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特集　環状の紅斑と環状紅斑
（浅井　俊弥　編集委員）
　環状紅斑は多原因性の皮膚の反応であるが，個疹の特徴ははっきりとしたentityをもっている．真皮の細小血管周囲のリンパ球様細胞浸潤を特徴とし，滲出性の変化はないか，あっても初期にわずかに存在するのみ．臨床的には真皮性丘疹として始まり遠心性に拡がり，辺縁の浸潤は滲出性紅斑より硬く充実性で，水疱，びらんなどの表皮の変化を欠くことを特徴とする．Sjögren症候群の顔面に出現する環状紅斑の臨床と病理を思い出していただければよい．一方で，環状の形態をとる紅斑はさらに多原因性であり，滲出性の変化や表皮の変化を伴いながら，遠心性に拡がるもので，本号ではあえて，環状紅斑と区別して，環状の紅斑と呼ぶこととした．
　特集に見合うさまざまな炎症性皮膚疾患が集積された．まず，山本の「総説」では乾癬と膿疱性乾癬，落葉状天疱瘡について述べられている．病変が中心治癒傾向を示しながら環状に拡大する理由についても私案が示され，炎症性細胞が外方向に浸潤していきながら，中央ではアポトーシスに至るのか，炎症性サイトカインの役割が一過性で，病変をひきおこすトリガーとしての役目を終えたらそこで機能が止まるのかなど，興味深い考察を行っている．
　「臨床例」は蕁麻疹，血管炎，水疱症，苔癬型薬疹，肺癌に伴うデルマドロームに加え，体部白癬，ハンセン病などの感染症，さらに皮膚筋炎，エリテマトーデスの膠原病の症例を報告していただいた．環状の紅斑をみた際に考えるべき鑑別疾患が網羅されているので，日常診療にも役立つ内容となっている．
　最後に，ヒドロキシクロロキンによる治療を行ったSLE，あるいは皮膚エリテマトーデスの統計から，とくに中止，減量に至った症例の解析結果が乙竹の「統計」で報告された．投与中止による原疾患の症状増悪リスクが高く，減量ないし中止後の減感作による再投与を考慮する必要がある，とまとめられている．今後の治療の参考にしていきたい．

【Editor's eye】浅井　俊弥
【総説】Annular psoriasisとannular pustular psoriasis／山本　俊幸
【臨床例】
・多菌型ハンセン病／中西　裕美，大山　哲弥，津田憲志郎
・Microsporum canisによる体部白癬の親子例／松尾　真帆，丹羽　宏文，岩田　浩明
・サイトメガロウイルスIgM抗体が陽性であった多形紅斑
　／遠藤　麻衣，平岩　朋子，山本　俊幸
・環状を呈した抗PD-1抗体による苔癬型薬疹
　／岩田　匡祐，久保田典子，石井　良征，乃村　俊史
・頭部の非瘢痕性深在性エリテマトーデス～LALPS～
　／竹内紗規子，森本　亜里，平井　郁子，齋藤　京，天谷　雅行，谷川　瑛子
・線状IgA水疱性皮膚症／横山　大輔，足立　厚子
・肺癌により生じたデルマドローム／加藤　美和，速水　拓真，藤本　徳毅
・annular erythema of infancy／山下　雄太，室　慶直，秋山　真志
・多発する浸潤性環状紅斑を生じ好酸球性環状紅斑と診断した例
　／砂川　滉，芦田日美野，眞部　恵子，濱田　利久
・環状の紅斑を呈した抗TIF1-γ抗体陽性皮膚筋炎
　／舘脇　恩，善家由香理，新井　達，野村　篤史，鹿股　直樹
・環状の皮疹を呈した蕁麻疹様血管炎／渡邊　幸奈，山本　俊幸
・環状血管炎～review of the literature～
　／長田　悠里，宮澤　元，得地　景子，眞井　翔子，泉　健太郎，氏家　英之
【統計】
　エリテマトーデス症例におけるヒドロキシクロロキン中止例・減量例の臨床的解析
　／乙竹　泰，金岡　美和，秋田亜紗美，渡邊　友也，山口　由衣
【Editorial】体内時計による時間治療／向井　秀樹
【私の歩んだ道】覚悟のあとさき／望月　隆
【特別企画】
　PVL陽性黄色ブドウ球菌による再発性の癤の治療―患者用パンフレットの活用―
　／松村　剛一
【皮心伝心】人間万事塞翁が馬／吉田　雄一
【案件から学ぶ医療事故の対策と問題点】
　CASE 15　鉄剤点滴漏れによる色素沈着／向井　秀樹
【学会ハイライト】第87回日本皮膚科学会東京支部学術大会を終えて／佐藤　貴浩
【リレーエッセイ　私のワークライフバランス】
　ワークライフバランス支援センター長として／神人　正寿
【皮膚科のトリビア】第228回／浅井　俊弥
【声】