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生活保護解体論

セーフティネットを編みなおす

著:岩田 正美

紙版

内容紹介

仕事のあと、ベンチで眠る生活をおくる人。夫に先立たれ、年金だけではやりくりできない人。私たちの「セーフティネット」は、本当に機能しているのだろうか? 生活保護をめぐる俗論、誤解を退け、先のみえない時代の「最低生活保障」のありかたを大胆に構想する。困ったときには、誰もが「使える」「頼れる」制度に——。

目次

序章 解体でみえる、最低生活保障の新たなかたち
 1 パンデミックと「最後のセーフティネット」
 2 誤解とマイナスイメージ
 3 「必要な人」にどのくらい利用されているか
 4 もう生活保護は解体して、出直したほうがいい
 5 これまでの改革案──再構築の道筋は

第I章 生活保護という不思議な世界
 1 生活保護とはどういうものか?
 2 古い「貧困理解」と、生活保障としての不徹底
 3 運営の二重原則
 4 具体例で考えてみると
 5 いくつかの謎──生活扶助の「加算」と住宅扶助基準
 6 何が社会扶助の保障機能を弱めているか

第II章 国民皆保険・皆年金体制のなかの「低所得者対策」──もうひとつの「社会扶助」
 1 社会保険と社会扶助
 2 国民皆保険と「低所得者対策」
 3 国民皆年金の保険料免除・軽減制度と福祉年金
 4 「皆保険・皆年金」以外の低所得者対策
 5 低所得基準と生活保護基準

第III章 解体・編みなおしの戦略と指針──「原理問題」を整理する
 1 基礎的生活ニーズに着目して八つの扶助をグループ化する
 2 原理問題(1) 保険と扶助の区別をどう考えるか
 3 原理問題(2) 普遍と選別の多様性と「選別的普遍主義」
 4 時代の変化に対応した制度に──その他の課題

第IV章 提案 どう解体し、どう溶け込ませるか
 1 医療・介護サービスニーズの「標準」保障
 2 住宅手当の新設
 3 教育扶助の解体と子ども養育費の保障
 4 高齢期・障害のあるときの生活扶助はどうするか
 5 失業時の生活保障と就労支援──求職者支援制度の全面改定
 6 多様な方法での最低生活保障を

終章 生活の「最低限」をどう決める
 1 生活の「最低限」の意味と保障水準
 2 唯一正しい最低生活費算定の方法があるわけではない
 3 「資産ベース」の福祉へ──転換は可能か?
 4 ベーシック・インカムのほうが早い?

参考文献
あとがき

著者略歴

著:岩田 正美
岩田正美(いわた まさみ)
1947年生まれ。日本女子大学名誉教授。中央大学大学院経済学研究科修了。日本女子大学博士(社会福祉学)。東京都立大学人文学部助教授、教授を経て、1998年日本女子大学人間社会学部教授、2015年定年退職。
主な著書に『戦後社会福祉の展開と大都市最底辺』(ミネルヴァ書房、1995年。福武直賞、社会政策学会学術賞受賞)、『現代の貧困──ワーキングプア/ホームレス/生活保護』(ちくま新書、2007年)、『社会的排除──参加の欠如・不確かな帰属』(有斐閣、2008年)、『社会福祉のトポス──社会福祉の新たな解釈を求めて』(有斐閣、2016年)、『貧困の戦後史──貧困の「かたち」はどう変わったのか』(筑摩書房、2017年)などがある。2001年から2011年まで厚生労働省社会保障審議会委員。2011年より同審議会生活保護基準部会臨時委員等歴任。

ISBN:9784000614955
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:320ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS