岩波新書
行動経済学の使い方
著:大竹 文雄
内容紹介
学ぶだけではもう足りない。研究と応用が進み、行動経済学は「使う」段階に来ているのだ。本書では「ナッジ」の作り方を解説する。人間の行動の特性をふまえ、自由な選択を確保しつつ、より良い意思決定、より良い行動を引き出す。その知恵と工夫が「ナッジ」だ。この本を通して、行動経済学の応用力を身につけよう。
目次
はじめに
第1章 行動経済学の基礎知識
1 プロスペクト理論
リスクのもとでの意思決定/確実性効果/損失回避/フレーミング効果/保有効果
2 現在バイアス
先延ばし行動/コミットメント手段の利用
3 互恵性と利他性
社会的選好/互恵性
4 ヒューリスティックス
近道による意思決定/サンクコストの誤謬/意思力/選択過剰負荷と情報過剰負荷/平柊への回帰/メンタル・アカウンティング/利用可能性ヒューリスティックと代表性ヒューリスティック/アンカリング効果/極端回避性/社会規範と同調効果/プロジェクション・バイアス
第2章 ナッジとは何か
1 ナッジを作る
軽く肘でつつく/行動の特性を考える/行動変容を本人が望んでいるか/ナッジの選び方
2 ナッジのチェックリスト
Nudges/EAST/MINDSPACE
3 ナッジの実際例
老後貯蓄の意思決定/自然災害時の予防的避難/ナッジは危険なのか?
第3章 仕事のなかの行動経済学
1 三つの例から
バイトのシフトをどう入れるか/タクシー運転手の行動予測/行動経済学で解釈すると/プロゴルファーの損失回避
2 ピア効果
優秀な同僚が入ってきたら/スーパーマーケットのレジ打ち/競泳のタイム決勝
第4章 先延ばし行動
1 賃金について考える
参照点による効果/伝統的経済学による年功賃金の説明/行動経済学による年功賃金の説明
2 バイアスに着目する
失業期間を短くする/長期失業を防ぐナッジ/社会保障給付申請の現在バイアス/長時間労働と先延ばし行動
第5章 社会的選好を利用する
1 贈与交換
贈与交換で生産性は上がるか/負の贈与の影響/贈与のイメージを意識させる
2 昇進格差はなぜ生まれる?
競争選好に男女差はあるか/マサイ族とカシ族での実験
3 多数派の行動を強調する
女性の取締役を増やすナッジ/無断キャンセルを減らすナッジ
第6章 本当に働き方を変えるためのナッジ
1 仕事への意欲を高める
際限なく続く仕事/「シーシュポスの岩」の実験/意味のある仕事
2 目標と行動のギャップを埋める
達成できない目標/実行計画を書き出す/量ではなく時間で/合理的行動の落とし穴/習慣化できるルールを作る/次善の策がベストの策
第7章 医療・健康活動への応用
1 デフォルトの利用
ナッジで変える健康活動/大腸がん検診の受診率向上ナッジ/ワクチン接種率の向上ナッジ/オプト・イン/終末期医療の選択
2 メッセージの影響を考慮する
利得フレームと損失フレーム/治療法の説明
3 成果の不確実性を考慮する
ダイエットのナッジ/ジェネリック薬品への切り替え
4 臓器提供のナッジ
イギリスでの実験/日本での実験
第8章 公共政策への応用
1 消費税の問題
重く見える消費税負担/同じ税負担でも消費行動が変わる/誤計算バイアス/軽減税率はなぜ好まれるのか/軽減税率は補助金と同じ/軽減税率の行動経済学
2 保険料負担の問題
一般の人の理解/伝統的経済学での理解/現実はどちらか
3 保険制度の問題
公的年金・公的健康保険の必要性/モラルハザード/法案提出と損失回避/少数派として意識させる
4 O型の人はなぜ献血をするのか
血液型性格判断/献血行動と血液型/血液型の特性に着目する
おわりに
文献解題
ISBN:9784004317951
。出版社:岩波書店
。判型:新書
。ページ数:236ページ
。定価:860円(本体)
。発行年月日:2019年09月
。発売日:2019年09月21日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCA。