで理解
(3) 短期的に必要な4つのアクション

著者略歴

著:間瀬英之
(株)日本総合研究所 先端技術ラボ エキスパート
2014年、東京理科大学大学院理工学研究科修士課程修了、(株)日本総合研究所入社。国際金融規制に対するシステムの企画・開発、プロジェクト管理などを経て、2018年より先端技術ラボにて量子コンピュータ、AIなどの先端技術に関する動向調査業務に従事。2022 年度公募「NEDO 先導研究プログラム/新産業創出新技術先導研究プログラム案件検討委員会」委員。共著書に『金融デジタライゼーションのすべて』(金融財政事情研究会)がある。
著:身野良寛
(株)日本総合研究所 先端技術ラボ シニア・スペシャリスト
2003年、京都大学大学院情報学研究科修士課程修了、(株)日本総合研究所入社。クレジットカードの基幹システム・Web システムの全面更改プロジェクトのシステム開発を経て、2017 年より先端技術ラボにて機械学習、自然言語処理に関する最新技術の調査や実証実験を推進。2020 年より量子コンピュータの活用を図るべく技術調査に取り組み始め、量子コンピュータの民間活用に向けた実証実験の企画や執筆活動を続ける。

ISBN:9784296118786
出版社:日経BP 日本経済新聞出版
判型:新書
ページ数:272ページ
定価:1000円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:UD