はじめに/私だけが不安なのだろうか?/財政史というメスで社会を解剖する/「ポピュリズム」で終わらせない/日本社会は右傾化したのか/同時におきていた左傾化/評価するための基準を/伝統主義Aと伝統主義Bのたたかい/肯定的な未来に居場所を/第一章 歴史の転換点ではなにがおきるのか?/1 混同されるファシズムと全体主義/ファシズムという言葉/混同されたファシズムと全体主義/異なるものを等しくあつかう/「あいつ」と「私たち」/現実味のないファシズム/すべてがかわってしまう/ファシズム的な状況について考える/2 家族のふたつの顔──時代の方向感覚をもつ/社会保障の発祥の国・アメリカ/国民の家・スウェーデン/もうひとつの顔/「私たちの必要」という財政の本質/どこにいるのか どこに向かうのか/第二章 昭和恐慌からの脱出と高橋是清の苦闘/1 昭和恐慌の衝撃と不安定化する社会/蔵相・井上準之助の理論/不幸が重なった金解禁/疲弊した農村と都市の人びと/民主主義と社会主義への反動/陸軍青年将校たちの憤慨/2 積極財政への転換/高橋財政の独創性/財政と金融の一体化、錯綜する利害関係/3 決定権限の集中と政局にあけくれる人びと/日本財政の最後の守護者/政争を繰りかえした政友会と民政党/皇道派と統制派の対立/軍部の分断、政党との連携/内閣機能の強化/高橋のリーダーシップがまねいた軍部の怨念/ある政治家に任せる、ということ/第三章 ファシズムへの道程でなにがおきたのか?/1 不安定化する経済、貧弱な生活保障/井上はなぜ理論に固執したのか/高橋財政の評価/所得と地域間、ふたつの格差/人びとの生活をどのように保障するのか/日本社会の根底にあった「惰民観」/2 民主主義の後退か? 不自由への逃避か?/「呉越同舟」という分断の論理/社会保障をめぐる女性の運動/高橋と社大党の共通性/批判より対案、政策よりも権力/力を発揮した官製の国民運動/日本精神へと接続した共同体主義/都市部における労働運動の状況/「ファシズム前夜」におきていたこと/第四章 ファシズムの条件をさぐる──ドイツとの対比から/1 第一次世界大戦の敗北がもたらしたもの/ヴェルサイユの屈辱とハイパーインフレーション/一党独裁を成し遂げたドイツ/一網打尽にされた中間団体/2 雇用創出から軍備拡張へ/恐慌からの脱出と緊縮財政/中央銀行にたよった複雑な財政運営/中央銀行への依存とその経済的、政治的、社会的合理性/財政の「質」から「量」への転換/充実していたドイツの社会保障/分断の道具としての財政/3 憎しみが憎しみをよぶ呉越同舟の政治/社会民主党と共産党の対立/ヒンデンブルクと大統領緊急令/シュライヒャーの暗躍/パーペンの意趣返し/ファシズムという均衡/第五章 強まる将来不安、崩れ落ちる民主主義/1 経済の衰退と社会の分断/疲弊する中間層/「分断社会」という言葉の意味を考える/社会保障の根底にあった通俗道徳/つよまる憎しみと嫉妬/2 崩壊する財政規律、よわりゆく予算統制/中央銀行への依存/高橋財政と現代の決定的なちがい/防衛費とインフレ対策/普遍主義の広がりをどのように評…ほか