序章 言語と文化の衰滅――小民族のジレンマ――
1 言語と民族の消滅
2 小民族の問題
3 チェコ語・チェコ文化の発展と衰退
4 チェコ語・チェコ文化への否定と肯定
5 ミラン・クンデラによる問いの復興
6 未解決の問題
Ⅰ チェコ民族再生運動の前提と歴史
第1章 チェコ民族再生運動の前提――チェコ人とチェコ語の存在についての懸念――
1 チェコ語文学成立期における民族意識の覚醒
2 カレル4世時代からルネサンス期にかけてのチェコ語とチェコ文学
3 対抗宗教改革期における「チェコ語の擁護」
4 啓蒙主義時代における「チェコ語の擁護」
5 ロマン主義時代における「チェコ語の擁護」
第2章 チェコ民族再生運動の歴史――チェコ語とチェコ民族の再創造――
1 チェコ民族再生運動初期におけるチェコ語の未来の可能性
2 チェコ民族再生運動の起動力
3 チェコ民族再生運動の展開
Ⅱ チェコ民族再生運動期の文化と表象
第3章 チェコ民族再生運動期の文化――チェコ文化の再創造――
1 言語
2 文学
3 演劇と人形劇
4 音楽
5 美術
第4章 チェコ民族再生運動期の表象――民族と祖国およびその起源についての主題と変奏――
1 起源
2 民族
3 祖国
Ⅲ チェコ人とスラヴ人
第5章 チェコ民族再生運動とスラヴ主義および汎スラヴ主義――アイデンティティの範囲とレベル――
1 チェコ人としてのアイデンティティとスラヴ人としてのアイデンティティ
2 スラヴ主義の類型
3 汎スラヴ主義の起源と展開
4 汎スラヴ主義における「同床異夢」
5 ハヴリーチェクの汎スラヴ主義批判
6 言語と民族的アイデンティティ
7 「重層的アイデンティティ」における濃淡と排除性
第6章 チェコ民族再生運動とソルブ人――言語・文化の保存における成功と難渋――
1 チェコ人とソルブ人
2 ソルブ問題
3 チェコ人とソルブ人の運命を分けたもの
Ⅳ チェコ民族再生運動とチェコ・ナショナリズム
第7章 トマーシュ・マサリクにおける小民族の問題――精神的な「小ささ」の克服――
1 ショーヴィニスムとの闘い
2 チェコの宗教改革の遺産によるチェコ民族再生運動の完成という構想
3 マサリクの民族観・小民族観
4 マイノリティ問題
第8章 ベルナルト・ボルザノとヤン・パトチカにおけるナショナリズムの問題――ナショナリズム超克の試み――
1 ボルザノにおける言語を超えた民族の夢
2 パトチカのチェコ・ナショナリズム批判
終章 小民族の存在と世界の多様性――多様性の尊重――
1 消滅しうる変数としての民族
2 (小)民族の存在とは何か?
3 言葉への「いとおしさ」と,言葉を滅ぼすことの「いたましさ」
4 「大」と「小」の相対性と可変性
5 記号としての言語の特殊性
6 擬似世界共通語と公用語
7 多様性という価値
補章 チェコ民族再生運動観の変遷――チェコ民族再生運動研究史概観――
1 「死」,「仮死」,「眠り」からの「復活」,「蘇生」,「覚醒」
2 「奇跡」と「神秘」
3 チェコ民族再生運動観の変化とチェコ民族再生運動研究の進展
あとがき 世界の運命としての多様性――存在への敬意――
1 存在の神秘と存在者の多様性の神秘
2 無から存在へ,存在から無へ
3 存在の無目的性と意味
4 今ここに在ることの奇跡
5 存在への敬意
主要参考文献一覧
人名索引