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岩波新書 新赤版1611

科学者と戦争

著:池内 了

紙版

目次

はじめに──軍学共同が急進展する日本

第1章 科学者はなぜ軍事研究に従うのか
 1 科学者の愛国
 道を外れる科学者/戦争と科学/アルキメデスの才能/揺籃期の科学者/科学は国の力の源/組織的動員/第一次世界大戦とハーバー/第二次世界大戦とプロジェクト研究/戦時下の科学者の態度/ジェイソン組織/DARPA方式
 2 日本の科学者の戦争協力
 富国強兵とお雇い外国人/研究体制の強化/戦時中の科学動員/原爆とレーダーと
 3 ナチス・ドイツの物理学者たち
 科学技術をテコに/第一次世界大戦が始まると/ 「悪法も法」である──プランク/科学至上主義──ハイゼンベルグ/日和見主義的科学主義──デバイ/三者三様の意識

第2章 科学者の戦争放棄のその後
 1 戦後の平和路線とその躓き
 日本学術会議の決意表明/新たな戦争の影/米軍資金問題/平和路線とそれへの反論/大学改革の中で/拡大する米軍の資金援助
 2 軍と学の接近
 防衛省の技術交流事業/ 「交流」の発展/技術協定の内容/防衛省の競争的研究資金──安全保障技術研究推進制度/民生応用という建前/成果の公開──原則から可能へ/募集テーマと応募理由/採択研究テーマ/宇宙の軍事化の始まり/宇宙の軍事化の進展/海も軍事化/イノベーションのための軍学共同/革新的研究求む/軍産学複合体への道/文科省と経産省の対応
 3 防衛省の軍学共同戦略
 防衛生産・技術基盤戦略/学といかに連携するか/共同研究の進め方
 4 科学技術基本計画
  「選択と集中」の弊害/イノベーションのための科学技術?

第3章 デュアルユース問題を考える
 1 デュアルユースとは 
 デュアルユース問題の考え方/祖国防衛のために
 2 ゆらぐ大学の研究ガイドライン
 不思議な新聞報道/ガイドラインの改訂/非公開の壁/東大総長による「フォロー」
 3 テロとデュアルユース問題
 炭疽菌とインフルエンザ・ウイルス/日本学術会議の「行動規範」/日本学術振興会の「心得」
 4 日本の科学者の意識
 研究者へのアンケート/研究者版経済的徴兵制/防衛目的なら許されるか/民生利用は口実となるか/科学至上主義/国家の要請には従うべきか/安全・安心のためのモノユース/デュアルユース問題と科学者の社会的責任

第4章 軍事化した科学の末路
 1 科学者は単純である
 そもそも、科学者とはどのような人間なのだろうか?/研究室の外では科学的でない
 2 軍事研究の「魅力」
  「世界初」の魔力/軍からの潤沢な研究資金/軍事予算と研究の自由
 3 軍事研究の空しさ
 日陰の研究者/虚しい研究/オッペンハイマーの場合/軍事技術の限界/超兵器?
 4 軍事研究は科学を発展させるのか?
 戦争は発明の母か/戦争は必要か/スピンオフとは

おわりに──「人格なき科学」に陥らないために
  「センター・オブ・イノベーション」/軍学共同への傾斜/軍事化を受け入れる論理/科学による破滅を避けるために/社会に責任を持つ科学者

参考文献
あとがき
年 表

著者略歴

著:池内 了
池内 了 (いけうち さとる)
1944年兵庫県生まれ
総合研究大学院大学名誉教授,名古屋大学名誉教授
専攻─宇宙論・銀河物理学,科学・技術・社会論
著書─『疑似科学入門』岩波新書,『科学の考え方・学び方』岩波ジュニア新書,『科学のこれまで,科学のこれから』岩波ブックレット,『大学と科学の岐路──大学の変容,原発事故,軍学共同をめぐって』リーダーズノート出版,『科学・技術と現代社会』みすず書房,『物理学者池内了×宗教学者島薗進 科学・技術の危機 再生のための対話』合同出版,ほか多数

ISBN:9784004316114
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:224ページ
定価:780円(本体)
発行年月日:2016年06月
発売日:2016年06月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ