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権力分立論の誕生

ブリテン帝国の『法の精神』受容

著:上村 剛

紙版

内容紹介

権力分立論はどのようにして姿を現したのか。一八世紀後半のブリテン帝国における『法の精神』の受容に焦点をあてることで、モンテスキューからアメリカ合衆国憲法制定時のマディソン、ハミルトンに至る政治思想史を精緻に叙述する。権力分立論の通説的理解を大きく修正し、その成立過程に新鮮な読み直しを迫る画期的研究。

目次

 序 章

第1部 鏡の国のモンテスキュー?──混合政体論と権力分立論の重なり(1748~1765)

 第1章 『法の精神』における混合政体/権力分立と二つの裁判権
  第1節 「三権分立」をめぐる議論の錯綜
  第2節 裁判権の重要性
 第2章 仏英における『法の精神』受容とブラックストン『イングランド法釈義』
  第1節 英語圏におけるモンテスキューの高評価
  第2節 ブラックストンにおける混合政体論と権力分立論の重なり
  第3節 モンテスキューからブラックストンへ──司法権の変奏と貴族身分の擁護

第2部 さまよえるブリテン人──帝国の誕生と、混合政体論の動揺(1763~1773)

 第3章 総督と植民地──帝国的国制の態様
  第1節 1763年勅令と新植民地の苦闘
  第2節 トマス・パウナル──混合政体論なき権力分立論の萌芽
  第3節 国王大権モデルと混合政体モデル──参議会への権力集中
 第4章 ミドルセックス選挙における混合政体論と権力分立論の衝突
  第1節 論争が起きるまで
  第2節 庶民院議会における罷免の決議と、グレンヴィルの反論
  第3節 ウィルクスの再選と、議会外への論争の波及
  第4節 立法権と司法権の異同?
  第5節 論争の終了と影響
  第6節 非混合政体論的国制解釈への傾斜──ドゥロルム『イングランド国制』
 第5章 植民地に裁判所を作る──1773年東インド会社規制法への道
  第1節 支配権の確立から司法法案まで
  第2節 東インド会社規制法案と最高裁判所
  第3節 ブリテン帝国における権力分立論の誕生

第3部 そうやって最も美しい噓が生まれる──帝国的国制のアメリカ的変容(1774~1792)

 第6章 ケベック法とジョン・ディキンソン
  第1節 フランス法の尊重か、イングランド法の導入か──ケベック統治のディレンマ
  第2節 ジョン・ディキンソン、反本国派のリーダーになる
  第3節 『ケベック住民への手紙』におけるモンテスキューの援用
  第4節 植民地期の権力分立テーゼ・再考
 第7章 1776年の邦憲法制定
  第1節 宙づりの権力分立論──ジョン・アダムズ『政府に関する考察』
  第2節 ヴァージニア邦憲法における権力分立の成文化
  第3節 権力分立と帝国的統治構造──修正参議会の登場
 第8章 マディソンの換骨奪胎──『フェデラリスト』のレトリックとリアリティ
  第1節 いかに邦を抑制するか──マディソンにおける権力分立論の消極的地位
  第2節 『フェデラリスト』における非権力分立論的権力分立論の価値
  第3節 Adieu,Montesquieu──マディソン、モンテスキューと訣別する
 第9章 ハミルトンの一点突破──『フェデラリスト』のレトリックとリアリティ
  第1節 ハミルトンと執行権の単一性
  第2節 執行参議会をめぐる葛藤
  第3節 「立法審査制」から司法審査制への横滑り

 終 章

 参照文献
 あとがき
 事項索引
 人名索引

著者略歴

著:上村 剛
上村 剛(かみむら つよし)
1988年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は政治思想史。現在、日本学術振興会特別研究員PD(法政大学)。

ISBN:9784000614603
出版社:岩波書店
判型:A5
ページ数:352ページ
定価:6600円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年03月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LND