アジ研選書 53
現代フィリピンの法と政治
再民主化後30年の軌跡
著:知花 いづみ
著:今泉 慎也
内容紹介
フェルディナンド・マルコス政権による権威主義体制に終止符を打った1986年2月の「エドサ革命」から30年余りの歳月が流れた。フィリピンの総人口は2015年の人口センサスで初めて1億人を超え(1 億98万人)、25年前の1990年の総人口6070万人と比較すると66%増加した。1986年の民主化運動から30年のあいだに人口はほぼ倍増したといえるだろう。2015年の30歳未満の人口は6017万人(59.6%)であり、平均年齢は約25歳で国民の約 6 割が民主化後に生まれた世代であることがわかる。
エドサ革命と呼ばれたフィリピンの民主化運動は、その後の東アジアにおける民主化の波の先陣を切る政治変化として注目されてきた。しかしながら、上述のように1987年以降に生まれた市民がすでに 6 割を超えている今、エドサ革命の記憶は風化が進んでいるといっても過言ではない。2016年総選挙による異色の指導者ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の登場は、時代の変化を示すものといえるかもしれない。
エドサ革命後に制定された1987年フィリピン共和国憲法は、マルコス権威主義体制の負の遺産の清算だけでなく、民主化後の政治体制や経済社会改革の青写真を描くものであった。フィリピンの将来を願ったさまざまな人々の思いが込められた憲法であり、さまざまな画期的なプログラムが盛り込まれている。その憲法に描かれた絵は30年の時を経て、はたしてどれだけ実現したのであろうか。あるいは、すでに今の時代とのあいだにずれが生じているのであろうか。
目次
序論 / 知花 いづみ・今泉 慎也
1. 本書のねらい
2. 本書の構成
3. 法令等の表記について
第1章 フィリピンの政治過程と憲法 / 知花 いづみ・今泉 慎也
はじめに
第1節 1987年憲法の背景と制定過程
第2節 1987年憲法の特徴
第3節 1987年憲法体制の展開
おわりに
第2章 フィリピンの選挙制度改革 / 知花 いづみ・今泉 慎也
はじめに
第1節 選挙に関する法と組織
第2節 電子選挙制度の導入
第3節 政治参加の拡大のための取り組み
おわりに
第3章 フィリピンの司法化 / 知花 いづみ・今泉 慎也
はじめに
第1節 フィリピンにおける違憲審査制の基盤
第2節 司法の独立と最高裁判所長官の弾劾
おわりに
第4章 南部フィリピン紛争と憲法 / 知花 いづみ・今泉 慎也
はじめに
第1節 「ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)」の形成
第2節 バンサモロと2008年最高裁判所違憲判決
第3節 バンサモロ基本法案の合憲性問題
第4節 ドゥテルテ政権期における取り組み
おわりに
第5章 フィリピンにおける市場と法-競争法を中心に- / 知花 いづみ・今泉 慎也
はじめに
第1節 憲法と経済
第2節 2015年競争法の制定と特徴
おわりに
参考文献
参照法令
参照判例
主要なウェブサイト
索引〔人名、事項〕
ISBN:9784258290536
。出版社:アジア経済研究所
。判型:A5
。ページ数:182ページ
。定価:2300円(本体)
。発行年月日:2019年03月
。発売日:2019年03月22日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LAZ。