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岩波科学ライブラリー 310

食虫植物

進化の迷宮をゆく

著:福島 健児

紙版

内容紹介

植物なのに肉食なんて! しかしその特殊能力のわりに、食虫植物はいつだってマイナーな存在だ。その深い深い理由とは。ベジタリアンもいるの? あの妙な形や「胃腸」はどこから……? ウツボカズラから食虫木まで何でもござれ。気鋭の研究者の道案内で、謎に満ちた進化の迷宮を探険し、その妖しい魅力に心ゆくまで囚われよう。

目次

 まえがき

1 食虫植物とはなにか?――当落線上にそよぐ食虫木
 食虫木ロリデュラ
 消化できない食虫木
 吸収できない食虫木?
 木心あれば虫心
 割れた石畳
 食虫植物の当落線

2 食虫植物の猟具
 電気仕掛けのトラバサミ
 食事の時間
 光り輝くトリモチ
 棚・棚七五秒の投石機
 権謀術数を尽くした落とし穴
 自動減圧スポイト/螺旋迷路のウナギ筒

 コラム●麻酔で眠るハエトリソウ
 コラム●フタなし落とし穴の雨対策

3 食虫植物の偏食――虫食う草も好き好き
 食わず女房になったウツボカズラ
 ベジタリアンになったウツボカズラ
 トイレになったウツボカズラ
 トイレ付きワンルームになったウツボカズラ
 食虫植物は人類を襲うか?

 コラム●食虫植物の胃腸

4 食虫植物の葛藤
 食事と日光浴のパラドックス
 横溝正史の食虫蘭
 食事と送粉のパラドックス
 食べながら食べられる
 食虫植物の裏をかく生き物たち

 コラム●落とし穴の住み込み従業員
 コラム●花茎で罠を作る食虫植物の発見

5 それでも虫を食べる意味とは?
 モウセンゴケの狂人
 父ダーウィンの失敗
 息子ダーウィンの成功
 食虫植物を生み出す環境
 ギアナ高地の貯水槽
 着生性は激レア
 息子ダーウィンが見逃したもの
 季節労働の理由
 食虫植物の費用対効果論

6 食虫植物はなぜ「似てしまう」のか
 食虫植物の祖先はひとつ?
 DNAが暴いた他人の空似
 人を惑わす収斂進化
 進化は繰り返す
 分子収斂――DNAの空似
 尾根筋をたどる進化
 普通の植物が「消化酵素」をもつ理由

7 複雑精緻な進化の謎
 サルが綴ったシェイクスピア
 虫を捕らえるジャガイモ――「使い回し」仮説
 消化・吸収で一石二鳥?
 複雑な形への進化

8 食虫植物のゆくえ
 消えゆく食虫植物
 進化のゆりかご
 侵略する食虫植物
 進化の袋小路?
 食虫植物は人類の役に立ってきたか?
 食虫植物はもっと人類の役に立つか?
 食虫植物と科学のこれから

 コラム●盗み食いの罰を受けたヘイシソウ
 コラム●Facebook で見つかった巨大モウセンゴケ

 あとがき

著者略歴

著:福島 健児
福島健児(ふくしま けんじ)
1987年福岡県大牟田市生まれ。2015年総合研究大学院大学博士課程修了。博士(理学)。コロラド大学研究員などを経て、現在はヴュルツブルク大学植物学科Ⅰグループリーダー。専門は進化生物学、植物科学、ゲノム科学、生命情報科学など、食虫植物の研究に役立つさまざまな分野。初めて育て、枯らした食虫植物は、16歳のときに高専の生物部でもらったフクロユキノシタ。初めて見た自生地の食虫植物は、17歳のときに原付で九州を縦断してたどり着いた屋久島のモウセンゴケ。いつか、多種のウツボカズラを取り揃えた消化液の飲み比べ会を催したいと思っている。

ISBN:9784000297103
出版社:岩波書店
判型:B6
ページ数:174ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2022年03月
発売日:2022年03月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:PST