民主主義の人類史――何が独裁と民主を分けるのか?
著:デイヴィッド・スタサヴェージ
著:立木勝
内容紹介
「政治体制にかんする、近年でもっとも重要な書だ」
スティーブン・レビツキー(ハーバード大学教授|『民主主義の死に方』)
「民主主義の長い歴史を学ぶために……この魅力的な本は最良の選択肢だ」
ダロン・アセモグル(MIT教授|『国家はなぜ衰退するのか』)
「刺激的な説得力が、本書の魅力の一つだ」
『エコノミスト』誌
「わたしたちが今どこにいて、これからどこへ向かうのかを理解するためには、視界を広げてデモクラシーのディープ・ヒストリー deep history に目を向ける必要がある……わたしが疑問に思ったのは、なぜヨーロッパは中国や中東と比べて根本的に異なる政治軌道をたどってきたのか、ということだった……皮肉なことだが、ヨーロッパの後進性こそが、近代デモクラシーの起こる基盤となったのである……」(本文より)
ヒューロン族や中央アフリカなどの初期デモクラシー(民主)を、古代中国、メソポタミア、アステカのオートクラシー(専制)と比較することで、民主主義が生き残る条件を探求。さらには、なぜ初期デモクラシーがアングロ-アメリカにおいて近代デモクラシーに変質したのかを明らかにする。
壮大な人類学的スケールで民主主義の変貌を定量的に分析し、デモクラシーの未来をも描き出す。
目次
はじめに
第I部 初期デモクラシー
1 「民衆による支配」の起源
初期デモクラシーと近代デモクラシー
初期デモクラシーの起源
「初期デモクラシー」は用語として適切なのか
オートクラシーによる代替
なぜヨーロッパは違っていたのか
最初の国家は中国に到来した
イスラムの支配者は国家を継承した
近代デモクラシーの到来
デモクラシーの別の見方
政治思想
不平等
経済発展
デモクラシーの未来
新しいデモクラシー
オートクラシーの耐久性
アメリカのデモクラシーの未来
2 初期デモクラシーは広範に存在した
アテナイの先例
ギリシア世界以外の初期デモクラシー
メソポタミアのマリ王国
古代インドの共和政体
北東部森林地帯のヒューロン族
メソアメリカのトラスカラ共和国
中央アフリカの共和主義
初期オートクラシーの例
ウル第三王朝
アステカの三国同盟
インカ
ミシシッピの首長国
中央アフリカのアザンデ王国
初期デモクラシーと初期オートクラシーについての幅広い見方
政治参加
不平等
結論
3 弱い国家はデモクラシーを引き継いだ
「弱い国家」とはどういう意味か
農業適合性と国家形成
農業の変動性と初期デモクラシー
離脱オプションと初期デモクラシー
制限か離脱か
人口密度と会議統治
軍事デモクラシー――支配者が民衆を必要とするとき
官僚機構による代替
官僚機構の起源
結論
4 テクノロジーがデモクラシーを蝕むとき
中国の「魚鱗」図冊
アステカの土壌グリフ
ヨーロッパ人は土壌の理解が遅かった
幾何学と測量の能力
農業技術
ヨーロッパ人は農業技術で遅れていた
なぜヨーロッパは集約農業が遅れたのか
文字表記の重要性
文字表記はどのようにして始まったのか
文字表記が初期デモクラシーに与えた影響
アルファベットと複雑な体系との比較
ヨーロッパ人が進んでいた分野――火器のテクノロジー
結論
第II部 分岐
5 ヨーロッパでの代議制の発達
古代の森の自由
タキトゥスの語るゲルマン人
マルクローでの集会
ローマ帝国の遺産――国家の不在
初期デモクラシーに有利だった粗放農業
官僚支配に向けたカロリング朝の試み
アングロ-サクソンの例外
すべての人に触れること――同意の理論
コミューン運動――下からの代議制
コミューン運動はアリストテレスの再発見から生まれたのではなかった
商業革命の影響
中央国家の官僚機構の不在
政治的代議制の理論
委任の重要性
オートクラシーに向けたフィリップ四世の試
フィリップ四世の議会
フィリップ四世には国家がなかった
プロイセン流の代替
結論
6 官僚機構による代替としての中国
商によるオートクラシーの確立
周王朝と天命
なぜ中国はオートクラシーへの道をたどったのか
初期中国は「水力」社会ではなかった
高収量の農業が違いを生んだ
官僚機構の誕生
同意の道はとられなかった
初期中国の支配者は集会に依存することがあったか
功績と退位の理論
秦と漢による統一の重要性
科挙の制度
中国にも商業革命があった
モンゴルの征服者は自らの集会の伝統を放棄した
ほか
JP-eコード:62209659000000000000
。出版社:みすず書房
。コンテンツ公開日:2023年11月20日。