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戦後日本と国家神道

天皇崇敬をめぐる宗教と政治

著:島薗 進

紙版

内容紹介

「国家神道」とは何か。敗戦時に解体されたはずが、大きく縮減されつつも戦後も存続し、その「復興」を目指す動きは途絶えることなく試みられてきた。本書は「神聖天皇の崇敬」という側面に注目することで、国家神道をめぐる論点を整理するとともに、戦後日本の国家の底流にある「国体護持」の観念と神道の関わりや、日本国憲法下の象徴天皇制の在り方に考察を及ぼす。

目次

まえがき


第Ⅰ部 国家神道をめぐる概念枠組み

第一章 近代日本の宗教構造と国家神道
 1 「神道指令」 と国家神道概念
 2 狭義と広義
 3 「宗教」、 治教、 祭祀
 4 国家神道とは何か
 5 宗教構造の変容

第二章 国体論神聖天皇崇敬と神道
 1 国体論神聖天皇崇敬と神道の関係
 2 今泉定助が捉える神道と国体論
 3 国体興隆と神道の復興としての明治維新
 4 近代神道史と国体論天皇崇敬

第三章 「宗教」 の上位にある精神秩序としての神道
 1 「宗教」 という訳語
 2 近世における 「道」 「教」 「宗門」
 3 「宗教」 の上位の 「治教」(「皇道」)
 4 文明の基盤としての 「宗教」 と 「信教の自由」
 5 「神道」 「皇道」 が 「宗教」 ではない理由
 6 「祭祀」 「治教」 が 「神道」 とみなされるまで

第四章 神社神職中心の神道観は妥当か
 はじめに
 1 神社を「民族宗教」とみなす
 2 神祇信仰から神道への展開を問う
 3 神社こそ神道の基体とみなす
 4 国家神道を宗教集団とみなす
 5 共有された考え方や行動様式から宗教を捉える

第五章 明治維新は世俗的変革か——安丸良夫の国家神道論をめぐって
 はじめに
 1 戦前の日本は世俗国家か
 2 神話に基づく天皇崇敬と国体論は宗教的ではないか
 3 まがりなりにも 「信教の自由」 は成り立っていたか
 4 国民国家とナショナリズムは世俗的か

第六章 国家神道神聖天皇崇敬の 「見えない化」——葦津珍彦の言説戦略とその系譜
 1 葦津珍彦と 「天皇の神聖」
 2 狭義の 「国家神道」 の言説戦略
 3 「国家神道」 と神聖天皇崇敬の 「見えない化」

付論1 神道国家神道の戦前戦後——『戦後史のなかの 「国家神道」』 をめぐって
 はじめに
 1 「広義の国家神道」 概念は戦前に系譜をたどれるか
 2 戦後の広義 「国家神道」 と戦前の 「神道」 の連続性
 3 戦後憲法学の 「国家神道」 とその系譜おわりに


第Ⅱ部 「国家神道の解体」 と天皇の神聖性

第一章 国家神道の戦後——皇室祭祀神社本庁
 1 「国家神道の解体」 の実態
 2 戦後の皇室祭祀
 3 宗教教団としての神社本庁

第二章 敗戦と天皇の神聖性をめぐる政治
 1 「天皇の人間宣言」 は誰の意思によるものか?
 2 「国体のカルト」 をどう制御するのか
 3 神道と天皇崇敬という複合問題
 4 「天皇の人間宣言」 が先送りしたもの

第三章 国家神道の存続と教育勅語の廃止問題
 1 国家神道の解体と教育勅語
 2 教育勅語の存続
 3 占領初期の日本の知的指導者らの教育勅語観
 4 南原繁の教育勅語尊重と天皇崇敬
 5 「国体護持」 と 「民族共同体」

付論2 戦後の靖国神社をめぐって
 はじめに
 1 靖国神社はなぜ生き延びることができたのか
 2 戦後靖国政治史をどう捉えるか?


第Ⅲ部 天皇の神聖性をめぐる政治の展開

第一章 戦後の国家神道復興運動——日本会議神道政治連盟神社本庁
 はじめに
 1 日本会議の運動
 2 神道政治連盟と皇室の尊厳護持運動
 3 神社本庁の発足と設立の意図
 4 神道政治連盟の結成とその後の運動
 5 安倍元首相と国家神道伊勢神宮
 おわりに

第二章 日本人論と国家神道の関わり
 はじめに
 1 中空構造無構造固有信仰
 2 日本人論と国民道徳論
 3 教育勅語国体論から日本人論へ
 4 新たな 「神聖天皇」 言説
 5 昭和前期戦中期の言説への回帰
 おわりに

第三章 皇室典範と「万世一系」
 はじめに
 1 皇位継承問題と立憲主義
 2 生前退位問題と立憲主義
 3 生前退位否定の根拠と 「万世一系」
 4 『皇室典範義解』 の終身在位論

第四章 生前退位と 「神聖な天皇」
 1 天皇崇敬を重視する論者の反対論
 2 天皇の人間性
 3 天皇の神聖化の動き
 4 「新日本建設に関する詔書」 との照応関係
 5 象徴天皇制と信教の自由思想信条の自由


引用・参考文献
資 料
あとがき
索 引

著者略歴

著:島薗 進
島薗進(しまぞの すすむ)
1948年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授、上智大学神学部特任教授・同大学院実践宗教学研究科教授、同グリーフケア研究所所長(2021年度まで)、大正大学客員教授。専門は宗教学、近代日本宗教史、死生学。主な著書に、『現代宗教の可能性』『スピリチュアリティの興隆』『国家神道と日本人(岩波新書)』『日本仏教の社会倫理』(以上、岩波書店)、『明治大帝の誕生』(春秋社)、『宗教学の名著30(ちくま新書)』『神聖天皇のゆくえ』(以上、筑摩書房)、『現代救済宗教論』(青弓社)、『ポストモダンの新宗教(法蔵館文庫)』(法蔵館)、『〈癒す知〉の系譜』(吉川弘文館)、『日本人の死生観を読む』『ともに悲嘆を生きる』(以上、朝日新聞出版)など。共編著に『近代日本宗教史』(全6巻、春秋社)ほか、多くのシリーズ・論集がある。

ISBN:9784000615037
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:438ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRRL3
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:QRVS