岩波現代文庫 学術438
増補 女が学者になるとき
インドネシア研究奮闘記
著:倉沢 愛子
内容紹介
インドネシア研究の第一人者として知られる著者の原点とも言える日々を綴った半生記。体当たりで挑んだジャワのフィールド調査、アメリカ、オランダでの課題漬けの留学生活、博士論文執筆と就職、そして結婚、離婚、再婚……。著者の歩みは日本のインドネシア研究の発展過程と重なる。大学を退職し、70代半ばを迎えた今日の心境を綴った「補章 女は学者をやめられない」を収録。
目次
1 大学でインドネシアと出会う
知らなかった日本軍政の実態
遅れをとっていたインドネシア研究
文革のさなかの訪中
東大闘争に参加して
インドネシア研究にのめりこむ
粉砕の対象だった東大大学院へすすむ
学生結婚、そしてインドネシアへ
2 インドネシアへ貧乏留学
戦渦のサイゴンへ
ジャカルタに降り立つ
留学生としての第一歩
ガスも水道もない学生寮
ジャカルタ点景
博物館通いの毎日
公安当局ににらまれる
熱心なイスラム教徒だった大西さんのこと
留学生仲間の助け合い
マダム・ヨシコからうけた支援
義勇軍とありし日の柳川宗成さん
西部ジャワのバンドゥンへ移る
中部ジャワのジョクジャカルタへ
3 ヴェトナムで暮らす
サイゴンでの主婦生活
サイゴンで聞いたジャカルタの反田中暴動
研究論文が活字になった!
サイゴン陥落を目のあたりにして
ヴェトナム難民となる
二十二年ぶりのサイゴン
4 アメリカ留学、そしてオランダへ
コーネル大学へ
地獄の苦しみだった授業
博士課程を無事修了
オランダの文書館での宝探し
元オランダ人被抑留者の冷たい対応
幻の国策映画を発見
5 ふたたびインドネシアへ
一年半を要した調査許可
フィールドワークの開始
初めての農村調査
日本軍政の影響をもっとも強くうけた農村
ジャワ語で四苦八苦
記憶の鮮明な古老たち
生き残りロームシャの「じいさま」
キンタルの時代の謎を解く
文献とフィールドをつないでこそわかること
山間のむらへ調査を移す
労務供出を担った山間のむら
米騒動が起きたむらへ
自己流の渡り鳥的調査方法
調査中にちょっぴり怖かったこと
6 聞き取り調査で得たもの失ったもの
重い口を開かせるには
調査とは孤独なもの
遠くなるばかりの夫との距離
処刑されたイスラム教師
親日派イスラム指導者との出会い
行政官虐殺事件の真相を突き止める
7 研究者の道、女の道
別れの季節
新しい出会い、そして出産
研究者、妻、母として
博文(ひろふみ)君とともに誕生した博士論文
あとがき
補章 女は学者をやめられない
1 女はフィールドへ行けない?
2 フィールドに住みこんで
3 介護と研究とどっちが大事?
4 終 活
岩波現代文庫版あとがき