岩波科学ライブラリー 325
生命はゲルでできている
著:長田 義仁
内容紹介
コンニャク、ゼリー、豆腐など、水を含んでブヨブヨ、プルプルしているのはみんなゲル。固体と液体の性質をあわせもつこの物質で私たちのカラダの大部分はできている。高分子がつくるネットワークに水を大量にたくわえ、生命活動に不可欠なしなやかさを備えるばかりか、物質・エネルギーの輸送も担う、驚異のしくみを見てみよう。
目次
1 世界はゲルに満ちている
ブヨブヨ、プルプルの物質
固体? それとも液体?
弾性
粘弾性
ゲルがもたらす生物の巧みな仕組み
液体か固体かは、時空間で決まる
豆腐の角に頭をぶつけると?
水面を駆けるトカゲ
ソフト&ウエットウエア
コラム◎大陸や氷河の移動の観測に必要な時間は?──デボラ数
2 ゲルをつくる
語源はゼラチン
ゼラチンゲル
なぜゲルになる?
豆腐もゆで卵もタンパク質のゲル
多糖がつくるネットワーク
カンテンはアガロースのゲル
アルギン酸ゲルからつくる人工イクラ
コラム◎化学者グレアム
合成高分子がつくるネットワーク
ネットワークの大きさを調整する
パーコレーション理論
コラム◎高分子科学
3 ゲルが示す不思議なふるまい
なぜゲルの水は流れ出ない?
水はクラスターをつくる
水中にイオンがあると
高分子イオンの場合
イオンがネットワークになると
ゲルにはポテンシャルの井戸がある
ゲル中の水は凍らない
水は敏感に運動性を変える
生物組織の水は凍らない
コラム◎ゲルのいろいろ
4 ゲルは環境に応答する
水を含んだゲルの環境応答性
物質の拡散とは
ゲルの膨潤は協同拡散
ゲル中の拡散・輸送・分離
ゲルの体積相転移
浸透圧とゴム弾性も膨潤能力を左右する
弾性・粘性・粘弾性
応力緩和のモデル
動的粘弾性
5 命を支える賢いゲル
生物は階層構造をつくる
細胞どうしをつなぐ──細胞外マトリックス
引っ張りに耐える──腱と靭帯
衝撃を和らげ、摩擦を減らす──関節軟骨
力を生み出す──筋肉
どの方向からの力にも耐える──皮膚
ゲルが支える──硬組織
体内の摩擦をなくすスーパー粘液──ムチン
6 ゲルは理想のバイオインターフェース
生物の表面特性はなぞだらけ
柔軟に伸縮して血圧を制御する──血管
絶えず柔らかさを変える──細胞
コラム◎エラストグラフィ
変形して毛細血管をすり抜ける──赤血球
細胞のカタチを保ち、動かす──細胞骨格ネットワーク
7 ゲルがつくる未来技術
軟組織をつくる
強いゲルで人工腱・人工靭帯をつくる
超低摩擦ゲルで関節軟骨をつくる
しなやかに動く分子機械をつくる
必要なときに薬物を放出する
次代の医療を担う再生医療
ゲルでつくる細胞外マトリックス
神経幹細胞もゲルで培養できる
3次元スキャフォールドで器官再生
コラム◎医療に役立つ高分子ゲル
終章 生命活動の舞台を理解する
あとがき
図版出典