はじめに
Ⅰ 前史 二人の画家
一 丸木位里 水墨の自由
生い立ち──絵の世界との出会い
自己表現の術を求めて──社会主義運動への参加
水墨の発見とシュルレアリスム
二 赤松俊子 自己実現の物語
促される自立とセクシュアリティ
「女流画家」への道
ミクロネシア体験の意味
位里との出会いとモスクワ再訪
三 戦時下の画家夫婦
相互の影響とそれぞれの画業
太平洋戦争下の絵本
Ⅱ 生成 原爆の表象
一 広島へ、広島から
八月六日からの「距離」
「新しい時代」の政治と美術
裸体と群像──よみがえる記憶
二 描かれた被爆体験『ピカドン』と初期「原爆の図」
「体験」の集積(1)──生者と死者の記憶
「体験」の集積(2)──山端庸介の写真
記憶の器──小さな絵本と大きな絵本
破綻する構成と「リアリズム」
三 表現の力
裸体と女・子ども
小さきものへのまなざし
共同制作の意味
Ⅲ 旅 人びととの出会い
一 「逆コース」のなかの全国巡回展
巡回展の実態
メディアとしての「原爆の図」
巡回展の担い手たち
二 語りのはたらきと「原爆の図」の大衆性
語りと祈り
「焼け死んだややこ」の話
母子像と少女像の浮上
せめぎあう大衆意識
三 平和運動と中期「原爆の図」
占領の終結と「原爆の図」の変化
消された富士山──迷走するナショナリズム
批判と共感
四 世界巡回展の光と影
ミッシング・リンクとしての世界巡回展
旅路の果て──母の死
終章 展開 二十世紀の体験を描く
「原爆の図」の帰国と制作の再開
アメリカ展の衝撃
後期「原爆の図」の物語
世紀を超えて──「原爆の図」の発見
註
あとがき
「原爆の図」15部の制作・発表年
図版一覧