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岩波現代文庫 学術471

日本軍の治安戦

日中戦争の実相

著:笠原 十九司

紙版

内容紹介

治安戦とは、占領地、植民地の統治の安定を確保するための戦略、作戦、戦闘、施策の総称である。日本軍が行った治安戦(三光作戦)の過程を丹念に辿り、加害の論理と被害の記憶から実相を浮彫にする。解説=齋藤一晴。

目次

プロローグ 山西省の治安戦における宮柊二と田村泰次郎
  歌集『山西省』に歌われた治安戦
  田村泰次郎「裸女のいる隊列」に描かれた治安戦
  治安戦と三光作戦

第一章 日中戦争のなかの治安戦
 1 日中戦争の開始
  中国における二つの戦場と治安戦
  盧溝橋事件
  治安維持工作の始まり
 2 一九三八年の作戦と戦闘
  長期総力戦へ
  華北の占領地統治
  特務機関の宣撫工作
 3 一九三九年の作戦と戦闘
  泥沼の戦争へ
  天皇制集団無責任体制
  重慶爆撃
  汪精衛政権樹立工作
  海軍の海南島占領
  南寧占領と北部仏印進駐の強行
  関東軍の暴走によるノモンハン事件
 4 華北における治安工作の開始
  日支新関係調整方針
  「治安粛正」の目的

第二章 華北の治安工作と「第二の満州国化」
 1 北支那方面軍の治安粛正計画
  長期化する戦争
  治安工作の思想と目的
 2 北支那方面軍の軍政実施
  抗日意識の高まり
  新民会と宣撫班の統合
 3 華北の「第二の満州国化」
  華北経済の収奪的支配
  県城と農村の支配
  プロパガンダ工作
  「第二の満州国化」構想と興亜院
 4 華北における治安戦の開始
  治安戦の開始
  治安戦初期の状況

第三章 百団大戦と治安戦の本格化
 1 一九四〇年の作戦と戦闘
  ドイツ軍の攻勢に幻惑された日本
  南進へ
 2 百団大戦の衝撃
  八路軍の攻勢
  甚大な被害
 3 なぜ百団大戦が発動されたか
  華北における抗日根拠地の成立と拡大
  八路軍総司令朱徳の報告
  百団大戦を発動させた内外情勢
 4 報復としての治安戦の本格化
  報復作戦決行
  抗日民衆対象の三光作戦

第四章 アジア・太平洋戦争と治安戦の強化
 1 一九四一年の作戦と戦闘
  国策の奔放からアジア・太平洋戦争突入へ
  「関特演」=対ソ戦発動準備
  強硬派による対米開戦決定
 2 華北の総兵站基地化
  アジア・太平洋戦争開戦
  経済収奪のための治安戦
  汪精衛政権の対米英参戦
 3 汪精衛政権下の清郷工作
  新四軍の勢力拡大
  清郷工作
 4 海南島における海軍の治安戦
  軍事拠点としての海南島
  抗日根拠地の形成
 5 本土防衛のための中国戦場
  逆転する戦争遂行の目的
  膨大な犠牲を強いた大陸打通作戦

第五章 治安戦の諸相――加害者の論理と被害者の記憶
 1 華北における治安戦の全体像
  北支那方面軍の作戦
  引用する基本史料
 2 掃蕩作戦と「収買作戦」――山西省
  山西省における掃蕩作戦
  「罪悪事実」の手段と総数
  被害民衆の記憶
 3 無住地帯(無人区)と経済封鎖――河北省
  治安戦遂行者の証言と回想
  虐殺事件の記憶と記録
  無人区と集団部落
 4 細菌戦――山東省
  魯西作戦(一九四三年秋)におけるコレラ菌作戦
  記憶されなかった被害者の悲劇
 5 三光作戦の被害概数
  戦後補償要求裁判
  被害総数

エピローグ 対日協力者=漢奸たちの運命はどうなったか
  対日協力者たちの戦後
  日中戦争の実相へ

 注
 あとがき
 岩波現代文庫版あとがき
 解 説……………齋藤一晴
 巻末史料(表/地図)
 索 引

著者略歴

著:笠原 十九司
笠原十九司(Tokushi Kasahara)
1944年群馬県生まれ.東京教育大学大学院修士課程文学研究科東洋史学専攻中退.都留文科大学名誉教授.中国近現代史,日中関係史,東アジア近現代史.著書『南京事件』(岩波新書,1997年),『南京難民区の百日』(岩波現代文庫,2005年),『海軍の日中戦争』(平凡社,2015年),『日中戦争全史(上・下)』(高文研,2017年),『増補 南京事件論争史──日本人は史実をどう認識してきたか』(平凡社ライブラリー,2018年),『通州事件──憎しみの連鎖を絶つ』(高文研,2022年),『憲法九条論争──幣原喜重郎発案の証明』(平凡社新書,2023年)など.

ISBN:9784006004712
出版社:岩波書店
ページ数:366ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2023年12月
発売日:2023年12月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ