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クリティーク社会学

慈悲のポリティクス

モーツァルトのオペラにおいて,誰が誰を赦すのか

著:奥村 隆

紙版

内容紹介

どんな相手も無条件に愛し赦す、そうした純粋で絶対的な慈悲の世界が存在するとしたら——。だがそれは、現実には存在し得ないものであり、仮に実現したとしても生と社会への不都合に帰結してしまう。本書では、モーツァルトの赦しを題材とする後期のオペラ作品から、この二重の困難をめぐるアポリアを追求する。

目次

第1章 慈悲の問題系――モーツァルトのオペラにおける「赦し」
 1 慈悲とその困難
 2 モーツァルトのオペラと「赦し」――『イドメネオ』と『後宮からの逃走』
 3 ふたつの世界の葛藤――エリアスの仮説から

第2章 赦しによる共同体――『フィガロの結婚』
 1 中断された赦し――『フィガロの結婚』第一幕・第二幕
 2 三つの和解――『フィガロの結婚』第三幕・第四幕
 3 「赦し主」と共同体

第3章 ふたつの赦しなき世界――『ドン・ジョヴァンニ』と『コジ・ファン・トゥッテ』
 1 愛の無差別主義者たち
 2 赦しを拒絶する自由――『ドン・ジョヴァンニ』
 3 不完全なものとしての平等――『コジ・ファン・トゥッテ』

第4章 無差別な慈悲の残酷――『皇帝ティートの慈悲』
 1 一七九一年のオペラ・セリア
 2 無差別主義的な慈悲――『皇帝ティートの慈悲』第一幕
 3 重唱に加わる皇帝――『皇帝ティートの慈悲』第二幕

第5章 慈悲のポリティクスからの自由――『魔笛』
 1 無力な王子――タミーノの物語
 2 復讐者と赦し主の系譜――夜の女王とザラストロ
 3 慈悲の共同体からの自由――パミーナの物語

文 献
解 説――残酷な赦し、愛の二重性、そして、慈悲のポリティクスからの自由……………大澤真幸
あとがき

著者略歴

著:奥村 隆
奥村 隆(おくむら たかし)
1961年生まれ。関西学院大学社会学部教授。著書に『他者といる技法──コミュニケーションの社会学』(日本評論社、1998年)、『エリアス・暴力への問い』(勁草書房、2001年)、『反コミュニケーション』(弘文堂、2013年)、『社会学の歴史Ⅰ──社会という謎の系譜』(有斐閣、2014年)、『社会はどこにあるか──根源性の社会学』(ミネルヴァ書房、2017年)、『反転と残余──〈社会の他者〉としての社会学者』(弘文堂、2018年)など。

ISBN:9784000271783
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:212ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2022年01月
発売日:2022年01月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AVLF