王のいる共和政 ジャコバン再考
著:中澤 達哉
内容紹介
市民革命期(一八─一九世紀)に欧米諸国で議論された「共和政」は、世界各地へ広がりながら、いつ、どのように「王のいない」ものになったのか。「革命」や「自由」とともに、この原理が持っていた本来の意味に光を当て、「近代」を根底から問い直す。刷新を続けるヨーロッパ近世史の成果にもとづく、総決算的論集。
目次
はじめに――ジャコバンから革命・自由・共和政を読み替える……中澤達哉
地図 フランス共和政宣言時のヨーロッパ
序章 研究史から見えてくるもの……近藤和彦
1.はじめに――3つのキーワード
2.ロベスピエールの演説
3.ジャコバンと共和政治の研究史
4.広義のジャコバン研究史から
5.課題と展望
■第Ⅰ部 ジャコバンの諸相――「王のいる共和政」と「王のいない共和政」
第1章 旅する「共和政」とパトリオット・ジャコバン――フランスとオランダのジャーナリズムを中心に……森原 隆
フランスとオランダとの関係から見えること
18世紀ヨーロッパ政治・革命思想におけるオランダ
オランダの「パトリオット革命」と『ライデン・ガゼット』(Gazette de Leyde)/18世紀フランスとオランダのジャーナリズム
「革命のジャーナリズム」とジャコバンへ
おわりに
第2章 向う岸のジャコバンと「王のいる共和政」――「中・東欧圏」という共和主義のもうひとつの水脈……中澤達哉
はじめに
ハンガリー・ジャコバンとは?
「王のいる共和政」――選挙王政の共和国
「王のいる共和政」――世襲王政の共和国
「王のいる共和政」の組成
おわりに――近代共和主義のもうひとつの水脈
第3章 オーストリア・ジャコバンと二つの啓蒙改革――A. リーデルを焦点に……阿南 大
はじめに
二人の啓蒙改革君主と「ジャコバン」の胚胎
『ハプスブルク君主政のための憲法草案』(1791)
『反貴族政的平等連盟に向けての全ドイツ人への布告』(1792)
おわりに
第4章 ポーランドでひとはどのようにしてジャコバンになるのか――ユゼフ・パヴリコフスキの軌跡……小山 哲
「熱烈なジャコバン」の最期
思想家パヴリコフスキの「発見」
初期の論考にみられる改革論
ジャコバンへの道
おわりに――2つのポーランド革命
第5章 イングランド・ジャコバンと「王のいる共和政」……正木慶介
イングランド・ジャコバンという視角
ブリテン国民代表大会――英・蘇・愛のジャコバンの共同
大衆集会の開催――「 王のいる共和政」論の展開
セルウォールの「王のいる共和政(民主政)」論
イングランド・ジャコバン思想の周縁部
結びに代えて――イングランド・ジャコバン思想の射程
■第Ⅱ部 19/20世紀の転回
第6章 混合政体の更新と「ジャコバン」の王国――スウェーデンにおける「革命」の経験……古谷大輔
はじめに――スウェーデンから見る「革命」の再考
混合政体をめぐる議論の系譜
フランス革命とスウェーデンの距離感
「ジャコバン」と批判され「1809年の男たち」と称揚された者たち
おわりに―混合政体の更新と「ジャコバン」の王国
第7章 ジャコバンとボリシェヴィキのはざまの君主政――19世紀ドイツの「王のいる共和政」論……小原 淳
はじめに――ジャコバンとボリシェヴィキのはざまのドイツ
カントの共和政論
プロイセン改革の時代
三月前期の諸潮流
ルーゲの「共和政的君主政」論
「王のいる共和政」の消滅?
おわりに――その後の共和政論
第8章 自由、共和国、革命――ロシア帝国バルト諸県の1905年……小森宏美
はじめに
「1905年」の伏流と複数の語り
エストニアの文脈における「共和国」
ある地方の「1905年」
「自由」
第9章 ロシア革命における国制の選択――立憲君主政、共和政、ジャコバン独裁……池田嘉郎
はじめに
ヨーロッパにおける国制の展開とロシア
二月革命と事実上の共和政の出現
第三共和政とジャコバン独裁
臨時政府の全権と革命議会
むすび
終章 「名乗ること」と「名指すこと」――フランス近世史から……高澤紀恵
観察尺度をめぐって――ヨーロッパの広がり
方法をめぐって――実践と言説、運動と思想
歴史意識をめぐって――21世紀の世界のなかで
関連年表
あとがき――レスプブリカのアクチュアリティ