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アメリカ外交の歴史的文脈

著:西崎 文子

紙版

内容紹介

アメリカは、なぜ「理念」の看板を下ろさないのか。理念と現実との往還に着目しながら、アメリカ外交を支える思想的基盤を歴史の中に探ってきた著者による待望の論集。ウィルソン外交を読みとく論文を軸にし、スペイン内戦との関わり、著者の生きる同時代の事象をめぐる諸論考、さらには好評を博した新聞書評を収録する。

目次

 まえがき

第一部 アメリカ外交の系譜

 第一章 アメリカ「国際主義」の系譜――ウィルソン外交の遺産
  はじめに
  一 同時代としてのウィルソン外交
  二 平和と戦争との間
  三 冷戦とウィルソン外交
  おわりに――ウィルソン外交の勝利?

 第二章 モンロー・ドクトリンの普遍化――その試みと挫折
  はじめに
  一 モンロー・ドクトリンをめぐる状況
  二 パン・アメリカン条約締結の試み
  三 モンロー・ドクトリンの普遍化――その試み
  四 モンロー・ドクトリンの普遍化――その挫折
  おわりに

 第三章 ウッドロー・ウィルソンとメキシコ革命――「反米主義」の起源をめぐる一考察
  はじめに
  一 介入の始まり
  二 ベラクルス事件
  三 ウィルソンとカランサ――ナショナリストの反米
  四 「懲罰遠征」
  おわりに

第二部 スペイン内戦とアメリカ

 第四章 ラディカルたちのスペイン内戦
  はじめに
  一 人民戦線戦術とアメリカ
  二 スペイン内戦と共和国支持者のジレンマ
  三 コミットメント
  四 スペイン内戦とアメリカ社会――幻想と記憶
  おわりに

 第五章 アメリカのカトリックとスペイン内戦
  はじめに
  一 カトリック教会――アメリカの中の異端
  二 スペイン内戦とカトリック教会
  三 多数派とともに――カトリック教会と「中立」政策
  四 カトリック・ラディカリズムとさまざまな「平和」
  おわりに

第三部 同時代史としてのアメリカ外交史

 第六章 世界人権宣言とアメリカ外交
  はじめに
  一 人権問題の国際化
  二 国連構想と人権問題
  三 外交問題としての人権
  四 東西対立のなかの人権問題
  おわりに

 第七章 ベトナム戦争、黒人解放運動をめぐる日本の論調――一九六〇年代後半から一九七〇年代前半にかけて
  はじめに
  一 ベトナム戦争とアメリカ建国の理念
  二 黒人解放運動とアメリカ建国の理念
  三 アメリカ建国の理念と日本
  おわりに

 第八章 ポスト冷戦とアメリカ――「勝利」言説の中で
  一 ポスト冷戦の語られ方
  二 湾岸戦争の遺産
  三 古い戦争・新しい戦争――九・一一後のアメリカ
  四 道義外交の復興?
  五 知識人たち

 第九章 オバマ大統領広島訪問の歴史的意味
  はじめに――歓迎と戸惑いとのはざまで
  一 「核兵器のない世界」構想をめぐるわだかまり
  二 日米同盟「深化」に対する懸念
  三 核時代をめぐる歴史認識
  おわりに――広島でのオバマ大統領

 第一〇章 アメリカはどこへ行くのか――時論
  一 米国は単独主義を脱したか
  二 イラク攻撃に傾く米国
  三 「歴史の教訓」とアメリカ
  四 トランプのアメリカ

第四部 アメリカを読む、世界を読む

 ジョージ・ケナンの語る冷戦史――回顧録によせて

 「新大陸」へのまなざし

 アメリカの政治と文化を読む
  『アメリカ「帝国」の中の反帝国主義』(イアン・ティレル、ジェイ・セクストン編著)
  『ホワイト・トラッシュ』(ナンシー・アイゼンバーグ)
  『壁の向こうの住人たち』(A.R.ホックシールド)
  『ハリエット・タブマン』(上杉忍)、『自由への道』(キャサリン・クリントン)
  『ワンダーウーマンの秘密の歴史』(ジル・ルポール)
  『炎の中の図書館』(スーザン・オーリアン)
  『「他者」の起源』(トニ・モリスン)
  『私が愛する世界』(ソニア・ソトマイヨール)
  Black Lives Matter――身体と人間性の回復を求めて

 世界の政治と文化を読む
  『〈内戦〉の世界史』(デイヴィッド・アーミテイジ)
  『逆転の大戦争史』(オーナ・ハサウェイ、スコット・シャピーロ)
  『大英帝国は大食らい』(リジー・コリンガム)
  『力の追求』(リチャード・J・エヴァンズ)
  『試される民主主義』(ヤン=ヴェルナー・ミュラー)
  『シュテットル』(エヴァ・ホフマン)
  『犬を愛した男』(レオナルド・パドゥーラ)
  『ベニカルロの夜会』(マヌエル・アサーニャ)
  『人殺しの花』(大貫恵美子)
  『戦争文化と愛国心』(海老坂武)
  『文化戦争』(ネイトー・トンプソン)
  『戦後ヒロシマの記録と記憶』(若尾祐司・小倉桂子編)
  『ヒロシマ・パラドクス』(根本雅也)
  『ナガサキ 核戦争後の人生』(スーザン・サザード)
  『地球は破壊されはしない』(ダヴィデ・マリア・トゥロルド)
  『想起の文化』(アライダ・アスマン)
  『帰還』(ヒシャーム・マタール)
  『シリアの秘密図書館』(デルフィーヌ・ミヌーイ)
  『オーケストラ』(クリスチャン・メルラン)
  『なぜ歴史を学ぶのか』(リン・ハント)
  平和へのリアリズム――「怖れ」の病理に陥らぬために

  初出一覧
  あとがき

  事項索引
  人名索引

著者略歴

著:西崎 文子
西崎文子(にしざき・ふみこ)
1959年宮城県生まれ
1983年東京大学教養学部教養学科卒業
1985年一橋大学大学院法学研究科博士前期課程修了
1990年イェール大学大学院歴史学科博士課程修了(Ph.D.)
現在―東京大学名誉教授,成蹊大学名誉教授
専攻―アメリカ政治外交史
著書―『アメリカ冷戦政策と国連 1945-1950』(東京大学出版会,1992年)
   『アメリカ外交とは何か』(岩波新書,2004年)
   『アメリカ外交史』(東京大学出版会,2022年)ほか

ISBN:9784000616331
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:394ページ
定価:3700円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS