岩波新書 新赤版 1905
企業と経済を読み解く小説50
著:佐高 信
内容紹介
高度経済成長期に登場した経済小説は、疑獄事件や巨大企業の不正など、多種多様なテーマを描き続けてきた。城山三郎『小説日本銀行』、石川達三『金環蝕』、松本清張『空の城』など、戦後日本社会の深層を描いた古典的名作から、二〇一〇年代に刊行されたものまで、著者ならではの幅広い選書によるブックガイド。
目次
はじめに
Ⅰ 巨悪の実態
──原発利権
1 「原子力マフィア」の形成── 『原子力戦争』田原総一朗著
2 なぜ東電は潰れないのか── 『ザ・原発所長』黒木亮著
3 現役官僚による告発── 『原発ホワイトアウト』若杉冽著
4 電力の鬼と呼ばれた男── 『まかり通る』小島直記著
──政財界の裏側
5 戦後最大級の疑獄事件── 『小説佐川疑獄』大下英治著
6 ロッキード事件の利益構造── 『金色の翼』本所次郎著
7 財界の総本山に迫る── 『小説経団連』秋元秀雄著
8 銀行に銀行を食わせる── 『戦略合併』広瀬仁紀著
9 使途不明金の明細書── 『小説談合』清岡久司著
10 汚職事件の曼荼羅図── 『金環蝕』石川達三著
11 インドネシア賠償需要の闇── 『生 贄』梶山季之著
12 新興財閥と軍部の利権── 『戦争と人間』五味川純平著
Ⅱ 増大する資本と欲望
──巨大資本をめぐる
13 外資系投資銀行の内幕── 『小説ヘッジファンド』幸田真音著
14 イケニエを決めたのは誰か── 『ハゲタカ』真山仁著
15 大口融資規制の暗闘── 『頭取敗れたり』笹子勝哉著
16 「物価の番人」の挫折── 『小説日本銀行』城山三郎著
17 予算編成の駆け引き── 『小説大蔵省』江波戸哲夫著
18 旧財閥に残る気風── 『果つる底なき』池井戸潤著
19 金融帝国のルーツ── 『ザ・ロスチャイルド』渋井真帆著
20 日本人発行のルーブル札── 『ピコラエヴィッチ紙幣』熊谷敬太郎著
──欲望のゆくえ
21 触れてはいけない魔法のランプ── 『小説総会屋』三好徹著
22 「狙って潰せない会社はない」── 『虚業集団』清水一行著
23 ある闇金融の挫折── 『白昼の死角』高木彬光著
24 ローン破産という公害── 『火車』宮部みゆき著
Ⅲ 会社国家ニッポンのゆがみ
──企業のモラルを問う
25 会社は誰のものか── 『トヨトミの野望』梶山三郎著
26 消費者vs経営者── 『大阪立身』邦光史郎著
27 経済大国の原罪── 『19階日本横丁』堀田善衞著
28 未知の商戦と孤独── 『忘れられたオフィス』植田草介著
29 日本人であること── 『炎熱商人』深田祐介著
30 取引先の破綻と回収── 『商社審査部25時』高任和夫著
31 安宅産業の消滅── 『空の城』松本清張著
32 「水潟病」の原因究明── 『海の牙』水上勉著
──業界の深奥
33 金融資本としての生保── 『遠い約束』夏樹静子著
34 ホテルは社会の裏方── 『銀の虚城(ホテル)』森村誠一著
35 患者ファーストは可能か── 『M R』久坂部羊著
36 証券界と地下経済── 『マネー・ハンター』安田二郎著
37 量販よりも鮮度の保持── 『小説スーパーマーケット』安土敏著
38 食品加工業の暗部── 『震える牛』相場英雄著
Ⅳ 組織と人間
──会社を告発する個人
39 自分の生き方を通す── 『沈まぬ太陽』山崎豊子著
40 現役記者の社長解任請求── 『日経新聞の黒い霧』大塚将司著
41 新聞は生き残れるか── 『紙の城』本城雅人著
42 研ぎ澄まされた感覚を保つ── 『いつも月夜とは限らない』広瀬隆著
43 ワンマン体制への叛旗── 『管理職の叛旗』杉田望著
44 組織内の不正を糺す── 『会社を喰う』渡辺一雄著
45 地位保全の訴え── 『懲戒解雇』高杉良著
──社員という人生
46 死ぬくらいなら辞めていい── 『風は西から』村山由佳著
47 その人なりの価値基準── 『ふぞろいの林檎たち』山田太一著
48 社宅という残酷な制度── 『夕陽ヵ丘三号館』有吉佐和子著
49 「世間」に立ち向かう── 『食卓のない家』円地文子著
50 企業ぐるみ選挙の悲哀── 『わが社のつむじ風』浅川純著
おわりに
本書で取り上げた五〇冊