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アジ研選書 No.48

ハイチとドミニカ共和国

ひとつの島に共存するカリブ二国の発展と今

編:山岡 加奈子

紙版

内容紹介

本書は、カリブ海で⼆番⽬に⼤きいイスパニョーラ島を分け合うハイチとドミニカ共和国の対照的な経済・政治発展と、両国を取り巻く国際環境を取り上げた。
序章(尾尻希和)で両国の概要を紹介した後、1章(狐崎知⼰)では、ハイチとドミニカ共和国の発展経路をたどり、歴史的にどの分岐点(何度かある)をきっかけに発展あるいは停滞に向かったかを分析した。次に2章(尾尻希和)は、両国の政治発展を、①国家建設、②⺠主化、③福祉国家建設の3つのレベルに順に進むという視点から書かれている。ハイチは①国家建設レベルでもがいており、ドミニカ共和国は③福祉国家建設を⽬指していることを⽰した。3章(久松佳彰)は⼊⼿可能な経済データを駆使し、両国の対照的な経済発展の現状を⽰した。ドミニカ共和国は中進国に到達しているが、「中進国の罠」にはまっている可能性がある。ハイチは「貧困の罠」に陥ったままである。4章(宇佐⾒耕⼀)では、両国の⼈々の⽣活実態を、社会政策の⾯から分析した。ドミニカ共和国はカバー率に問題はあるものの、公的年⾦や労働災害保険など、制度は⼀通り揃っている。ハイチは国家の能⼒が低く、海外⽀援頼みである。5章(⼭岡加奈⼦)は、奴隷制を廃⽌したハイチと、奴隷制を継続したい欧⽶列強とドミニカ共和国のエリート、という構図が、イスパニョーラ島に2つの国を⽣んだこと、両国の⼒関係が20世紀に逆転し、ドミニカ共和国側のレイシズムと反ハイチ主義が両国関係を複雑にしていることを述べた。最後に終章(⼭岡加奈⼦)で、本全体をまとめている。
ハイチに関してもドミニカ共和国に関しても、⽇本では先⾏研究が少ない。両国の現在の状況を理解するためには、過去300 年の歴史的背景を理解する必要がある。歴史的背景を踏まえつつ理解が進むよう、1 章から4 章まではほぼ時系列に配置されている。また、両国を理解することで、開発、⽐較政治、経済学、社会政策、国際関係のそれぞれのディシプリンの理解も可能になるように⼯夫した。これにより、⼤学で教科書として使っていただくことが可能になっている。

目次

まえがき

イスパニョーラ島地図

序章 イスパニョーラ島研究事始め 尾尻 希和
 はじめに
 第1節 ハイチとドミニカ共和国について
 第2節 本書の構成

第1章 開発-長期的発展経路と決定的な分岐- 狐崎 知己
 はじめに
 第1節 植民地時代-長期停滞と世界的な繁栄-
 第2節 ハイチにおける奴隷制度の廃止と長期衰退経路1
 第3節 米国による占領
 第4節 独裁体制
 おわりに

第2章 政治-政治体制比較と政治発展過程- 尾尻 希和
 はじめに
 第1節 政治発展論
 第2節 独立・国家建設
 第3節 民主化・福祉国家建設
 第4節 ドミニカ共和国の問題点とハイチの希望
 おわりに

第3章 経済-ハイチの停滞とドミニカ共和国の成長- 久松 佳彰
 はじめに
 第1節 ハイチの経済停滞とドミニカ共和国の経済成長
 第2節 ハイチ経済-輸入と移民からの海外送金への依存-
 第3節 ドミニカ共和国経済-経済成長と今後の課題-
 第4節 ハイチとドミニカ共和国の経済関係
 おわりに

第4章 社会政策-人々の暮らしと保障- 宇佐見 耕一
 はじめに
 第1節 ハイチとドミニカ共和国の人々の暮らし
 第2節 ハイチの人々の暮らしの保障
 第3節 ドミニカ共和国の人々の暮らしの保障
 おわりに

第5章 国際関係-イスパニョーラ島の分断と大国との関係- 山岡 加奈子
 はじめに
 第1節 ハイチ革命の国際環境
 第2節 イスパニョーラ島の分断
 第3節 ドミニカ共和国におけるハイチ移民問題
 第4節 先進国との関係-移民・国際援助・麻薬問題-
 おわりに

終章 ハイチとドミニカ共和国-なぜ分かれ、なぜこれほど異なる国になったのか- 山岡 加奈子
 本書のまとめ
 今後の展望

付録 ハイチ・ドミニカ共和国関係文献解題

著者略歴

編:山岡 加奈子
山岡 加奈子 アジア経済研究所地域研究センターラテンアメリカ研究グループ
尾尻 希和  東京女子大学現代教養学部准教授
狐崎 知己  専修大学経済学部教授
久松 佳彰  東洋大学国際地域学部教授
宇佐見 耕一 同志社大学グローバル地域文化学部教授

ISBN:9784258290482
出版社:アジア経済研究所
判型:A5
定価:2500円(本体)
発行年月日:2018年03月
発売日:2018年03月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB