西田哲学研究
近代日本の二つの顔
著:許 祐盛
訳:小石 淑夫
内容紹介
なぜ西田幾多郎の哲学は、独創的な論理をもって生命の躍動を捉えた内的生命論と、帝国主義日本の戦争協力に結びついたとの批判がある歴史哲学、二つの顔を持つに至ったのか。二つは合致するのか、分裂しているのか。西田哲学における「転回」を分析して、その内在的な理解を試みた本書は、韓国の日本思想研究の記念碑的著作である。
目次
日本人読者のための「はじめに」
原著「はじめに」
第Ⅰ部 生命と論理
第一章 二つの生命と一つの論理
一 生命と論理
二 なぜ論理なのか?
第Ⅱ部 内的生命の哲学
第二章 自覚主義と純粋経験 ― 本当の自己を求めて
一 自覚主義
二 純粋経験
第三章 芸術論と身体論
一 芸術論
二 身体論
三 美の世界を越えて道徳と宗教そして歴史の世界に
第四章 絶対無の自覚の哲学 ― 光中心の意識の多次元論
一 絶対無の神秘世界
二 自由意志
三 歴史的行為と歴史的自己 ― 第三位
四 叡智的直観の世界 ― 知情意の世界
五 情的叡智的直観
六 知的叡智的直観 ― 意識一般の段階
七 知覚的直観と意味了解
八 宗教的立場を越えて哲学的立場に
第Ⅲ部 歴史哲学とその批判
第五章 歴史哲学以前の「歴史」と転回
一 歴史哲学以前の「歴史」
二 移行期と転回、そして西田自身の態度
三 転回についての西田の態度
四 表現 ― 歴史哲学に移る媒介
第六章 歴史哲学
一 主体と環境の相互作用論
二 行為的直観
三 歴史的身体論
四 時代論とランケ
五 政治哲学 ― 国家・天皇・国体そして大東亜共栄圏
六 歴史哲学の芸術論 ― フィードラーからリーグルへ
第七章 歴史哲学批判
一 自己限定の暴力性
二 戸坂潤と丸山真男
三 明治維新不可避論
四 西田哲学が投げかけた問題
結論 二つの顔の西田、誰が彼に石を投げつけられようか
解説 ― 西田哲学と他者の目……………末木文美士