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ハブられても生き残るための深層心理学

著:きたやま おさむ

紙版

内容紹介

私だけがのけ者にされ、みんなから悪く言われている……。そんな息苦しさを訴える声が多い。そう感じてしまうのはなぜか。また、こうした現象が日本社会で起きやすい背景とは。自身の経験や長年の臨床で得た深層心理学の世界観で、その仕組みを考察。悲劇に陥りがちな人生の台本を紡ぎ直し、自分らしく生きるためのヒントを説く。

■編集部からのメッセージ
 「ハブられる」という言葉は、なじみがないと感じる方もいるかもしれません。仲間外れにされる、排除されるという意味で、若い人たちなどに普通に使われています。少し前から、同調圧力や「空気を読め」といった流れに息苦しさを訴える声が増えてきたように思います。そして、SNSの普及や現在のコロナ禍において、そうした流れはさらに強まっているのではないでしょうか。
 本書では、自分だけがハブられていると感じてしまいがちな心性や、こうした現象が起きやすい日本社会の背景を深層心理学で解き明かそうとします。「鶴の恩返し」や「イザナギ・イザナミ」などの説話・神話に浮世絵、さらには海外の映画作品など、いろんな素材が取り上げられる、著者だからこその「深層心理学」となっています。
 本書の中で、著者は人生を演劇としてとらえることを提唱しています。そして、私たちは、悲劇をくり返してしまいがちな「心の台本」を抱えていると指摘します。「鶴の恩返し」の鶴は人間ではないことがばれて「自分さえいなければ」と去って行きます。そうした自己否定と自己嫌悪に満ちた「心の台本」を紡ぎ直して、自分らしい人生を見つけて生き残っていく。そこへの道筋を読者とともに考えていきます。

目次

序 「ハブられる」とは

第1章 なぜハブるのか——同化と異化の生理
 1 「違うもの」を無意識に排除してしまう原則
 2 グループで働く同調圧力
 3 吐き出す受け皿を求めて

第2章 排除する深層心理
 1 集団を結びつける同類愛
 2 いじめを行う心理には憎悪と愛情がある
 3 みんなでやれば怖くない——無自覚・無責任の原則
 4 憎悪と愛情はすでに家族内で始まっている

第3章 反射的に排除する心身
 1 心は身体と連動している
 2 心は消化器
 3 心の中に異物を置けるように

第4章 日本語から考えてみる——多義的で曖昧な言語を使う心
 1 不明瞭な言葉の使い分け
 2 言葉の特質に慣れる
 3 絶対がなく、全体が見えにくい
 4 言葉は舞い散って、水に流されていく

第5章 異類を排除する物語を読む
 1 異類と結婚する悲劇
 2 外国の異類婚姻物語を読む
 3 重要な役割を担うのは〈あなた〉
 4 化け物の正体は何か

第6章 〈あなた〉との「つながり」——親子関係から考える
 1 人間には裏がある
 2 裏の「見にくさ」
 3 異なる世界への橋渡し役としての〈あなた〉

第7章 人生を劇として見る——「心の台本」を紡ぎ直すために
 1 人生という劇を生きる
 2 悲劇としての「心の台本」を読み直してみる
 3 人には「心の楽屋」が必要

第8章 心の構え方——自己を構造化する
 1 「自分がない」から「私がいる」へ
 2 三角関係から自己の本格的構造化が始まる
 3 心の三角関係
 4 自己矛盾と葛藤をどう生きるか

第9章 生き残る〈私〉が相手を変える
 1 神のいない「人前劇場」
 2 〈みんな〉に向き合うには準備期間が必要
 3 「心の楽屋」を見つけるために

第10章 人生を渡す
 1 自分を認める
 2 〈私〉が人生物語を紡ぎ出す
 3 〈私〉らしい人生物語を

さいごに 心の専門家へ

あとがき

ISBN:9784000615020
出版社:岩波書店
判型:4-6
ページ数:270ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP