出版社を探す

中公文庫 こ62-2

私の作家評伝

著:小島信夫

紙版

内容紹介

彼らから受け継ぐべきものとは何か――
近代日本文学の代表的な文豪十六人の作家と人生を、独自の批評精神で辿り直し、彼らが現代に残した文学的遺産の正体をさぐる、異色の評伝集。

本書は、著者の代表的な長篇小説『別れる理由』と同時期に連載(1968-81年)された評伝シリーズの日本文学篇(海外篇はのちに『私の作家遍歴』として刊行された)。
世界文学にも造詣の深い著者が、いかに深く日本文学を読み込み、その達成を受け継いだかを最も示す評論であり、〈その作家自身の内面にもぐりこんで作品を読み直す〉〈特に、男女関係に鋭く着目する〉など、余人に真似のできない、著者ならではの躍動的な批評眼が発揮された著作でもある(連載中に芸術選奨文部大臣賞)。
また完結時には、本作で試みられた〈評伝中の作家自身の内面にもぐりこむ〉〈自分を評伝の登場人物のように外面的に書く〉という往還的な筆法が、のちの後期コジマ・ノブオの特異な作風=メタ私小説の領域を切り拓いたことを自身、語っている(中野好夫との対談「伝記文学の魅力」1975より)。
そうした重要作でありながら、本作は長らく、『別れる理由』などの派手な経歴の陰に隠れ、注目されてこなかった。
本文庫版は、新潮選書版全三巻(1972-75)を合本にした潮文庫版(1985)を底本とし、さらに、書籍初収録となる柄谷行人・山崎正和との貴重な鼎談を巻末に収録。
日本文学における近代の遺産と現代の基礎づけ、そして彼/女ら=我々と世界文学との接点を再考する上で、いまなお重要な観点を豊富に内蔵した一書として復刊する。

【目次】
永遠の弟子(森田草平)/順子の軌跡(徳田秋声)/狂気と羞恥(夏目漱石)/美貌の妻(森鴎外)/女の伊達巻(有島武郎)/東京に移った同族(島崎藤村)/男子一生の事業(二葉亭四迷)/不易の人(岩野泡鳴)/其中に金鈴を振る虫一つ(高浜虚子)/平坦地の詩人(田山花袋)/明治の弟とその妻(徳冨蘆花)/渋民小天地(石川啄木)/闇汁(正岡子規)/多佳女の約束(続夏目漱石)/神をよぶ姿(泉鏡花)/同じ川岸(近松秋江)/ひとおどり(宇野浩二)
〈巻末鼎談〉「漱石と鴎外の志と現代」柄谷行人×山崎正和×小島信夫(1973)

著者略歴

著:小島信夫
小島信夫
一九一五年、岐阜県生まれ。東京大学文学部英文学科卒業。五五年、『アメリカン・スクール』で芥川賞、六五年、『抱擁家族』で谷崎潤一郎賞、七二年、『私の作家評伝』で芸術選奨文部大臣賞、八一年、『私の作家遍歴』で日本文学大賞、八二年、『別れる理由』で野間文芸賞、九八年、『うるわしき日々』で読売文学賞を受賞。他に『菅野満子の手紙』『原石鼎』『こよなく愛した』『寓話』『残光』など著書多数。二〇〇六年十月没。

ISBN:9784122074941
出版社:中央公論新社
判型:文庫
ページ数:768ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ