明末清初中国と東アジア近世
著:岸本 美緒
内容紹介
社会の大きな揺らぎのなかで、新たな秩序への模索と葛藤が繰り広げられた一六—一八世紀。著者は明清史をフィールドに、東アジアの共時性としての「近世」を考察してきた。総説「東アジア・東南アジア伝統社会の形成」をはじめ、時代区分、皇帝権力、国家観、市場構造などの論点から、世界史へと開かれた課題を提示する。
目次
まえがき
第Ⅰ部 東アジアのなかの中国「近世」
第一章 東アジア・東南アジア伝統社会の形成
はじめに
一 明初朝貢秩序の解体(—一五七〇年代)
二 新興軍事勢力の成長(一五七〇年代—一六三〇年代)
三 明清交替と一七世紀の局面転換(一六三〇年代—一六八〇年代)
四 伝統社会の形成(一六八〇年代—一八〇〇年)
おわりに
第二章 皇帝と官僚・紳士——明から清へ
はじめに
一 「専制権力」のパラドックス
二 皇帝権力をめぐる議論
三 明から清へ
おわりに
第三章 中国史における「近世」の概念
はじめに
一 日本と中国における初期の「近世」論
二 「近世」と「近代」
三 多様な「近世化」
付 論 「近世化」と「東アジア化」
はじめに——時代区分と地域区分
一 「近世化」をめぐって
二 「東アジア化」をめぐって
三 清朝政権の性格をめぐって
おわりに
第Ⅱ部 伝統社会の形成——国家・市場・社会観
第四章 「中国」と「外夷」——明代から清中期における国家呼称の問題
はじめに
一 概略の動向
二 明代における対比概念——「中国」と「夷狄」
三 清代前期における国家関係概念の用法変化
おわりに
第五章 徳治の構造——寛容の比較史を手がかりに
はじめに
一 「共存」をめぐる一般的な問題状況と対応の型
二 西欧の寛容論と中国像
三 清初における「共存問題」
おわりに
第六章 清初上海地方人士の国家観—— 『歴年記』を中心に
はじめに
一 『歴年記』に記載された国家・朝廷に関するニュース
二 清朝国家に対する姚廷遴の評価
おわりに
第七章 明末清初の市場構造——モデルと実態
はじめに
一 銀流入と国内経済の関係をめぐる問い
二 仮説的モデルの提示
三 「康熙不況」再考
おわりに
第八章 米とシルクと歓楽街——一七─一八世紀の蘇州
はじめに
一 蘇州の地理的位置と歴史
二 「姑蘇繁華図」に見る清代中期蘇州の経済
三 全国的米穀流通の要——蘇州城外楓橋鎮
四 製糸・絹織業の中心地——農民と職人
五 蘇州市民のレジャーと消費——贅沢は経済を活性化できるか?
おわりに
索 引