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抵抗変化メモリの知的材料設計

著:笠井秀明
著:岸浩史

電子版

内容紹介

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統計的相関,力学的相関のため,金属中の電子はその周りに正孔を伴って運動している.金属から真空中へ電子を取り出そうとすると,この正孔が抵抗する.仕事関数の主な原因である.それでも,電子を取り出してしまうと,正孔が取り残される.これと電子間に鏡像力が働く.金属と真空との境界近傍の一つの現象である.

  絶縁体の電子の運動は,どうか.価電子帯の電子は正孔を伴っているのでエネルギーが低いが,伝導体の電子の周りには正孔がないのでエネルギーが高くなる.この差がバンドギャップの主な原因である.このような絶縁体と金属との境界付近では,金属電子が絶縁体の価電子帯の正孔を遮蔽するので,バンドギャップを消失する.界面近傍で見られる金属・絶縁体転移である.
 
  このように,異なる物質の境界では,電子状態の多様性を見出すことができる.物質を構成する原子も境界近傍では,多様な振舞いを見せる.ここで取り上げる抵抗変化メモリでは,このような電子・原子の多様性をうまく利用しようとしている.

  本著では,計算機マテリアルデザイン(CMDR)による先端研究事例Ⅱとして,抵抗変化メモリの知的材料設計をとりあげ,絶縁体のバンドギャップの変化や異なる物質の境界(電極/遷移金属酸化物界面)における電子・原子の状態変化が,どのようにデバイスの動作に結び付くのかについて紹介する.読者の皆様には,電子・原子といった微細なスケールから物理現象を明らかにし,デバイスをデザインする面白さを実感して頂きたい.

(本書はじめにより)

JP-eコード:87259000000000000016
出版社:大阪大学出版会
コンテンツ公開日:2021年11月05日