岩波文庫 白210-1
支配について Ⅰ
官僚制・家産制・封建制
著:マックス・ウェーバー
訳:野口 雅弘
内容紹介
支配はいかにして成り立ち、何によって支えられるのか。支配の諸構造を経済との関連で論じたテクスト群。ウェーバー没後に編集された『経済と社会』のうち、『支配の社会学』として知られてきた部分を全集版に基づき訳出。詳細な訳注や用語解説を付す。Ⅰは官僚制・家産制・封建制をめぐる章を収録する。(全二冊)
目次
凡 例
支 配
一 権力と支配。過渡的形式
[1]ゲマインシャフト行為、権力の特殊ケースとしての支配、経済的手段
[2]権力と支配、利害関心のコンステレーション(布置連関)と権威
[3]支配の定義
[4]かのように
[5]社会学的観察と法学の概念
二 支配と行政――民主的行政の本質と限界
[6]直接民主主義的な行政
[7]類型論上の極端なケースとしての直接民主主義的な行政
[8]名望家
[9]高齢者と若者、党派問題
[10]規模と複雑性
[11]行政組織の成立
三 「組織」による支配、妥当根拠
[12]組織と装置
[13]レジティマシー(正当性/正統性)、幸福の神義論、三つの原理
官 僚 制
[1]近代的官僚の機能様態
[2]権限
[3]官庁
[4]ピラミッド型の階層構造
[5]公文書、役所、公私の分離
[6]官僚の専門性
[7]専業
[8]ルールについての知識
[9]ルールの拘束性
[10]官僚の地位
[11]ベルーフ、官職に対する忠誠
[12]官僚個人の側からみた官僚の地位
[13]社会的評価
[14]例外としてのアメリカ
[15]上からの任命
[16]事柄に即した(ザッハリヒな)行政を確保するための身分保障
[17]給料の低さ
[18]恣意的ではない昇進条件
[19]近代官僚制の社会的・経済的な前提
[20]貨幣経済の発展、官僚の報酬の形態、六つの歴史的実例
[21]行政の業務委託――主人・請負業者・支配される側の人たちの動機の相互作用と反発
[22]官職の経済的な観点、官職の売買
[23]プフリュンデ(俸禄)、官僚制から封建制へ
[24]官僚制と従属関係
[25]服従と身分意識
[26]安定した収入、租税システム、貨幣経済
[27]行政課題の量的発展、大規模国家と大衆政党
[28]官僚制と政治的統一、コングロマリット的結合
[29]官僚制化の回避――古代ローマ、イギリス、アメリカ
[30]行政の職務範囲の質的拡大――治安、社会政策、交通
[31]近代国家形成と交通手段
[32]官僚制の技術的優位性
[33]資本主義が官僚制を必要とする理由
[34] 「人を顧慮せず」という原則と市場との親和性、予測可能性、非人間化
[35]ローマ法の受容、カーディ裁判、イギリスとドイツの支配構造の違い
[36]ローマ法の合理化
[37]伝統の拘束とそれからの解放、預言者
[38]自動販売機、合理的に議論可能な理由
[39]民主主義の分裂、形式合理性と内容的正義
[40]経営手段の集中、官僚制的軍隊
[41]軍隊の官僚制化、プロイセンの常備軍、ジェノヴァの「マオーナ」
[42]経営手段の集中と統制
[43]研究・教育における官僚制化、研究所
[44]新しい現象としての官僚制、その阻害要因
[45]経済的・社会的な平準化、官僚制と民主主義の緊張関係
[46]受動的な民主化
[47]民主化と経済的要因、新興階級、ボナパルティズム
[48]古い構造形式と官僚制化の進展、電気の普及
[49]ひとたび完成したら壊れない官僚制、公文書、バクーニン主義の誤謬
[50]官僚制化の経済的影響、利益団体、官僚制と民主主義の対立
[51]官僚制の権力
[52]秘密の増大、官房機密、素人である君主の無力
[53]民間企業における専門知識と秘密
[54]専門化と君主の地位、君主の要塞としての官房
[55]絶対君主制と合議制
[56]長老会議、監査役会、等族会議
[57]合議制的行政の転用と消滅
[58]公私の分離
[59]支配構造と教育・教養、新しい身分、民主主義と試験
[60]専門人と教養人
[61]官僚制的な組織とは異質な構造原理
[62]革命的な作用と合理主義の進展
家 産 制
[1]家父長制的支配構造、日常的性格、パーソナルな服従
[2]家長の権力、家の子どもと奴隷の子ども
[3]風習、伝統、恭順
[4]名望家支配と家父長制の違い、名誉と恭順
[5]経済と女性、性的役割分業、インディアンのサシェム
[6]オイコスと家産制的支配
[7]家産制的支配における主人(家長)と服従する者の関係
[8]伝統によって断片化される家父長制、荘園領主制の成立
[9]家産制支配の権力範囲
[10]直轄地
[11]家産制国家的構成体の定義
[12]政治的支配と家産制的支配の区別とその消失
[13]君主と軍隊
[14]小作人、手の離せなさ、軍事力としての不適格性
[15]奴隷部隊
[16]イェニチェリ
[17]傭兵
[18]割当地保有兵
[19]徴兵された軍隊
[20]家産制的な軍隊の経済的基礎
[21]スルタン制とその脆弱さ
[22]諒解ゲマインシャフトと政治的臣民
[23]臣民の義務
[24]ライトゥルギー(公的奉仕義務)によるニーズの充足
[25]ツンフトと名望家行政
[26]家産制的官職
[27]家人(ミニステリアーレ)
[28]法仲間(レヒツ・ゲノッセン)
[29]官職(利権)の独占
[30]独占的な法仲間、日本(江戸時代)の藩、より一貫した西洋
[31]家産制における身分
[32]西洋とオリエントの違い
[33]家産制的官職と官僚制的官職
[34]不明確な権限、役得利益、利権争い
[35]アドホックな(その都度の)行政と主人の恣意
[36]官僚制的ではない家産制的官僚
[37]食卓ゲマインシャフト
[38]プフリュンデ(俸禄)、官職の専有
[39]法服貴族
[40]聖職者のプフリュンデ(俸禄)、分権化、文化闘争
[41]プフリュンデ(俸禄)の取引、貨幣経済、勉強する目的
[42]貴金属
[43]パルルマン(高等法院)
[44]脱中心化と型に嵌めて固定化すること、地方の名望家
[45]個人の支配権の束、主人の恣意、西洋とオリエント
[46]働かない高貴な人
[47]権限・官庁の不在
[48]事柄に即した(ザッハリヒな)官職義務の欠如
[49]「個人の時代」としての中世
[50]支配の統一性の維持――巡回、参勤交代、外国人や平民の登用
[51]地方官僚の権限の分割
[52]権力ポジションを維持する方策
[53]古代エジプト
[54]中国
[55]儒教、官僚による文化的統一性、「レッセフェール」
[56]中央からの距離、サトラップ(州総督)と大名、統一性とコングロマリット
[57]脱中心化と統一性の維持
[58]都市建設、荘園制、帝国の統一
[59]荘園領主によるインムニテート(公的負担免除)の要求、地方名望家への発展
[60]イギリスの治安判事
[61]公務の担い手としてのジェントリー
[62]治安判事の裁量と権力
[63]中国とイギリス、行政のミニマム化
[64]ツァーリの権力ポジションと身分的連帯の欠如
[65]家産制の極端なケースとしてのレーエン(封土)関係
封 建 制
[1]封建制の分類
[2]レーエン(封土)
[3]レーエン(封土)とプフリュンデ(俸禄)
[4]日本とイスラーム、西洋の封建制との違い
[5]軍事的起源
[6]レーエン(封土)とレジティマシーの根拠
[7]階層構造、忠誠のコンフリクト、身分的名誉、独占
[8]権力分立、レジティマシーの保障
[9]主観において権利的なものと義務的なものからなるコスモス
[10]協定と身分制国家、ゲゼルシャフト化と家産制のルネサンス
[11]直線的な発展の否定、中間形態と過渡的形態
[12]統一的な頂点、書記と会計の影響力の増大
[13]官僚制化の前段階としての諮問会議
[14]支配構造と教育
[経済との関係における、支配の家産制的および封建制的な構造形式]
[15]経済的な要因、マルクスの挽臼
[16]中央集権的家産官僚制の発展と商業
[17]君主の権力ポジションと商業、商業と対立する封建的階層構造
[18]恣意と資本主義
[19]寄進、ワクフ
[20]重商主義、国家によって生き延びる資本主義
[21]資本主義の発展を阻害する封建制
[22]封建制における法秩序の安定性、資本主義への経路
[23]権力をめぐる競争と資本主義
[24]硬貨の鋳造
[25]支配構造と信条
[26]封建制における生き方、名誉、遊び、オスカー・ワイルド
[27]家父長制的な家産制の社会政策、経済への敵意と嫉妬
用 語
訳者あとがきⅠ
ISBN:9784003421017
。出版社:岩波書店
。ページ数:546ページ
。定価:1430円(本体)
。発行年月日:2023年12月
。発売日:2023年12月19日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB。