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クリティーク社会学

空爆論

メディアと戦争

著:吉見 俊哉

紙版

内容紹介

「視ること」は「殺すこと」である――支配し、侵略し、殺害する「上空からの眼差し」としての空爆は、第一次世界大戦や日本空爆、朝鮮空爆などを経て、いかに変容し、遠隔爆撃ドローンや現在の戦争における空爆の眼差しへと至ったのか。ウクライナ侵攻まで一貫してつながる「メディア技術としての戦争」を問い直す。

目次

序章 アイ・イン・ザ・スカイ――アフガニスタン上空
 二〇二一年八月、アメリカの敗戦
 高度化した「アメリカ的空爆様式」
 アイ・イン・ザ・スカイ
 メディアとしての空爆――俯瞰する眼と観察者
 本書の位置づけと構成

第1章 日本空爆――上空からの眼差しの支
 上空から東京を焼き尽くす
 B29という巨大プロジェクト
 写真偵察機F13からの視線
 日本列島はB29空爆の実験場
 「上空からの眼差し」の発達 ――気球と飛行船
 空からの植民地主義とドゥーエ・テーゼ
 日本軍の中国都市への無差別爆撃
 「空の帝国」と〈戦争=映像〉の視覚
 路上に転がる無数の焼死体
 路上の死体は語ることができるか?

第2章 空爆の冷戦、そしてポスト冷戦
 東京から平壌へ――朝鮮戦争と空爆
 ベトナム戦争と空爆
 巨大爆撃機と森のゲリラ戦
 未来を予測する空爆システム
 湾岸戦争と「ポルノグラフィックな監視」
 軍事における革命?――植民地主義は終わらない

第3章 メディアとしてのドローン爆撃
 カミカゼ・ドローンの跳梁跋扈
 ドローンの歴史を振り返る
 アメリカの「カミカゼ」
 「カミカゼ」は、いつ始まったのか?
 テレビジョンとしての攻撃型ドローン
 対日戦争への攻撃型ドローン投入
 安全な場所からの帝国主義戦争
 〈銃〉と〈眼〉のメディア論的結合

第4章 空爆という上演――眼差しとふるまい
 「自爆」としての「カミカゼ」
 特攻兵という爆弾の〈眼〉
 空爆する帝国 自爆する野蛮
 遠くから眺める――眼差しの帝国
 地下への潜伏とカモフラージュ
 空爆する眼 見ることの権利
 再び、路上の死体は語ることができるか?

終章 プーチンの戦争――モバイル時代と帝国の亡者
 プーチンの戦争 帝国への妄執
 「スパイ」と「俳優」の間にあるもの
 ヴィリリオの誤算?
 高さの遠近法とデータの遠近法

 文献
 解説――眼差しのテクノロジーの臨界を描く……北田暁大

 あとがき

著者略歴

著:吉見 俊哉
吉見俊哉(よしみ しゅんや)
1957年生まれ.東京大学大学院情報学環教授.著書に『都市のドラマトゥルギー──東京・盛り場の社会史』(河出文庫,2008年),『博覧会の政治学──まなざしの近代』(講談社学術文庫,2010年),『視覚都市の地政学──まなざしとしての近代』(岩波書店,2016年),『平成時代』(岩波新書,2019年),『大学は何処へ──未来への設計』(岩波新書,2021年),『東京復興ならず──文化首都構想の挫折と戦後日本』(中公新書,2021年)など.

ISBN:9784000271776
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:266ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2022年08月
発売日:2022年08月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JWCM