特 色
旧少年法や感化教育の誕生等、少年犯罪を考えるうえで重要な時期である戦前期に焦点をあて、非行・少年犯罪に関する重要な文献・資料を集成・復刻!
感化院、少年刑務所、少年教護院、少年審判所、矯正院(少年院)など、少年達に働きかけるあらゆる機関に関する文献・資料を網羅!さらに、これまであまり参照されることのなかった少年受刑者の告白集も収録。
法学、教育学、社会福祉学などの人文社会科学を中心に、精神医学や生物学に関する文献までを広くカバーした構成。分野の枠組みを超え、多角的な視点から少年犯罪へのアプローチを試みる!
日本国内はもとより、朝鮮や樺太の資料までを収め、地域性に配慮した内容構成!
刊行のことば 鮎川潤
「温故知新」―少年犯罪・少年非行に関する分野ほど、このことばが当てはまるものを知らない。子どもたちは成長する。大人はやがて彼らに社会を託さざるを得ない。しかし、未来は常に不確定的であり、不安を感じる。次の世代は正しく成長しているのか、今後の社会を担うにふさわしいか。大人たちは子どものどのような行動に不安を感じ、どのような行動を問題があると考え、どのような社会的対応を取ってきたのか。それがこの文献集に集約されている。
この文献集では、犯罪を行った少年の「告白」を含めて、その声を可能な限り収録するように努めた。彼らへ対応する人たちも、第一線の警察官から、検察官、少年審判所審判官、感化院・少年保護施設の職員関係者、司法省の重要人物の著作までを広くカバーしている。さらに、幼年監、矯正院、少年刑務所、保護観察の資料―戦前について考察するうえでは欠かせないにもかかわらず、現在に至るまで見落とされてきた「外地」の資料を含む―を収録し、少年犯罪・少年司法・少年保護の全領域を網羅した。
戦後、凶悪な少年犯罪が起き、それが集中的に報道されて社会的注目を集め、少年犯罪全体に対する法的対応が大きく変化することも起きた。大人たちは自分たちが子どもであった時代にはなかった凶悪な犯罪を最近の子どもたちは行うようになったと考え、行政あるいは立法において新たな方策や制度が設けられる。しかし、そもそもそうした少年犯罪に関する認識は正しいのだろうか。さらに新たな施策や制度はほんとうに「新しい」のだろうか。戦前にも同様の制度があり、それが復活しただけではないのか。そうした発見や、問いに対する答えがこの文献集にはいくつも盛り込まれている。
大学図書館はもとより、どの公立図書館にも所蔵されていない重要文献、さらにマル秘扱いであった資料をも収録し、戦前の少年犯罪に関する全領域をカバーした『戦前期少年犯罪基本文献集』の意義は非常に大きいといえよう。(関西学院大学教授)
推薦
斎藤義房(元日本弁護士連合会子どもの権利委員長・弁護士)
浜田寿美男(奈良女子大学教授)
森田洋司(大阪樟蔭女子大学学長)
山口幸男(日本福祉大学名誉教授)