アジ研選書 30
東南アジアの比較政治学
編:中村 正志
内容紹介
この本を手にしているあなたは、仕事上の関心から東南アジアの情報を求めている社会人だろうか?それとも、政治学を専攻する大学生だろうか? 本書の趣旨は、政治学の知見を活用して東南アジアの現代政治を読み解く、というものだ。この地域の政治そのものに興味をもつ方と、政治学上の関心から東南アジアについて知りたい方のどちらにも役立つように工夫した。
本書でわれわれは、政治制度に焦点を当てて、域内先進国のタイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシアを比較した。トピックごとに、5カ国のあいだの差異に注目して、なぜ違いが生じたのかを政治学の理論を使って説明している。また、この5カ国が中心になって構成する東南アジア諸国連合(ASEAN)について、開発途上国がつくったほかの地域機構と比較して論じた。
東南アジアの現実を知りたい読者のなかには、「制度の話なんて退屈だし、理論など役に立たない」と思っている人がきっといるだろう。この地域の政治を理解するのに、制度の働きを知ることがなぜ必要なのか、比較と理論がどうして重要なのかということを序章で説明した。だからたったいま手にした本を書棚に戻す前に、もう少しページを繰っていただけるとうれしい。もちろん、この本を最後まで読んでもらえたらもっとうれしい。本書の各章は、それぞれ単独で読んでも理解できるように書かれている。けれども制度は相互に影響を与え合う関係にあるから、通読すればいっそう理解が深まるはずだ。
目次
本書の使い方
序章 なぜ制度に注目し,なぜ比較するのか?-本書のねらいと要点- / 中村 正志
はじめに
1.なぜ制度に注目するのか?
2.なぜ比較と理論が必要なのか?
3.本書の構成と各章の要点
第1章 政治体制 / 中村 正志
はじめに
1.東南アジア5カ国における政治体制の変遷
2.政治体制を規定する要因
おわりに
第2章 執政・立法関係 / 川村 晃一
はじめに
1.執政制度の類型
2.執政長官の強さ
3.執政制度と政策過程
おわりに
第3章 司法制度 / 川村 晃一
はじめに
1.裁判所組織の独立性
2.司法の権限
3.権力分立制のなかの司法
4.司法と法の支配
おわりに
第4章 政党 / 川中 豪
はじめに
1.東南アジア政治における政党
2.政党システムと政党組織
3.政党システムの及ぼす効果
おわりに
第5章 選挙 / 川中 豪
はじめに
1.東南アジア政治における選挙
2.選挙制度
3.選挙制度による効果
おわりに
第6章 社会運動 / 重冨 真一
はじめに
1.社会運動の分析枠組み
2.東南アジア社会運動の環境・動員構造・展開
おわりに
第7章 国際制度-ASEAN- / 鈴木 早苗
はじめに
1.途上国間の国際制度としてのASEAN
2.途上国間の国際制度の形成要因とASEAN
3.途上国間の国際制度の効果とASEAN
おわりに
参考文献一覧