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自助社会を終わらせる

新たな社会的包摂のための提言

著:宮本 太郎

紙版

内容紹介

低成長と高齢化で停滞する日本社会の各所から悲鳴が上がっている。東アジア諸国の中でも劣化した賃金、新しい貧困層の膨張。コロナ禍が明らかにした自助社会の限界を直視し、90年代以降進められてきたさまざまな政策を、福祉、政治、教育などさまざまな分野の研究者が徹底検証。ありうべき社会像を提示する。

目次

序章 自助社会をどう終わらせるか……宮本太郎
 1 自助社会とは何か
 2 社会的包摂の光と
 3 新しい包摂型政策のための視点

■Ⅰ部 自助社会の揺らぎと包摂型政策

1 ガラパゴス化する日本のワーキング・プア対策……阿部 彩
 1 「子どもの貧困」対策の弊害
 2 貧困の現状
 3 賃金
 4 政府による再分配
 5 ガラパゴス化する日本

2 すべての家族への支援をどう進めるか――家族政策の分断から包摂へ……千田 航
 はじめに
 1 日本の家族政策にある二つの分断
 2 子ども・子育て支援新制度により分断は解消されたのか
 3 フランスの保育サービス供給体制からの示唆
 4 親への支援と相談の可能性

3 誰も排除しないコミュニティの実現に向けて――地域共生社会の再考……野口定久
 はじめに
 1 自助社会の歴史的・制度的背景
 2 「日本型福祉社会論」から「地域共生社会」へ
 3 福祉レジームから展望する地域共生社会
 4 レジーム転換を妨げるもの
 5 制度の縦割りを超える可能性
 6 福祉コミュニティの創出

4 犯罪をした障害者を孤立させないために――「自立」から「依存」へ……丸谷浩介
 はじめに
 1 累犯知的障害者の地域生活
 2 包摂と排除
 3 刑事政策における福祉との連携
 4 包摂と支援の法律関係

■Ⅱ部 パンデミックの衝撃と転換点

5 コロナ危機は社会民主主義的合意を作るか……山口二郎
 はじめに
 1 コロナ危機と政治の呼び戻し
 2 アメリカにおけるニューディールリベラリズムの復活
 3 日本における社会民主主義的合意の可能性

6 コロナ危機は自由民主主義を変えたのか……山崎 望
 1 新型コロナパンデミックという危機
 2 新型コロナパンデミック時代の境界線(1)
 3 自由民主主義の危機?
 4 新型コロナパンデミック時代の境界線(2)
 5 三つの提言

7 「地域責任」と地方分権の限界――コロナ対応を例として……川島佑介
 1 「地域責任」としてのコロナ対応
 2 導入状況と成果の分析
 3 「地域責任」の限界
 4 「地域責任」にかわる政府デザイン

■Ⅲ部 包摂型社会を展望する

8 メリトクラシーを「弱毒化」するために……本田由紀
 1 「自助」とメリトクラシーのからみあい
 2 メリトクラシーの構造を分解する
 3 日本のメリトクラシーの特徴――「能力主義」という変異種
 4 メリトクラシーへの批判の浮上
 5 メリトクラシーの正当性にはいかなる問題があるのか
 6 メリトクラシーの問題への対症療法としての「学習支援」
 7 メリトクラシーの全廃は可能か
 8 メリトクラシーを「弱毒化」するには――「水平的多様化」の実現に向けて
 おわりに

9 個人化の時代の包摂ロジック――「つながり」の再生……須田木綿子
 はじめに
 1 保健・福祉領域の民営化とNPO&ボランティア
 2 新しいNPO&ボランティアの躍動
 3 個人化の時代の包摂ロジック

10 包摂する社会が危機にも強い……大沢真理
 1 本章の課題と問題意識
 2 ショックおよび脆弱性とジェンダー平等
 3 コロナ以前の脆弱性
 4 コロナ禍よりもコロナ対策禍
 5 「新しい資本主義」に騙されない

 あとがき――「可能性の政治」に向かって……宮本太郎

著者略歴

著:宮本 太郎
宮本太郎(みやもとたろう)
1958年生まれ.中央大学法学部教授.政治学,福祉政策論.
『貧困・介護・育児の政治――ベーシックアセットの福祉国家へ』(朝日選書),『共生保障――〈支え合い〉の戦略』(岩波新書)など.

ISBN:9784000615334
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:334ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2022年06月
発売日:2022年06月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS