岩波新書 新赤版1364
マヤ文明
密林に栄えた石器文化
著:青山 和夫
目次
はじめに
第1章 マヤ文明とは何か
1 ジャングルの大都市遺跡を発掘する
セイバの木が生える場所/ハーバード大学調査団/セイバル遺跡の再調査/マヤ文明の起源を探る/神聖性の象徴/コロンブスはアメリカ大陸を「発見」しなかった/世界史教科書の問題/メソアメリカの諸文明/マヤ人とは誰か/マヤの三つの地域区分
2 マヤ文明の特徴とは
究極の石器文明/数字と暦/マヤの宗教/ネットワークの文明/共有されたモノ/ピラミッドと山信仰/広場での劇場的パフォーマンス/各地のマヤ都市の発展/誰が建造したか/マヤ暦は循環暦/二〇一二年に世界は終わらない/マヤ文字を解読する/マヤ文字はいつ頃使われ始めるのか/誰が読み書きしたか
3 マヤ文明の実像をみる
「謎と神秘」を売るマスメディア/歪められたマヤ文明観/現実的なマヤ文明観へ
第2章 マヤ遺跡を掘る
1 ホンジュラスで調査開始!
考古ボーイ、ホンジュラスへ行く/ホンジュラスという国/ラ・エントラーダ地域の調査/面の調査/マウンドを分類する/野外調査の大敵/博物館をつくる/国立遺跡公園とスペイン語の研究書
2 世界遺産コパン遺跡へ
国際調査団に加わる/アメリカ留学/ 「大広場」と石碑/球技場と神殿ピラミッド/コパンの初代王/更新される神殿/交換に使われた黒曜石/万能ナイフの石刃/黒曜石の流通/流通域の境界/石器の使用痕から/最高五〇〇〇回の実験/都市の中心部での手工業/衰退の要因は/最後の一六代目王/武器の増加
第3章 諸王、女王、貴族たち
1 マヤ文明における国家
統一王朝がなかったマヤ文明/都市と王/ 「放血儀礼」/等間隔に分布する都市
2 ティカルの大王たち
三〇代以上続く王朝/都市の盛衰/ 「スター・ウォーズ」はなかった/ティカル復興の王/小宇宙としての建造物/水を確保する貯水池/巨大化の果てに
3 パレンケの大王パカル
「大いなる水」の都市/女王もいた/パカル王の事績/王陵としての神殿ピラミッド/太陽を意識した設計/パレンケ王朝の終焉
4 チチェン・イツァの大王たち
暦のピラミッド/国際都市チチェン・イツァ/王墓はどこに/大王と交易/聖なる泉/泉の供物/周辺国との戦争
第4章 農民の暮らし
1 何を作りどう食べたか
トウモロコシの人間/多様な調理法/ 「農耕革命」はなかった/マヤ人は主に菜食/自然と共生する農耕/高級なカカオ豆/タバコ・蜂蜜・塩/ 「ミルクの香りのしない文明」
2 火山灰に埋もれた村から
村人の日常生活/集約農業を営む/交換品の生産/集会所や占いの建物など
3 生産と流通
自然環境に合わせた多様な農業/都市と農民/水路網の建設/プウク地方の地下貯水槽/大型家畜のない人力エネルギーの文明/死者は住居に埋葬
第5章 宮廷の日常生活を復元する─アグアテカ遺跡
1 戦争により放棄された都市
断崖絶壁の要塞都市/王朝興亡の中で/攻撃により短時間で放棄された住居/日常生活ほど残りにくい/世帯を考古学する/戦争を考古学する/石器を分析する/日常の石器
2 世帯の暮らしに迫る
「石斧の家」の世帯/ 「鏡の家」の世帯/女性たちの生活/破壊された王宮/未完の神殿ピラミッド/仮面と劇場的パフォーマンス/マルチタレント的な王や貴族
第6章 マヤ文明の盛衰は語る
1 何が「衰退」をもたらしたか
九世紀に「崩壊」したのか?/ 「衰退」の内実/衰退の原因を探る/人口過剰、環境破壊、戦争/マヤ文明の歴史的教訓
2 侵略のダメージを越えて
ヨーロッパ人の侵略前夜/スペイン人とマヤ人の攻防/新たなマヤ文化の創造/マヤは現在進行形の生きている文化
3 新たなステップへ
マヤ研究の偏り/研究の新たな潮流/現代マヤ人にとってのマヤ文明/よりグローバルな「真の世界史」にむけて/発掘調査は続く
あとがき
主要参考文献
図版出典一覧