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講談社学術文庫

日本の西洋史学 先駆者たちの肖像

著:土肥 恒之

紙版

内容紹介

明治維新以来、「西洋化」は日本の国策であり、西洋は日本人のモデルであり続けた。では、西洋人が自らの政治・経済・文化・社会の来歴を探求した歴史学を、日本人が学ぶことにはどんな意味があったのだろうか。明治から昭和まで、先駆者たちの生き方と著作から、「西洋史家の誕生と苦悩」のドラマを描く。
明治20年、帝国大学に着任したお雇い外国人教師、ルートヴィヒ・リースが、ドイツでランケが確立した近代歴史学を講義したのが、日本の歴史学の始まりだった。リースの弟子で日欧交渉史を開拓した村上直次郎、慶應義塾に学び経済史学の草分けとなった野村兼太郎、ルネサンス論の大類伸、イタリア史の羽仁五郎。マルクスとウェーバーへの深い理解から大きな業績を残した大塚久雄。そして、戦時下の西洋史家たちは「大東亜戦争の世界史的意義」をどのように論じたのか。
また、1920年代にウィーンに留学し、西洋の「受け売り」でも「追随」でもなく、みずから「原史料を直接考究する」主体的学問を確立した上原専禄は、戦後、13世紀のモンゴルの世界征服の時代を「世界史の起点」とする新たな世界史の構想を得るに至る。
[原本:『西洋史学の先駆者たち』中央公論新社2012年刊を増補]

目次

序に代えて
第一章 ドイツ史学の移植――ルートヴィヒ・リースとその弟子たち
第二章 歴史の経済的説明――欧州経済史学の先駆者たち
第三章 文化史的観照を超えて――大類伸のルネサンス論とその周辺
第四章 「原史料の直接考究を第一義とすること」――上原専禄とドイツ中世史研究
第五章 近代資本主義の担い手を求めて――大塚久雄の近代欧州経済史研究
第六章 「大東亜戦争の世界史的意義」――戦時下の西洋史家たち
補章 世界史とは何か――上原専禄の世界史像と地域概念

学術文庫版あとがき
参考文献
人名索引 


目次

序に代えて
第一章 ドイツ史学の移植――ルートヴィヒ・リースとその弟子たち
1 ランケ史学とリース
2 日欧交渉史の大家たち――リースの弟子たち1
3 西洋史家の誕生――リースの弟子たち2
第二章 歴史の経済的説明――欧州経済史学の先駆者たち
1 慶應義塾理財科の教授たち
2 東京商科大学の欧州経済史学
3 日本経済史研究所と社会経済史学会の設立
4 ロシア史とアメリカ史の場合
第三章 文化史的観照を超えて――大類伸のルネサンス論とその周辺
1 大類伸――中世文化からルネサンスへ
2 大類の弟子たち1――平塚博と塩見高年
3 大類の弟子たち2――千代田謙と村岡晢
4 羽仁五郎のイタリア
第四章 「原史料の直接考究を第一義とすること」――上原専禄とドイツ中世史研究
1 学生時代とウィーン留学
2 ドイツ中世史料研究
3 ドイツ近代史学史の研究
4 山中謙二と堀米庸三
第五章 近代資本主義の担い手を求めて――大塚久雄の近代欧州経済史研究
1 恩師本位田祥男
2 『近代欧洲経済史序説』への道
3 「マックス・ウェーバーに於ける資本主義の『精神』」
4 戦後の「大塚史学」とその批判
5 高橋幸八郎と松田智雄
第六章 「大東亜戦争の世界史的意義」――戦時下の西洋史家たち
1 イギリス植民地主義批判
2 日本諸学振興委員会と大類伸
3 戦時下の上原専禄
4 鈴木成高の歴史哲学
補章 世界史とは何か――上原専禄の世界史像と地域概念
はじめに
1 「世界史の方法」をめぐる戦後初期の状況
2 「現代アジア」と『日本国民の世界史』
3 「上原世界史」における地域概念
4 「世界史の起点」
おわりに

学術文庫版あとがき
参考文献
人名索引 

著者略歴

著:土肥 恒之
1947年北海道生まれ。小樽商科大学卒、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。一橋大学大学院社会学研究科教授を経て、一橋大学名誉教授。社会学博士。専門はロシア社会史、史学史。おもな著書に『ステンカ・ラージン』『岐路に立つ歴史家たち』(山川出版社)、『ピョートル大帝とその時代』(中公新書)、『図説帝政ロシア』(河出書房新社)、『よみがえるロマノフ家』(講談社選書メチエ)、『興亡の世界史 ロシア・ロマノフ王朝の大地』(講談社学術文庫)ほか。

ISBN:9784065312636
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:320ページ
定価:1180円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年03月09日