半導体逆転戦略
日本復活に必要な経営を問う
著:長内厚
内容紹介
【数を追わない経営では勝ち目はない】
日本の半導体産業はなぜ凋落し、その復権には何が必要なのか。本書は、技術信仰に縛られた日本企業の実態、技術で勝ってビジネスで負けてきた歴史、数を追わないことの問題点などを明らかにし、韓国、台湾になぜ逆転を許したのかについても的確に分析。ラピダスよりもJASMが日本の転機となるかもしれないなどの大胆な考えも示す復活のための経営戦略指南書。日本の半導体産業が抱える課題を、日本企業が陥りやすい技術論ではなく、ビジネスとしての成功を目指す経営学的な見地から解き明かす。生き残るために必要な経営転換策が満載の本。
目次
第1章 ファーウェイ7ナノショック
1 SMICによる7ナノプロセスの生産
2 そもそも半導体とは
3 なぜ半導体で計算ができるのか
4 米国の対中半導体輸出規制はなにを止めたかったのか
5 中国はどのようにして7ナノチップをつくったのか
第2章 ラピダスよりもJASMが日本の転機となるかもしれない訳
1 ラピダスに対する疑問
2 日本の半導体産業の凋落
3 韓国と台湾の半導体産業事情
4 日本の半導体企業の問題点
5 ラピダスへの疑問と不安
第3章 日の丸半導体の復権をかけたTSMCの誘致
1 熊本にできるJASMへの期待
2 最先端よりも最多需要の獲得を追う
3 ビジネス視線で支援に乗り出す政府の意識変革
4 ソニー、アップル、TSMCの三角関係
5 十時ソニーのイメージセンサーにかける決断
6 台湾のエレクトロニクス産業とTSMC
7 ハイテク産業の育成に果たしたITRIの役割
8 モーリス・チャン氏によるファブレス&ファウンドリーの推進
第4章 技術だけ強い日本の戦略的課題
1 技術信仰に縛られた日本企業
2 ビジネスとして同一スペックのものが長期に必要
3 半導体以外で事業に育てられなかった技術
4 成熟期のイノベーションに必要なもの
5 いまこそ松下幸之助氏の水道哲学を思い出すべき時
第5章 日本の半導体産業の歴史
1 技術で勝ってビジネスで負ける
2 日本が米国に勝った半導体製造技術
3 欧州のEV対トヨタ自動車の全方位戦略
4 1980年代に訪れた日本の成功体験
5 半導体の外販ビジネス
6 デジタルの波が日本企業を呑み込む
7 メモリ市場をめぐる日米の攻防と経済摩擦
8 装置産業がニッチ市場で生き残れるか
第6章 数を追わないことの問題点
1 フラッシュメモリー――安価な半導体を大量にの発想
2 顧客は技術ではなく製品を買う
3 性能が良いほうがいいに決まっているの嘘
4 オープンイノベーションの意味
5 顧客の使い勝手を考えれば標準化
6 技術流出かオープンイノベーションか
第7章 日米半導体摩擦を静かに見守っていた韓国の戦略
1 日米半導体摩擦を参考にした韓国の立ち回り方
2 新興国市場に狙いをつけた韓国の戦略
3 連続投資で大量販売モデルを確立した韓国
4 繰り返される日本の失敗
5 対韓輸出規制強化で見られた日本の強み
第8章 台湾が世界一に上り詰められた深刻な理由
1 国連脱退で後ろ盾を失う台湾
2 国連脱退後の台湾と日米の関係
3 国策となった半導体事業
4 開発と製造の分離――ファブレス&ファウンドリーモデル
5 台湾のモデルが半導体の国際的な分業を生む
6 ファブレスの雄エヌビディア
第9章 米中貿易摩擦で漁夫の利を取れるのは誰か
1 チップ4による中国の囲い込み戦略
2 米国の思惑に乗じて日本半導体産業の再起の目は
3 チップ4メンバーそれぞれの事情
4 韓国との関係強化の必要性
5 日本と台湾との蜜月はいつまで続くのか
6 日本と台湾の協力が一層深まるチャンス
第10章 安心という日本の価値づくり
1 ビヨンド2ナノのラピダスの問題点
2 民主国家でつくる安心感という日本の価値創造
3 大量生産という台湾と韓国の価値獲得
4 注目される後工程の協業
第11章 中国を敵に回しすぎないこと
1 中国との関係を完全排除することは危険
2 地政学的に見ても台湾がベストパートナー
第12章 半導体産業に必要なのは経営戦略
1 戦略の基本に立ち返る
2 ラピダスとJASMの戦略的優位を考える
3 後工程の強みは日本の半導体戦略の中心になるのか
4 日本のビジネスの力が試される時