近世文学史論
古典知の継承と展開
著:鈴木 健一
内容紹介
日本文学における古典から近代への転換は、どのように準備され成し遂げられたのか。古代からの古典をめぐる知識は近世に至って秩序化され、出版文化の発達と共に広く浸透した。人びとは学問と文芸が融合した知の共同体のなかで個性を育んでいった。近世文学を前後の時代と連関させながら、ひろく日本の文学史を再考する。
目次
序章 古典知の達成――文学史における近世
第一編 学問と文芸の融合――知の共同体の形成
第一章 後水尾院と林羅山――近世詩歌史の始発
第二章 後陽成天皇歌壇の展開――文化の復興へ
第三章 後水尾院歌壇と親王門跡――歌壇を支える多層性
第四章 寛永十三年――時代の始まりの熱気と気品
第五章 『湖月抄』の世界――立体的な注釈
第六章 『古事記』受容一齣――歌われた神話世界
第二編 〈型〉の継承と変容――新しさの創出への苦闘
第一章 フレームとしての詩歌のことば――美の規範
第二章 和歌史の中の『万葉集』――起爆剤としての文化装置
第三章 石川丈山の富士山詩を読む――名詩の成立と受容
第四章 馬の和歌史を遡る――歌ことばの推移
第五章 後水尾院の初句句割れ表現をめぐって――ことばの屈曲
第六章 賀茂真淵の歌風――復古と改革
第七章 三条西季知『恵仁春乃陰』の歌――緩やかな転回
第八章 題詠における伝統と改革
第三編 画と詩の交響――絵画体験と美意識の浸透
第一章 和歌と絵画が出逢う時――和歌の図像学
第二章 近世の物質文化と和歌――実在感と想像力
第三章 近世初期の和歌と絵画――画賛最盛期を用意したもの
第四章 描かれた百人一首の世界――歌意絵の功罪
第五章 近世における西行図像――歌人像の共有
第六章 扇と団扇をめぐる言語と表象――近世の〈応用知〉
第四編 神秘性から日常性へ――現実に対処する精神
第一章 鳥獣虫魚の文学史――〈神との回路〉と〈人の心の鏡〉
第二章 海の文学史――向こう側から生活世界へ
第三章 古典文学の夢――神秘性という機能の方法化
第四章 近世文学が描いた恋愛――日常に宿る狂気性
終章 近世から近代、そして現代へ――〈共同性〉のゆくえ
初出一覧
図版出典一覧
あとがき
主要人名索引
英文要旨