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KS農学専門書

エッセンシャル植物生理学 農学系のための基礎

他著:牧野 周
他著:渡辺 正夫
他著:村井 耕二

紙版

内容紹介

本書は,農学部の学生に向けた,植物生理学に関する教科書です。
実際の農作物生産との関連がイメージできるように,野菜や花,果樹などの具体例を数多く取り上げました。
第1章では植物科学の歴史を紹介した後,現在の食糧問題に対して,植物科学がどのように貢献できるのかについて考察しています。
第2章以降は各論ですが,第6章に「遺伝学」に関する章を設けている点が特長です。植物の育種などと深く関係する植物遺伝資源の収集と利用について解説しました。
本全体を通して,数多くの図表や写真を用い,メカニズムをわかりやすく解説することに努めました。また,欄外注では専門用語や発展的な事項を説明し,学生1人でも読めない箇所がないように工夫しました。
植物生理学は植物・作物の成長を科学的に理解するうえで根幹となる学問であり,農学という立場からはヒトが健康で豊かな生活を営むために重要な役割を果たす学問であるといえます。学術的にも非常に魅力のある学問領域です。植物生理学の魅力を存分に味わえる1冊としてお薦めします。

[目次]
第1章 歴史から見た食糧生産と植物科学
第2章 植物の生活環から見た形態と機能
第3章 光合成と呼吸
第4章 植物の栄養
第5章 植物の生殖―花成,花器官形成・成熟,受粉・受精
第6章 農学を支える遺伝学
第7章 穀物の種子形成と発芽
第8章 植物ゲノムのエピジェネティック制御
第9章 植物ホルモンとシグナル伝達
第10章 ストレス応答とシグナル伝達

目次

第1章 歴史から見た食糧生産と植物科学
1.1 主要作物の栽培化
1.2 農業の発展と植物科学の曙
1.3 主要作物の増産戦略
1.4 進行する食糧問題と植物科学の役割
1.5 まとめ

第2章 植物の生活環から見た形態と機能
2.1 植物の生活環
2.2 植物の基本的な形態と機能
2.3 植物の分類と農学から見た植物の形態
2.4 まとめ

第3章 光合成と呼吸
3.1 光合成
3.2 C4光合成とCAM光合成
3.3 光合成の環境応答
3.4 呼吸
3.5 光合成と呼吸と物質生産
3.6 まとめ

第4章 植物の栄養
4.1 栄養素の吸収と輸送
4.2 水の吸収と輸送
4.3 窒素の吸収・同化と窒素代謝
4.4 多量元素と微量元素
4.5 転流と乾物分配
4.6 まとめ

第5章 植物の生殖―花成,花器官形成・成熟,受粉・受精
5.1 日長と温度変化による花成
5.2 花器官形成・成熟
5.3 受粉と受粉反応
5.4 花粉発芽から重複受精
5.5 まとめ

第6章 農学を支える遺伝学
6.1 体細胞分裂と減数分裂
6.2 メンデルが見いだした「遺伝の法則」と遺伝学の基礎用語
6.3 倍数性と倍数体作物
6.4 植物遺伝資源の収集と利用
6.5 まとめ

第7章 穀物の種子形成と発芽
7.1 胚発生と胚乳発生
7.2 胚乳の進化的意味
7.3 発芽
7.4 まとめ

第8章 植物ゲノムのエピジェネティック制御
8.1 植物ゲノムの構成
8.2 エピジェネティック制御
8.3 まとめ

第9章 植物ホルモンとシグナル伝達
9.1 植物ホルモン作用と恒常性の維持
9.2 植物ホルモンの生合成と輸送
9.3 植物ホルモンのシグナル伝達
9.4 ペプチド型ホルモンのシグナル伝達
9.5 まとめ

第10章 ストレス応答とシグナル伝達
10.1 ストレスと活性酸素
10.2 乾燥ストレス
10.3 温度
10.4 塩ストレス
10.5 乾燥・塩ストレス,低温ストレス応答遺伝子発現ネットワークの制御機構
10.6 傷害(食害)応答
10.7 耐病性応答
10.8 まとめ

著者略歴

他著:牧野 周
東北大学名誉教授。1985年東北大学より農学博士の学位を授与。イネを中心に光合成と窒素栄養の分子生理学から圃場レベルで作物としての生産性向上を目指す研究を進めている。専門は植物栄養学。
読者へのひと言:植物は人類の生存のための最も重要なパートナーです。今世紀中ごろには100億人に達する人類の食糧をこの狭い地球でどのように生産していくのか? 食糧増産のみならず自然との共生も農学を学ぶ私たちの最大の課題です。しっかり勉強してほしい。
他著:渡辺 正夫
東北大学大学院生命科学研究科教授。1994年東北大学より博士(農学)の学位を授与。現在の研究は植物における受粉反応の分子メカニズムの解明,特にアブラナ科植物における自家不和合性の自他識別機構の解明。専門は植物遺伝育種学,植物生殖遺伝学。
読者へのひと言:植物生理学は作物が成長,開花,結実する現象を理解するための基礎・基盤です。本書で取り上げた内容を理解するためにも,自ら作物を栽培し,成長過程で何が起きているのかを実感することが重要です。また,周辺関連領域との領域横断的な研究があったからこそ,現在のようなこの分野の発展があったことを踏まえ,数物系,社会科学系などにも興味を持ち,本書をきっかけに広く植物科学への理解が深まることを期待しています。
他著:村井 耕二
福井県立大学生物資源学部創造農学科教授。1992年京都大学より博士(農学)の学位を授与。コムギを中心にムギ類の花器官形成と花成(栄養成長から生殖成長への移行)の遺伝的メカニズムの研究を行っている。その成果をもとに,北陸地方の気象条件に適応したコムギ新品種‘福井県大3号(ふくこむぎ)’を開発し,農林水産省に品種登録した。現在,福井県内で100~200ヘクタール規模で栽培されており,これまで不可能であった北陸地方でのコムギの地産地消が実現されている。専門は植物遺伝育種学,植物発生遺伝学。
読者へのひと言:世の中は不思議に満ちています。本書で取り上げた内容も,常に,「え,どうしてそうなるん? なんで? 不思議だなあ?」という疑問をもって読み進めてください。いくらでも研究課題が見えてくるはずです。次に不思議の世界の扉を開けるのは,「あなた」です!

ISBN:9784065295816
出版社:講談社
判型:B5
ページ数:272ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2022年10月
発売日:2022年10月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PST