岩波現代文庫 文芸340
ドストエフスキーとの旅
遍歴する魂の記録
著:亀山 郁夫
内容紹介
ドストエフスキー文学の翻訳・研究者として名高い著者の自伝的エッセイ。少年時代に初めて『罪と罰』を読んだ時の衝撃から学生時代の文学サークル体験、ロシア留学時のスパイ容疑事件、プーシキン・メダル授賞式など、自らの人生のエピソードにドストエフスキーの作品世界が重ねあわされながら語られる。(解説=野崎歓)
目次
プロローグ
Ⅰ 「父殺し」 の起源
アイデンティティ・クライシス 二〇〇八年十月、モスクワ
「誕生」 の瞬間 二〇〇七年二月、モスクワ
「根源」 という糸 二〇〇一年九月、ザライスク
シャーマンの声 二〇〇一年九月、チェルマシニャー
「黙過」 と 「憐憫癖」 二〇〇九年一月、東京
無意識の回廊 二〇〇九年一月、東京
「出会い」 の原点 一九六三年八月、宇都宮
もうひとつの親殺し 一九五七年二月、宇都宮
文学少年 一九六六年十月、宇都宮
Ⅱ 激動の青春
「地下室」 の記憶 一九六八年五月、東京
ロマンティストの無残 一九六八年六月、東京
感傷家の恋 一九六八年八月、宇都宮
裏切り者 一九六八年十月、東京
実存主義を疑う 一九六九年十月、東京
Ⅲ 『罪と罰』体験
再挑戦 一九七〇年九月、宇都宮
「意志の書」、「運命の書」 二〇〇九年四月、東京
傲慢、または生の証 二〇〇九年四月、東京
世界が終わる夢を見る 二〇〇九年四月、東京
王宮橋からの眺め 二〇〇九年五月、サンクトペテルブルグ
一億倍も醜悪なこと 二〇〇九年四月、サンクトペテルブルグ
ホテル 「サン・ラザール」 二〇〇九年五月、パリ
Ⅳ 甦る 『悪霊』
三島の死 一九七〇年十一月、東京
唯我論者 一九七一年四月、東京
霧の彼方の地獄 一九七二年一月、東京
決 別 一九七二年三月、東京
Ⅴ ウリヤノフスク事件
プーシキン・メダル授章式(一) 二〇〇八年十一月、モスクワ
事件の発端 一九八四年八月、ウリヤノフスク
尋 問 一九八四年八月、ウリヤノフスク
社会主義の神 一九八四年八月、ヴォルゴグラード
恐怖の帰路 一九八四年八月、ハリコフ
甘い傷の疼き 一九八四年九月、ナホトカ
プーシキン・メダル授章式(二) 二〇〇八年十一月、モスクワ
Ⅵ カタストロフィ
「怒りの日」 二〇〇一年九月、ロンドン
汚れた青空の下で 一九七六年八月、セミパラチンスク
健やかな午睡 二〇〇九年八月、広島
決 壊 二〇〇九年六月、東京
「わたしは恥ずかしい」 二〇〇九年十月、郡山
四十六の瞳 二〇〇九年十月、松山
チェチェン戦争の影 二〇〇八年二月、モスクワ
二十世紀末の 「邪宗門」 一九九五年三月、東京
還暦の太宰 二〇〇八年一月、東京
小説に挑戦する 二〇〇〇年一月、東京
瓦礫のなかの 「四次元」 二〇一一年七月、釜石
Ⅶ ロシアの幻影
三つの類 二〇〇八年七月、サンクトペテルブルグ
グーグルアースの七百三十歩 二〇〇八年七月、サンクトペテルブルグ
「空間を貪り食いながら」 二〇〇三年十一月、スターラヤ・ルッサ
「過去」との別離 二〇〇六年一月、モスクワ
ロシアヘイトの根源 二〇一四年九月、チェルノブイリ
神隠し 二〇一八年八月、パーヴロフスク
幻想の 「吊り橋」 二〇一八年八月、トヴェーリ
去勢派とバフチン 二〇一八年八月、オリョール
Ⅷ ヨーロッパの幻影
絶対愛への羨望 二〇〇二年十二月、ドレスデン
神々しいゲルツェン 二〇〇九年九月、東京
楽園喪失 二〇〇四年一月、バーゼル
ドナウの黄昏 二〇〇四年九月、ベオグラード
「パリの奇跡」 二〇〇四年一月、パリ
最高に冷静な読者 二〇〇四年三月、ロンドン
裁ち割られた書物 二〇〇四年三月、ロンドン
ロワ墓地、または苦い後味 二〇一九年十二月、ジュネーヴ
ナボコフの呪い 二〇一九年十二月、ヴヴェイ
まひわの聖母 二〇一九年十二月、フィレンツェ
水の迷宮 二〇一九年十二月、ヴェネツィア
「黄金」 の時 二〇一九年十二月、ヴィースバーデン
Ⅸ ひそやかな部分
続編を空想する(一) 二〇〇七年八月、東京
続編を空想する(二) 二〇〇七年九月、東京
許されざる者 二〇〇五年五月、新宮
犬殺しのミステリー 二〇〇七年三月、東京
罪なきものの死 二〇〇八年三月、東京
父の 「実像」 二〇〇九年二月、東京
甦る 「カフカ」 二〇〇九年十二月、成田
絶滅収容所(一) 二〇〇九年十二月、プノンペン
絶滅収容所(二) 二〇〇九年十二月、プノンペン
「水死」 の記憶 一九六一年八月、宇都宮
「仏作って、魂入れず」 二〇一三年八月、ロンドン
語られざる何か二〇一四年五月、山形
Ⅹ 新たな旅立ち
十年後のマンハッタンにて 二〇一一年八月、ニューヨーク
月桂樹とレモンの香り 二〇一六年六月、セヴィリア
虐殺の匂い、柘榴の香り 二〇一六年六月、グラナダ
魂の成熟 二〇一九年七月、ボストン
AI時代のバッハ 二〇一九年八月、東京
「喜々津よ」 二〇一九年十月、島原
虚しい抵抗 二〇二〇年二月、名古屋
一匹の蝶の羽ばたき 二〇二〇年五月、名古屋
死の謎 二〇二一年五月、東京
エピローグ
魂の地図 あとがきに代えて
解説(野崎 歓)