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情勢分析レポート 22

タイ2011年大洪水

その記録と教訓

編:玉田 芳史
編:星川 圭介
編:船津 鶴代

紙版

内容紹介

2011年にタイの中部地方で大洪水が発生した。水が引いた後にも、解明すべき疑問や解消すべき不安が残されている。第1に、なぜ洪水が発生したのか。降雨が多かったせいなのか、ダムの管理にミスがあったのか。第2に、大きな被害とはどんなものであったのか。第3に、なぜ大きな損害が生じたのか。なぜ十分な備えや対策をしていなかったのか。第4に、洪水後にどのような洪水対策がとられたのか。その対策は十分なものなのか。第5に、洪水が懸念されるときには、だれが発するどの情報を注視すればよいのか。雨量か、ダムの貯水量か、河川の水位や流量か、海の潮位か。本書は、これらの疑問に答えることを目的としている。
2011年の洪水はタイの歴史にも日系企業の歴史にも刻まれるに違いない大事件である。2011年に1942年洪水の写真集や記録が探し求められたように、遠い将来にタイ2011年大洪水を振り返ることができる記録が残っていることは有意義であろう。本書は、そうした記録のひとつになることも意図している。

目次

本書で使用する略語・組織名称・地図について

序章 タイ2011年大洪水 / 玉田 芳史

はじめに
 第1節 なぜ2011年大洪水なのか
 第2節 本書の構成
 第3節 油断と怠慢-被害が発生した一因

第1章 タイ2011年大洪水の実態 / 小森 大輔、木口 雅司、中村 晋一郎
 はじめに
 第1節 チャオプラヤー川流域の概要
 第2節 2011年大洪水の実態-気象および水位状況から考える
 第3節 タイの水インフラストラクチャーと洪水管理
 第4節 日本の科学技術に基づくタイ、そして世界の水問題解決への研究支援
 補論 チャオプラヤー川流域洪水予測システム / 布村 昭彦

第2章 タイ2011年大洪水時のプーミポン・ダム操作 / 星川 圭介
 はじめに
 第1節 プーミポン・ダムと2011年大洪水
 第2節 操作規程改定と2012年ダム操作
 第3節 チャオプラヤー・デルタ開発と水をめぐる利害
 おわりに

第3章 タイ2011年大洪水の産業・企業への影響とその対応 / 助川 成也
 はじめに
 第1節 タイ中部大洪水がもたらした産業への影響
 第2節 復旧に向けた取り組みと企業の移転・撤退
 第3節 復旧とサプライチェーン維持に向けた政府の取り組み
 第4節 洪水再発に向けた政府と企業の取り組み
 おわりに

第4章 バンコク二空港とタイ2011年大洪水 / 相沢 伸広
 はじめに
 第1節 ドーンムアン空港
 第2節 スワンナプーム空港
 おわりに

第5章 洪水をめぐる対立と政治 / 玉田 芳史
 はじめに
 第1節 洪水発生理由をめぐる対立
 第2節 洪水対応をめぐる対立
 第3節 被災者支援をめぐる対立
 第4節 洪水対策と限界

第6章 タイ2011年大洪水と水資源管理組織-統合的指令系統の構築をめざして- / 船津 鶴代
 はじめに
 第1節 2011年以前の水資源管理組織-分節化された水資源管理行政
 第2節 錯そうした洪水予測と避難警告-混乱から対立へ
 第3節 新たな水資源管理組織の模索
 おわりに-要約と課題

第7章 タイ2011年大洪水後の短期治水対策 / スッチャリット・クーンタナクンラウォン(翻訳:星川 圭介)
 はじめに
 第1節 事態の推移
 第2節 治水の原則
 第3節 即時・短期対策の枠組み
 第4節 即時・短期対策の進捗状況
 第5節 短期治水対策の有効性
 第6節 残された課題
 おわりに

巻末資料 / 監修:星川 圭介

著者略歴

編:玉田 芳史
玉田 芳史 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授
小森 大輔 東北大学大学院環境科学研究科准教授
木口 雅司 東京大学生産技術研究所特任助教
中村 晋一郎 東京大学生産技術研究所特任助教
布村 明彦 (財)河川情報センター研究顧問、(社)南三陸福興まちづくり機構副理事長、環境防災総合政策研究機構上席研究員、日本災害情報学会理事
星川 圭介 京都大学地域研究統合情報センター助教
助川 成也 日本貿易振興機構バンコク事務所主任調査研究員
相沢 伸広 日本貿易振興機構アジア経済研究所新領域研究センター研究員
船津 鶴代 日本貿易振興機構アジア経済研究所 新領域研究センター主任研究員
スッチャリット・クーンタナクンラウォン チュラロンコン大学工学部准教授

ISBN:9784258300228
出版社:アジア経済研究所
判型:A5
ページ数:207ページ
定価:1900円(本体)
発行年月日:2013年09月
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS