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教育格差の診断書

データからわかる実態と処方箋

著:川口 俊明

紙版

内容紹介

近年注目の集まる教育格差。だが、日本では適切な学力調査や利用できるデータがごく限られ、その是正策はもとより、具体的な実態を掴むことも難しい。本書は自治体の調査を最大限に活用し、経年での格差の変動、学習時間と家庭環境の関係、「やり抜く力」の影響など、教育格差の診断とその処方箋をデータから示す。

目次

 調査の概要
  1 いろは市学力パネルデータ
  2 調査対象地の特性

第1章 日本の教育行政が実施する学力調査の問題点……川口俊明
 1 「やりっ放し」の学力調査
 2 なぜ、いろは市学力パネルデータが必要なのか
 3 いろは市学力パネルデータの意義と課題
 4 本書の構成

第2章 学力調査を分析するための基礎知識――朝ご飯は学力に繫がるか?……川口俊明
 1 統計というツール
 2 統計分析のための基礎知識
 3 パネルデータで何がわかるのか?
 4 クロスセクション分析とパネルデータ分析
 5 パネルデータ分析が必要なわけ

第3章 進級しても変わらない格差――児童間・学校間における格差の平行推移……松岡亮二
 1 日本の義務教育制度と教育格差
 2 データと変数
 3 分析結果
 4 データで可視化される実態――格差の平行推移
 5 政策への示唆――実態を変えるためにすべきこと

第4章 学習時間格差を是正するには――子どもの環境差に応じた働きかけ……数実浩佑
 1 努力格差・学習時間格差という問題
 2 子どもが学習に向かう四要素――分析枠組み
 3 分析方法――計測できない影響をどう見積もるか
 4 分析に用いるデータと変数
 5 分析結果――階層による四要素の影響差
 6 何が学習時間を伸ばすのか――階層による要素の違い

第5章 小学生のグリット(やり抜く力)格差の推移……垂見裕子
 1 なぜグリットに着目するのか
 2 分析に用いる手法
 3 グリットの推移――小四〜小六の間の変化
 4 グリット格差の推移
 5 どのような経験・活動・意識がグリットを高めるのか
 6 グリットが高まると学力は向上するのか
 7 グリット格差に関するまとめと考察

第6章 学校文化と教育格差――――日本社会に文化資本概念をどう適用するか……知念 渉
 1 文化資本という考え方
 2 文化資本と日本社会への適用
 3 子どもの生活様式空間の構築に使用する変数
 4 子どもの生活様式空間とそれの背景にある力学
 5 結論――生徒指導への順応と業績主義への順応

第7章 アンケート調査の落とし穴――――客観的な数値データは正しいか……土屋隆裕
 1 アンケート調査の結果は正しいか
 2 よくある調査回答データの歪みとその原因
 3 全国学力・学習状況調査に見る回答誤差
 4 いろは市調査に見る回答誤差
 5 アンケート調査データの落とし穴

終章 「教育改革やりっ放し」のループを抜け出すために……川口俊明
 1 教育格差の処方箋
 2 次は何をするべきか
 3 教育格差の実態把握のための読書案内・ウェブサイト

 あとがき

著者略歴

著:川口 俊明
川口俊明(かわぐち・としあき)
福岡教育大学准教授.著書に『全国学力テストはなぜ失敗したのか――学力調査を科学する』(岩波書店),編著に『日本と世界の学力格差――国内・国際学力調査の統計分析から』(明石書店),論文に「多重対応分析による子育て空間の分析――学校教育に関わる活動に着目して」(『家族社会学研究』32(2)),他.

ISBN:9784000615242
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:238ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2022年03月
発売日:2022年03月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA